©Roberto Cifarelli / ECM Records

ECMたる機微と米国ジャズの本懐をつなぐ最重要事人物が、新作をリリース!

 現在、ジョー・ロヴァーノは72歳。だが、彼は今もっとも輝かしい期間に入っていると言っていい。とくにECMからリーダー作を出すようになった2019年以降の作品群のテナー・サックス演奏の素晴らしさ、詩情と即興性が同一言語となるサウンド志向の敏感さと言ったなら!

 「ECMが設立された際、17歳でした。初めて買ったレコードは、キース・ジャレットの『フェイシング・ユー』。その後、様々なECMの作品に魅せられてきた。そして、私が今その歴史の一部に関われていることは誇りだ」

JOE LOVANO 『Homage』 ECM/ユニバーサル(2025)

 その新作は、やはりECMからアルバムを出しているポーランド人ピアニストであるマルチン・ボシレフスキのトリオとの2作目『オマージュ』だ。同作は2023年11月、ボシレフスキ・トリオを擁してNYのヴィレッジ・ヴァンガードに出演した際にスタジオ入りして録音された。なんと、その録音場所はブルーノート作品でよく知られるルディ・ヴァン・ゲルター・スタジオだ。同所録音のECM作品というのはレアではないだろうか。

 「ルディ・ヴァン・ゲルター・スタジオで録られた、初のECM作品になると思う。私は何度もそこで録音しているので推挙し、マンフレート・アイヒャー抜きで録音することも彼は認めてくれた。そして、エンジニアのモウリーン・シックラーが録音したものがマンフレートに届けられ、彼がミックスをした。元の音質の良さにも、彼はとても満足していた」

 そんな『オマージュ』を聞くと、ECMたる機微と米国ジャズの本懐をつなぐもっとも重要な経路をロヴァーノが握っている。と、声を大にして言いたくなってしまう。また、ジャズの深淵を描き切る彼のブロウイングに触れていると、エリック・ドルフィーが今も生き、もしテナー・サックスを吹いたならこんな演奏をするかもしれないという、とんでもない妄想を誘発させられてしまう。

 「それは、光栄だ。(『オマージュ』収録のソロ・テナー曲)“ギヴィング・サンクス”という曲は3つのコーラスで成り立っているけど、最初の2つのコーラスはテーマを非常に抽象的に解釈し、3コーラス目でそのテーマがちゃんと提示される。そういうアプローチってオーネット・コールマンやエリック・ドルフィーもしているよね。練られた曲の中で新しい発展を創造していくのがジャズという表現の核に一番なっている部分ではないかと私は考えていて、これからもそれを追求していきたいんだ」