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切実でしかない歌詞

――ヤコブさんの歌詞について思うのは、初期はひねった表現が多かったのですが、たとえば“部会”や“不安でよかった”など近作は聴いていて救われるんですね。〈それを言ってくれるんだ〉という共感できる言葉を聴けるので、安っぽい言い方ですが、ヤコブさんの歌詞には博愛の精神や優しさ、意地悪さの一切ない温かみが丸裸の状態で出ているように感じて、心を打たれます。

「歌詞に関しては、先ほども言ったように、基本的に自分の体験や自分が思ったことが多いんです。たとえば“部会”は、具体的な話をすると、あるイベントにDJとして呼ばれて行ったんですけど、自分とは違う属性の人たちの巣窟のようで、〈よそ者が来た〉みたいな扱いを受けたように感じたんですね。受付で名前を言っても〈DJ? はあ……〉みたいな反応で、30分ぐらい誰にも話しかけられず、USBを持ってぼーっとしていた時間があって、主催者ともほぼ顔を合わせず。その時に、〈これは絶対に曲にしよう〉と思って書いたものです」

――ははは(笑)。

「あれは悲しい経験でしたね。苦い思い出です。ノームコアで身を固めた、いかにも〈アートを解する〉というようなすました顔をした連中が、〈この田舎者が〉みたいな蔑んだ目で見てきて……。実際はそうじゃないと思うんですけど、もうそういうマインドになっちゃって(笑)。その時に、〈こいつらがいてもいなくても俺は自立しているぞ〉という曲を作ろうと思ったんです」

――切実ですね。

「切実でしかないと思います。ほぼすべての曲でこういう体験をしていて、なおかつ作曲はライフワークなので、愚痴の吐き出し口や捌け口という側面もあるかもしれません」

――なので、一曲一曲の純度が高くて、手癖で書いていない感じを受けるんですね。

「そうですね。〈仕事でやれ〉って言われちゃうと、また違うなと思います。もちろん楽曲提供の仕事にチャレンジしたい気持ちはあるんですけど、それは別の好奇心ですね」

 

歯痒くも愛おしいパワーポップという音楽

――〈いま日本のパワーポップでいちばんいいバンドは家主だ〉と言う人がいて、僕は必ずしもそれだけのバンドじゃないと思っているので違和感があるのですが、ご自身のルーツにパワーポップがゴリッとあるのは間違いないですよね?

「そうですね。ビッグ・ディールというレーベルが出していたシリーズ(『Yellow Pills』)や、(ライノがリリースしていた)『Poptopia!』というパワーポップコンピで育ったので。

日本では時期的にも〈オアシス、オアシス〉と言われていますが、それこそオアシスより全然好きなパワーポップバンドはいて、でもアルバム2、3枚で消えちゃっているんですよね。そういう日の目を見ないバンドを山ほど知っているので、パワーポップのことを考えるといつも切なくなっちゃうんです。日の目を見ないことで完成されるジャンルというか」

――〈ポップ〉なので、本当はそうじゃないはずのジャンルなんですけどね(笑)。

「そうですね。もっと市民権を得ていいはずですし。言うたらMr.ChildrenやBUMP OF CHICKENだってパワーポップに括られてもいいと思うんですけど、そうではない状況が歯痒くも愛おしい、みたいな気持ちがパワーポップにはすごくあります」

――ヤコブさんの好みでは、パワーポップといえばどういうバンドが挙がりますか?

「やっぱり金字塔はジェリーフィッシュですね。あとジェリーフィッシュのメンバーがやっていたザ・グレイズがめちゃくちゃ好きで、大学受験の勉強をしている時はあのバンドばっかり聴いていました。こびりついちゃっていて、ザ・グレイズを聴くと〈武家諸法度〉とか日本史の単語が出てきます」

――“Very Best Years”を聴くと受験生時代が思い浮かぶんですね(笑)。

「そうなんです。冬の朝って感じですね。いま時期はだいぶ音楽を聴ける季節になってきましたが、冬はパワーポップの季節だと思います」

――ちなみに、動きのあるギターはどこから来ているんですか? “不安でよかった”のトリルがいっぱい入っている感じとか。

「トリルはリック・ニールセンですね。あと、AC/DCとかヴァン・ヘイレンとかでしょうか」

――やっぱり、ハードロックからの影響がデカいんですね。

「デカいですね。色々コピーしてきたので。使える言語はいっぱい持っているので、テクニック的にハードロックの発想がある感じです」