話題のNetflixドラマ「グラスハート」の音楽に携わるなど、多彩な活動を繰り広げている野田洋次郎。彼のバンドRADWIMPSはNHK連続テレビ小説「あんぱん」の主題歌“賜物”が注目を集め、待望のニューアルバムのリリースも控えている。さらにメジャーデビューから20周年を記念し、『×と○と罪と』『絶体絶命』『アルトコロニーの定理』『RADWIMPS 4 ~おかずのごはん~』『RADWIMPS 3 ~無人島に持っていき忘れた一枚~』が順次アナログ化されてきた。今回はレコードリリ-スの完結に合わせて、その5枚のレビューをお届けしよう。 *Mikiki編集部


 

RADWIMPS 『RADWIMPS 3 ~無人島に持っていき忘れた一枚~』 ヴァージン/ユニバーサル(2006)

記念すべきメジャーデビューアルバム。当時の中高生の間での人気の高さを懐かしく思い出しつつ、2000年代のタワーレコードではインディの前2作から次作を含む4部作が常にロングセラーだったと聞く。

音楽性的にはポップパンク(“4645”)、レッド・ホット・チリ・ペッパーズ的なラップ × ロックのいわゆるミクスチャーロックやラップメタル(“イーディーピー 〜飛んで火に入る夏の君〜”)といったY2Kのアメリカを席捲した音楽の要素に加えて、エモやポストロック/マスロックのような構築的なスタイルからの影響を感じさせ、さらにJ-POP/J-ROCKの文脈が流れ込んでいる。一曲ごとに音楽性は異なっており、目まぐるしい。

そんな雑多になりそうな一筋縄ではいかない音楽世界を下支えしているのがメンバーの高い演奏力であり、野田洋次郎の独自の歌詞とメロディだ。野田の歌唱は切ないハイトーンと発声を特徴とする現在のそれに至る前だが、モジュレーション系のエフェクターの繊細な響きと単音を中心に構成したギターフレーズなどの個性的な面は早くも完成している。未完成な青さと音楽的野心が高温で煮えたぎっている、熱い作品である。

造語や暗喩、過激なワード、英語を駆使して築かれた野田の歌詞世界は、愛、生(性)、死のような普遍的なテーマを時に怒りとともに、時に慈しみとともに取り上げている。世界や人間に対する純粋すぎる眼差しは、〈あなたが死ぬその まさに一日前に/僕の 息を止めてください〉とすら歌う“25コ目の染色体”などのラブソングで爆発。それ以外にも“セプテンバーさん”“最大公約数”“へっくしゅん”“トレモロ”と初期の代表曲がめいっぱい詰め込まれており、高濃度すぎる傑作だ。 *天野

 

RADWIMPS 『RADWIMPS 4 ~おかずのごはん~』 ヴァージン/ユニバーサル(2006)

『RADWIMPS 3』からわずか10ヶ月という短いスパンでリリースされた本作。引き続き野田洋次郎のソングライティングのギアはトップに入りっぱなしで、アルバムとしての高い作品性はもちろん、13曲(シークレットトラックは除く)いずれも主食級の仕上がりと言っていいだろう。

“有心論”や“ふたりごと 〜一生に一度のワープver.〜”など2000年代当時のJ-ROCKの型の一つとも呼べそうなギターロックサウンドを軸に、繊細なメロディといくつものキラーフレーズをふんだんに盛り込んだシングル曲が本作の顔となっている。その一方で、のちの“おしゃかしゃま”にも通じるラウドなミクスチャーロック曲“ギミギミック”や、武田祐介のダブなベースラインが心地よい“いいんですか?”ではレゲエロックに挑戦するなど、前作より音楽性の幅が広がっているあたりにバンドとしての成長が窺える。

ちなみに当時すでにiPodが流通していたため、CDプレイヤーやコンポだけでなく、PC経由でデジタルプレイヤーに移して聴くスタイルも主流となっていった(当時は着うたフルなんてのもあった)。イヤホンから聞こえる〈自分だけに響く音楽〉が手軽に持ち運べるようになった、そんな当時の時代性とRADWIMPSの楽曲は抜群に相性がよかったように思う。 *小田