
歌詞に自分が含まれている割合は1割あるかないか
――歌詞についてはどうでしょう。今回も〈魔女〉(“四月怪談”)、〈呪文〉(“火をともせ”)、〈鉄塔〉(“トゥー・ドゥリフターズ”)など澤部さんの作品で登場頻度の高いワードが多く散見されますが、こういう言葉がまた曲の中に出てくることが今回の作品では何を証明していると思いますか。
「〈魔女〉と〈呪文〉に関して言うと、自分の中で大きな意味を持っていて。今回、〈漫画〉に回帰したいと思ったんです。それで、たとえば〈魔女〉とか〈呪文〉とかが出てきても、それはそういうことなんだ、うん、使おうってなったんですね。使おうと思って使った言葉ではなく、自然と出てきたことで意味するものがあるってことなんです。
ただ、“トゥー・ドゥリフターズ”に出てくる〈鉄塔〉は全く別モチーフ。人工物としてただそこにあって、それを自分が眺めている、自分の意思と関係なくそこにあるもの、自分の意思ではどうしようもないものなんです。“トゥー・ドゥリフターズ”に出てくる〈鉄塔〉はそれが崩れていくイメージ。本来だったら変わらないもの、毎日確実にあり続けるものが、自分の感情とか精神状態でそうじゃなく見えてくる瞬間ってあると思うんですけど、それを〈鉄塔〉にしたんですよね。
何年か前なんですけど、ちょっと気持ちが落ちてる時に部屋の本棚とかが怖いと感じたことがあって。文字がこっちを見てる!みたいになった瞬間があったんです。今まではなんてこともなかったものが怖いものに見える瞬間を念頭に置いたんですね。まあ、単純に家の近所に鉄塔が多いだけでもあるんですけど(笑)。向こう(鉄塔)は絶対、今日もそこにあるならば、同じ姿であるわけです。怖いと感じるこっちに問題があるっていう。そういう意味で、揺るがないもの=鉄塔になった感じです」
――怖さに気づかせるメタファーになっている。
「メタファーというより、あくまで物語の中のあそこで、僕が書いた2人の登場人物のどっちかが、何かが怖いという精神状態にあることを描くために鉄塔を用いた感じです。
ただ、“トゥー・ドゥリフターズ”に出てくる〈オール〉はメタファーだと思います。〈オールを捨てろ〉と言うことで、〈いや、違うんだ、ハナからオールはないんです〉と言われる無情さを書きたかった。ちょっと滑稽に見える表現ですよね。
あの曲には2人の登場人物が出てくるんですけど、〈目を覚ませ!〉と2回言ってます。最初は自分……というか、歌の第1主人公で、2回目はもう1人の主人公か、もしくは第1主人公の中の別人格がその人自身に対して言うのか?って気持ちで書いてます。でも逆に、あの曲の中で彼らは、オールがあることによって別の場所にも行けるだろうし、そこにとどまっていたとしても、いつか動き出せると思うんです」
――オールは意志を持って動かすものであり道具でもある。
「そうそう。だから、単純に考えすぎだ、お前は!って感じで冷や水をぶっかける〈目を覚ませ!〉なんですね。オールどうこうの問題じゃない、根本の問題で、我々はボートにも乗っていないかもしれない。そもそもここは水辺じゃないぞ!ってこともあるかもしれない。
とにかく今の状況は、第1主人公が思っている状況と現実が乖離してて、その乖離を第2主人公がどう見るか?ってことなんですね。このままでいいかとも思っているし、でも、やっぱり違う気がする。冷や水をぶっかけた方がいいんじゃないか、そして最後に何かが見えてくる気がしないか?って訊ねて終わる、そんな曲ですね」
――澤部さん自身はここにはいない。
「この曲にはいないですね。いつも考えているのは、曲の中の1割あるかないかですね、自分が含まれている割合が。それくらいが理想です。ただ、たとえばどん詰まりの状況を歌おうと思ったら、それは自分がどん詰まりだから、っていうくらいの関係性はありますね。どん詰まりの主人公を自分にはしない。でも、どん詰まりのノウハウは自分にはある(笑)」