べらぼうなお江戸を華麗に彩るサウンドトラック、第2弾が登場!

 まさしく、べらぼうに面白い。今年の大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」だ。昨年の「光る君へ」に続き、NHKは〈文芸大河〉で攻めてきた。江戸中期から後期、安永・天明・寛政の世にスパークする江戸文化。その仕掛け人蔦屋重三郎に焦点を当てつつ、江戸城の権力闘争と文化への影響も描かれ、吉原の光と影が格差社会と差別の残酷を見せつける。多様なトピックを盛り込む重層的な森下佳子の脚本が凄すぎる。演出から美術までその水準に合わせ爆上がりだ。

JOHN GRAHAM 『大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」オリジナル・サウンドトラック Vol.2』 コロムビア(2025)

 音楽のジョン・グラムは「麒麟がくる」に続く2度目の登板。何といってもテーマ曲“Glorious Edo”(OST Vol.1収録)が良い。ツィンバロンの金色の響きが心浮き立つ〈べらぼうの主題〉を導入し、下野竜也指揮のNHK交響楽団が豪奢に盛り上げる。タイトルバックの凄まじく凝った江戸ヴィジュアルのコラージュとのシンクロぶり。絢爛たるEdoだ。

 ジョン・グラムは大河ドラマ音楽の伝統と、今世紀の新しい傾向を溶け合わせている。前世紀の大河ドラマは、最多5回の登場を誇る池辺晋一郎をはじめ、現代音楽の錚々たる作曲家が主に登場し、時に前衛的なスコアをぶつけての題材との格闘が聴きものだった。だが世紀を超え〈劇伴〉的性格が強まり、近年は諸ジャンルを混淆させたポストモダン/リミックス的傾向が顕著となっている。ラフマニノフ風から古楽やヘヴィ・メタルまで登場した昨年の冬野ユミ「光る君へ」の音楽は最たるものだ(もちろんこれはこれで面白い)。ではグラムは。管弦楽の厚みのある響きを重視して伝統に敬意を払いつつ、一方で打ち込みサウンドもさりげなく仕込まれ、このVol.2にはもろにジャズな楽曲もある。伝統と新しさの融合は、物語内の蔦重の文化戦略とも共振している。

 Vol.2では物語が吉原から飛び出し輝きと闇を共に深くしてゆくのに比例して、べらぼうの主題も随所で重厚に響く。だが蔦重が江戸を縦横に駆け回る、小走りのリズム感はいつも失われないのだ。