スカートが2022年11月30日にリリースするニューアルバム『SONGS』。メジャーでの4作目になる本作には、映画主題歌の“窓辺にて”、ドラマ「絶メシロードSeason2」の主題歌“架空の帰り道”をはじめ、スカートがこの3年ほどの間に作り上げた話題のタイアップ曲の数々と新曲によって構成されており、さらにアニメのオープニングテーマでPUNPEEとのコラボ曲としてヒットした“ODDTAXI”も新アレンジで再録されている。スカートらしい美学に貫かれたバラエティー豊かで簡潔なポップソングが収められたこのアルバムについて、スカートこと澤部渡に音楽ライターの松永良平(リズム&ペンシル)がじっくりと訊いた。 *Mikiki編集部

※このインタビューは2022年11月25日発行の「bounce vol. 468」に掲載された記事の拡大版です

スカート 『SONGS』 IRORI/ポニーキャニオン(2022)

 

コロナ禍以降のスランプを乗り越えて

──アルバムタイトルは『SONGS』。澤部くんがシュガー・ベイブのアルバム『SONGS』(75年)が大好きだと知ってるので、〈おお!〉と思いました。

「本当に悩んだんですよ、タイトルは。シンプルな言葉で〈SONGBOOK〉とか、〈POP MUSIC〉とかにしたいっていう案もあったんですが、いちばん最初に思いついてたのは〈SONGS〉だった。どうしてもシュガー・ベイブがちらつきましたけど(笑)。でも、そう言わないと今回はアルバムとしてまとまらなかったっていうのが、やっぱり大きいかな。

たとえば、“窓辺にて”(今泉力哉監督の新作映画『窓辺にて』主題歌)が今回の軸かもしれないと思っていた時期もあったんです。でも、アルバムタイトルは“窓辺にて”じゃないなとも思った。アルバムの中にテーマとなりうる曲はあるけど、その曲名がアルバム全体を背負える感じはしなかったんです」

──なるほど。僕もこの『SONGS』というタイトルには、シュガー・ベイブへのオマージュというより〈楽曲集〉としてのニュアンスを感じたのも確かです。

「そうです。完全にそっちですね」

『SONGS』トレーラー

──前作『アナザー・ストーリー』(2020年)は、インディー時代の楽曲を今のバンドで再レコーディングした作品でした。ということは、純粋に新曲を集めたオリジナルアルバムとしては『トワイライト』(2019年)以来、3年半ぶりという認識です。しかも、この3年半の大半をコロナ禍が占めているわけです。

「やっぱり、(コロナ禍以降は)単純にスランプになっちゃいました。状況が重くのしかかって、どうしても自発的に曲が書けなかった」

 

ゼロからイチじゃない想像力が刺激されるクリエイティブな作曲法

──そんななかでも、新春の箱根駅伝でCM曲として流れた“駆ける”(2020年)や、PUNPEEとのデュエットでヒットした“ODDTAXI”(2021年)があったり。すでにタイアップとして発表されていた曲も多いといえば多いんですが、それぞれの曲がこのコロナ禍での澤部くんの産みの苦しみの記録となっているようで、僕は楽曲の羅列というより日々の記録を音楽でたどるような面白さも感じました。

「ありがとうございます。コロナ禍の活動報告書みたいな側面は避けられないものでした。『トワイライト』みたいに11曲くらいで、タイアップの曲でも入れない曲はある、みたいな方向も考えましたけどね。でも、なんかちょっと違うなと思って、〈じゃあ、もうタイアップの曲も全部入れよう!〉と、腹を括って取り組みました。

やっぱり、コロナ禍に入ってからのオファーは、本当にありがたかったんです。〈この作品のためにこういう曲を書いてくれ〉という依頼がある。つまり、〈ゼロからイチ〉じゃないなんです。そこで逆に、イマジネーションが豊富になる瞬間がある。普段だったら働かせないようなところにも想像力を働かせられるし、そこがやっぱり非常にクリエイティブだと自分では思うんです」

──そもそも、力量や個性を認められているからこそのタイアップですから。自分の音楽のどこを買われてるのかを考えるいい機会になるんじゃないですか?

「そうですね。僕の場合、ありがたいことにコンペはほとんどないんです。今回のアルバムに入っている曲に限れば、決め打ちの依頼しかなかった」

──もちろん、作品を提供するにあたって〈こういう作品なので、このテーマで〉みたいな指定はあると思いますが。

「“窓辺にて”は、〈映画のエンドロールに3分半かかる〉と言われたので、3分半の曲を書いてほしいというオファーでした。そういう決まりがあるのはむしろ楽しい。〈好きにやってください〉って言われると、結構〈どうしよう?〉ってなるんですけど、何か一個でもお題があると、すごいやりやすいですね。

『SONGS』収録曲“窓辺にて”

ただ、“背を撃つ風”のときは、詩を書き上げたあとに、〈最後のサビにドラマに寄り添った言葉を入れてほしい〉って連絡が来て。具体的なワードも提示されたんだけど……どうにもうまくかなったんですよね」

──そうだったんですね。

「それで書き上げた歌詞も書き直しが必要だったのですが、代案が思いつかず、そのまま突破させていただきました(笑)。

ただ、〈そのお題は難しい〉と思いつつも、自分なりに考えるきっかけにはなる。そういうお題を言われなかったら、また違う歌詞になってたでしょうし」

──そういう意味でも、〈タイアップ〉という言葉への偏見はあるかもしれないですけど、むしろそうやって曲が書けるきっかけをもらって〈応援〉してもらっていたのかも。

「ははははは(笑)! ほんとに」