〈珠玉のリサイタル&室内楽 ベンジャミン・グローヴナー ピアノ・リサイタル〉が2025年4月23日(水)、東京・銀座ヤマハホールで開催される。イギリスを代表するピアニストで、欧米で確固たる地位を確立しているベンジャミン・グローヴナー。その貴重なヤマハホール公演では、壮大なスケールの組曲“展覧会の絵”とシューマンの情感あふれる曲が彼ならではの美しい解釈と卓越した技術で届けられるだろう。そんなリサイタルの見どころなどをライター東端哲也に解説してもらった。 *Mikiki編集部
早熟の天才にして最高のピアニストに選出された国際的スター
クラシック界でも特に、数多の俊英たちがしのぎを削りあい、華やかな活況を呈している現代のピアノシーンにおいて、ひときわ眩しい光を放つ1992年生まれのベンジャミン・グローヴナー。ロンドンの北東エセックス州の出身で2012年に英国王立音楽院を卒業。実は2004年に史上最年少の11歳でBBCヤング・ミュージシャン・オブ・ザ・イヤーのピアノ部門で優勝して以来、コンクールの類いには出場していないという異例の経歴の持ち主であるが、誰もが憧れるBBCプロムスに既に12回も出演。本国はもちろん世界の主要オーケストラと著名な指揮者のもとに共演を重ね、国際的な舞台で活躍を続けている。
録音では2011年に名門デッカと契約(※英国の音楽家としては史上最年少、英国のピアニストとしては約60年ぶりの契約)。ショパンの夜想曲、スケルツォにリストやラヴェルの作品をカップリングしたデビューアルバムを皮切りにコンスタントにリリースを重ね、そのどれもが高く評価され名盤として数々の栄誉に輝いている。
特筆すべきは権威のある英グラモフォン誌(2024年1月)にて、レコーディング史上最高のクラシックピアニスト50人の1人に選出されたこと。こちらはルービンシュタインやリヒテル、ギレリス、コルトー、グールドら〈レジェンド〉たちからアルゲリッチやポリーニ、アシュケナージなどの巨匠も含まれる夢のリストで、グローヴナーは30代の若手では、ユジャ・ワン(b1987)、イゴール・レヴィット(b1987)、ダニール・トリフォノフ(b1991)らスターピアニストと共にその名を連ねている。
そんな彼のデッカから9作目となる新譜は、第3楽章の“葬送行進曲”が有名なピアノ・ソナタ第2番と雄大な同第3番を中心にドラマティックなバラード第1番、穏やかな子守歌、2曲の夜想曲を収録したショパン・アルバム(輸入盤:2025年5月発売予定)で、今回も大いに楽壇を賑わせそうだ。
英トップピアニストの演奏を楽しめる機会を逃してはならない!
幸運なことに、その前の4月に日本のファンは銀座のヤマハホールで再び彼に会える。昨年12月にもブラームス“3つの間奏曲 Op. 117”、ラヴェル“夜のガスパール”、ムソルグスキー“展覧会の絵”からなるプログラムで日本ツアーを行い、武蔵野市民文化会館、ミューザ川崎シンフォニーホール、青山音楽記念館バロックザール(京都)の各地を席巻したグローヴナーだったが、とりわけ繊細なピアニズムで原典版の強烈な色彩と迫力をステージに描いてみせた“展覧会の絵”で聴衆の心を掴んだようだった。リサイタルではお気に入りの曲への想い入れが強く「1年半くらいは取り上げ続けたい」と語る彼だけあって、今回のヤマハホールでもう一度同曲を聴くことができるのが嬉しい。
演奏曲目はこの他、シューマン“花の曲 変ニ長調 Op. 19”、同“幻想曲 ハ長調 Op. 17”を予定。このうち“花の曲”は、2023年にリリースされたシューマン夫妻とブラームスの関係性をテーマにした傑作アルバム(仏ディアパソン誌で金賞を受賞)にも収録されていた作品で、こちらも花の絵画と関連のある曲のようで、そんなグローヴナーならではのこだわりも素敵だ。また“幻想曲”はベートーヴェン作品が引用されているスケールの大きなソナタ風の作品で、彼らしい透明感のあるトーンでロマンティックなファンタジー溢れる演奏が期待できそう。
いずれにしても、英国が誇る当代のトップピアニストの類いまれな演奏を、親密にして極上の音響空間で楽しめるこの機会を逃してはならない!
