Illustration by NONCHELEEE

タワーレコードの新キャンペーンシリーズ〈集! TOWER RECORDS〉の第1弾としてフュージョンを特集する〈融合祭 ~TOWER RECORDS FUSION CAMPAIGN~〉。海外で注目を集めるジャパニーズフュージョンの作品だけでなく、フュージョンの定番や隠れ名盤などをタワレコバイヤーが選定して展開している。ここでは、企画の一環としてタワレコ限定で再プレスされたJフュージョン名盤8作をレビュー。サブスク解禁されていないアルバムが多いので、ぜひこの記事を参考にして気になったものを手に入れてほしい。


 

CARIOCA 『Sunny Place Carnival』 キティ(1978)

フュージョンバンドCARIOCAの来歴は次の通り。1975年に結成された長谷川きよしバンドのメンバーだった中谷望(フルート)、平野融(ベース)、吉川祐二(パーカッション)は、下北沢や新宿LOFTで〈サンデー・サンバ・セッション〉を定期的におこなっていた。そこにアントニオ石田(ドラムス)と佐藤正美(ギター)が参加、1977年に長谷川きよしバンドが解散してSAMBA CARIOCAを結成した。同バンドは、1979年にCARIOCAと改名している。

SAMBA CARIOCA名義でキティから発表したこの1stアルバムには高中正義(ギター)、坂本龍一(ピアノ/エレクトリックピアノ)、村上“ポンタ”秀一(ドラムス)、向井滋春(トロンボーン)、松武秀樹(プログラミング)など豪華ゲストが参加。フュージョン色は薄く、サンバやボサノバを軸にした演奏で、まさにブラジルや南米の景色が浮かんでくる心地よいリゾート感、BGM的な高い機能性を携えている。

だからといって聴き流すことができないのは演奏が技巧的だからで、特にショーロからの伝統を感じさせる中谷のフルートソロは清涼感に満ちていながらも熱い。そして、“メドレー ブレリュード、バットカーダ/カリオカテーマ・サンバが街にやって来た”“ビリンバウ”“二人と海”“カリンバ”といった曲でのテンポの速いサンバ/ボサノバグルーヴは実に力強い。フュージョンといえば電気楽器だが、本作ではアコースティック楽器が活躍。ブラジリアンフュージョンというよりもブラジル伝統音楽をベースにフュージョン要素を加えている点が魅力で、そのオーセンティシティはこの初作で存分に味わえる。

 

CARIOCA 『Little Train』 キティ(1979)

前作リリースの翌1979年に発表されたCARIOCA名義の2ndアルバム。ブレッド&バターによるコーラス、トマトストリングスによる弦楽、大村憲司のギター、乾裕樹の鍵盤、管楽器アンサンブルなどを迎え、さらにサウンドの幅を広げた。そしてエレクトリック楽器の割合も増し、フュージョン度が増加。ブラジリアン要素は抑え気味だが、ポップさと流麗さ、聴き心地のよさはぐっと上昇している。

ブレッド&バターが歌う“クイック・ステップ・モーション”や“パンデーロを返しておくれ”“フットプリンツ”はサンバとファンクとフュージョンが衝突した見事な〈融合〉ぶりで、CARIOCAにしかなしえないサンバフュージョン。大村が情熱的なギターソロを聴かせる“フットプリンツ”、それとは真逆のスムーズな演奏で魅了する“サンライズ・スマイリン”などは、Jフュージョン作品ならではの白熱ぶりで聴き惚れてしまう熱いナンバーだ。