澤部渡(スカート)、佐藤優介

昨年末、4作目のアルバム『SONGS』をリリースしたスカートこと澤部渡。今回、同じくミュージシャンであり、スカートのサポートも長年務める佐藤優介がインタビューを行った。お笑い、漫画、そして音楽をめぐる2人の新春放談をお届けする。


 

お笑いライブの〈軽さ〉と〈何か起きそうな予感〉

佐藤優介「澤部さんといえば、やっぱりお笑いだと思うんですが。俺もお笑いは好きだけど、いつもTVでやってるのを見るくらいで、澤部さんはライブにもよく通われてますよね」

澤部渡「最近はコロナ禍で慎重になってる部分もあるからあんまり行けてなくて、月に1、2本くらいかなぁ。多いときは週3本くらい行ってたけど」

佐藤「一方で音楽のライブはどんな感じですか」

澤部「音楽だと、よっぽど好きな人がやってないとライブは見に行かないかなぁ」

佐藤「それは、お笑いと比べて今ライブを見たいと思える人が単純に少ないのか、それとも構造的な部分の問題なんでしょうか」

澤部「まず、出演者の数が全く違うっていうのがひとつだよね。僕がよく見に行くようなライブは、1組1ネタで、時間的にもどんどん回していくっていうのが多いから。あと、物理的にもフットワークが軽いというか、必要な舞台装置も音楽と比べればだいぶ少ないし。そういう軽さが音楽のライブにはあんまりないかもしれない。

感覚的には、無力無善寺で見てたようなライブが近くて。ボロボロのドラムをみんな使い回したりしてやってるんだけど、それでかえって引き込まれるというか、何かとんでもないことが起きそうな感じがあって」

佐藤「最小限のものでも成り立つというか、少ないからこそ拡がりうるということはありますね」

澤部「それこそ僕が高校生の頃によく通ってた豊田(道倫)さんのライブなんかは、行くたびに新曲をやっていて、それが全部すごいから、また次もいかなきゃ、みたいなことが今お笑いのライブだと起きてる気がするね。

豊田道倫の2022年のライブ動画

それに、僕なんかはここ7年くらいでお笑いが好きになったから、音楽と比べてまだ新鮮な目で見れてるところもあるのかも」

佐藤「その、目撃したいっていう気持ちはよくわかるんです。ただ、俺が以前お笑いライブを見に行って感じたのは、面白くもないものを面白いと思い込んで笑ってるような人たちが随分いるんじゃないかっていうことなんです。

これは島田紳助が言ってたことですけど、芸人が何を言っても笑ってくれるようなお客は、芸人からしたら邪魔なんだっていう。要するに、芸人のファンがお笑いの敵になっちゃうような現象がありますよね。去年のM-1でいえば、敗者復活戦でオズワルドが勝ち上がっちゃうような……」

澤部「そうだよね。でも、オズワルドは単純に忙しい中よくやったと思います」

「M-1グランプリ2022」でのオズワルドのネタ動画

佐藤「もちろんオズワルドが悪いという話じゃなくて、ああいう視聴者投票になると、本質とは関係ないところで票を入れちゃうような人たちに勝敗を左右されるっていうことが嫌なんです。

だから、なるべく思い入れみたいなものを遠ざけたいっていう気持ちが個人的にはあって、そういう意味で、ライブはちょっと気後れする場所でもあるというか」