LIVE INFORMATION
珠玉のリサイタル&室内楽
ベンジャミン・グローヴナー ピアノ・リサイタル
2025年4月23日(水)東京・銀座 ヤマハホール
開場/開演:18:30/19:00
出演:ベンジャミン・グローヴナー(ピアノ)
料金(税込):5,500円(全席指定)
主催 :ヤマハ株式会社ヤマハホール
■注意事項
※都合により出演者、曲目が変更になる場合がございます。あらかじめご了承ください
※未就学児のご入場はご遠慮いただいております
※チケット料金には消費税が含まれております
■プログラム
R. シューマン/花の曲 変ニ長調 Op. 19
R. シューマン/幻想曲 ハ長調 Op. 17
M. ムソルグスキー/組曲「展覧会の絵」
■チケット情報
チケットぴあでのご予約・お申し込み
WEBからのお申し込み:https://ticket-search.pia.jp/pia/search_all.do?kw=288-119
※座席選択可能
Pコード:295-190
発売日:2024年12月14日(土)
座席種別:指定席
■お問い合わせ
ヤマハ銀座店
TEL:03-3572-3171(ヤマハ銀座店 インフォメーション)
営業時間:11:00~18:30
定休日:毎週火曜日(祝日の場合は営業いたします)
住所:〒104-0061 東京都中央区銀座7-9-14
アクセス:https://retailing.jp.yamaha.com/shop/ginza.html#access
イベント詳細:https://retailing.jp.yamaha.com/shop/ginza/hall/event/detail?id=6273
PROFILE: BENJAMIN GROSVENOR
イギリス出身で2012年に英国王立音楽院を卒業。その演奏は熟達した技術と並外れた音楽性の類まれなバランスで支えられ、ここ数十年間に頭角を現した最も重要なピアニストの一人とみなされている。2024年にグラモフォン誌から録音史上のトップピアニスト50名の1人に選出された。イギリスの主要オーケストラはもとよりP. ヤルヴィ、ビシュコフ、シャイー、ナガノ、ロト、サロネン、ギルバート、スラットキン、ティルソン=トーマス、エメリャニチェフら著名な指揮者のもとボストン響、シカゴ響、フィラデルフィア管、フランス国立管などと共演を重ねている。またBBCプロムスは過去10年以上にわたり常連で、2023年7月にドビュッシー、リスト、ラヴェル作品によるリサイタルを行い、スペクテイター誌は〈芸術的能力の頂点に達し、そこに留まろうとする天才〉と評した。ほかにもベルリンのコンツェルトハウス、〈ショパンと彼のヨーロッパ〉音楽祭、ラ・ロック・ダンテロン音楽祭、カーネギーホールなどでリサイタルを行っている。ウィグモアホール、ラジオ・フランスなどではアーティストインレジデンスを務めた。2024/2025年シーズンの協奏曲のハイライトはバンベルク交響楽団とNHK交響楽団にデビュー、ロンドン・フィルとの英国ツアー、モントリオール、シアトル、ベルン、ダラス、BBC、バーミンガム市響などとの再演などである。また2025年2月にはパリのシャンゼリゼ劇場で協奏曲のコンサートとソロリサイタルの両方に出演した。録音では2011年にデッカ・クラシックスと契約。英国の音楽家としては史上最年少、英国のピアニストとしては約60年ぶりの契約となった。2020年にリリースされたショパンのピアノ協奏曲のアルバムはグラモフォン賞とディアパゾン金賞を受賞。21年にはリスト作品のアルバムがショク賞とセシリア賞を受賞。2023年にリリースしたシューマンとブラームス作品のアルバムは、グラモフォン誌のエディターズチョイスとディアパゾン金賞に選ばれ、〈傑作〉(ル・ドゥヴォワール誌)と絶賛された。