流麗かつ巧みで繊細な演奏動画と特異なキャラクターで一気に注目を集めた異才ピアニスト、五条院凌(読み:ごじょういんりょう)。彼女が、〈聖地〉と呼ぶ東京オペラシティでの完全生音コンサートを2025年8月29日(金)に開催。さらに音楽的な原点であるクラシックと本格的に向き合った初のアルバム『GOJOSSIC』(読み:ゴジョシック)のリリースも10月1日(水)に控えており、同公演で『GOJOSSIC』が最速先行販売される。そこで今回は五条院凌という人物、『GOJOSSIC』というアルバムについて池田卓夫(音楽ジャーナリスト@いけたく本舗®︎)に解説してもらった。 *Mikiki編集部

五条院凌 『GOJOSSIC』 Piano Beat Music Castle/apart.RECORDS(2025)

 

TikTokで注目されたピアニストの原点であり未来への扉〈おクラシック〉

2021年春にSNSの動画アプリ〈TikTok〉へ投稿した演奏動画で注目を集めたコンポーザー&ピアニストの五条院凌。公式HPのプロフィールは年齢非公開、〈幼少期よりクラシックピアノとクラシックバレエを学び、音楽大学を卒業〉とだけあり謎めいているが、出身地は青森県と明記されている。かなりの美貌の持ち主でありながら大きなメガネをかけ、派手なファッションで言葉の頭にやたらと〈お〉をつけ、過剰に丁寧な語りくちは、クラシック音楽家よりも2.5次元アイドルを思わせる。これをテレビが放っておくわけはなく、同年の東京MXテレビ「5時に夢中!」を皮切りに、フジテレビ「芸能界特技王決定戦 TEPPEN」などバラエティー番組での露出も増えていった。

音源は配信がメイン。アルバムは2022年12月にオリジナル作品集『Fabulous』、2023年5月には“愛の水中花”“難破船”“秋桜”“みずいろの雨”“愛燦燦”など昭和のヒット曲をアレンジし、〈1st Cover Album〉と銘打った『お愛集』をリリース。2025年10月1日には彼女が最も得意とする〈おショパン様のお“幻想即興曲”〉やリスト“ラ・カンパネラ”などの名曲小品、アメリカ現代音楽の作曲家フィリップ・グラスの“エチュード(練習曲)第6番”などを13曲(プラスCD限定ボーナストラックのベートーヴェン“ピアノ・ソナタ第14番「月光」第1楽章”で14曲)を収めた初のクラシックアルバム『GOJOSSIC』のリリースを予定している。

ピアノ音楽は聴かずロックやヒップホップが好き。クラシック音楽はオペラやバレエに限る。「自分のピアノで満たされているので、ピアノ以外の音楽を聴きたい」と公言する五条院が、『GOJOSSIC』でついに〈クラシック音楽のピアニスト〉としての全貌を明らかにする。本作について彼女は、「わたくしにとって“音楽のお原点回帰”でもあり、“未来への扉”でもあります。おクラシックのお譜面を目の前にした時、静かに、わたくしの心が燃えるのです」とコメントしている。