ディスコグラフィーで辿る、自身のポップスを拡張してきたスカート15年史
ファースト・アルバム『エス・オー・エス』は、澤部渡の自主レーベル、カチュカ・サウンズから2010年にリリースされた。この時点では、バンド形態を持たないソロ・ユニット。佐久間悠太(昆虫キッズ)、佐藤優介(カメラ=万年筆)らがライブのサポートとして定着した次作『ストーリー』(2011年)からバンド・サウンドとなる。表題曲をはじめとする初期の重要曲が揃ったこの作品は幅広い支持を受け、その後のスカートの基盤となった。続く『ひみつ』(2013年)、『サイダーの庭』(2014年)の頃には、同世代のミツメ、トリプルファイヤーと共に〈東京インディー三銃士〉と呼ばれるようになる。また、漫画好きである澤部は同人誌即売の一大イヴェント〈コミティア〉にブースを持ち、デモCD-Rやコードブックを販売。音楽と漫画の両面で話題を呼んだ。
2016年、KAKUBARHYTHM所属となったタイミングで名曲“CALL”が生まれ、同名のアルバムをリリース。さらに2017年にはポニーキャニオン傘下のIRORIからのメジャー・デビューが決定。『CALL』完成後に生まれ、早くもライヴの定番となっていた“静かな夜がいい”を含む作品『20/20』がメジャーでの最初のアルバムとなった。
澤部の詩的でポップなソングライティングは、すでにインディーの範疇を超えて届くものになっていた。移籍後も、詩的表現の絶妙さが光る『トワイライト』(2019年)、セルフ・カヴァー集『アナザー・ストーリー』(2020年)、コンパクトなポップソングが詰まった『SONGS』(2022年)と順調にオリジナル・アルバムのリリースを重ねてきた。2024年のEP『Extended Vol.1』は、adieu、井上花月(Laura day romance)、パソコン音楽クラブなどをコラボレーションで迎えた意欲作。いっぽう、最新作『スペシャル』は、バンドとしてのスカートの現在地を示す、力強くて勢いがあり、次のターン到来を感じさせる作品となっている。
近年は、ムーンライダーズのライヴとレコーディングに参加してサポートを継続中。ラジオDJとしても抜群の安定感を発揮している。藤井隆、後藤輝基、adieu、Kaede(Negicco)などへの楽曲提供や、映画やテレビの主題歌に劇中曲、CM楽曲など、スカートの印がついた曲を知らず知らずのうちにけっこう耳にしているはずだ。
スカートの作品と参加作。
左から、2010年作『エス・オー・エス』、2011年作『ストーリー』、2013年作『ひみつ』、2014年作『サイダーの庭』(すべてカチュカ・サウンズ)、2016年作『CALL』(KAKUBARHYTHM)、2017年作『20/20』、2019年作『トワイライト』、2020年の再録盤『アナザー・ストーリー』、2022年作『SONGS』、2024年のEP『Extended Vol.1』(すべてポニーキャニオン)、後藤輝基の2022年作『マカロワ』(よしもとミュージック)