
〈面白そうだからやる〉を原動力に集まった3人
――アルバム『ICI』には、ミニマル的な要素も感じられました。スティーヴ・ライヒはマリンバ用の楽曲も書いていますが……。
山田「もちろん通過しています。ライヒの作品とか、あの当時出てきた、マリンバをミニマル音楽で取り入れる楽曲は、ほとんど聴いたり、自分でも演奏したりしたことがありますが、それはもうすでにあるものですし、それだけを追求するグループもヨーロッパやアメリカにもたくさんありますので、自分の課題ではないな、と感じていました」
上運天「ぼくはクラシックを演奏していた時にライヒ、アルノルト・シェーンベルク、アルバン・ベルク等には取り組んでいたので、その要素がちょっとはあると思います。ループする音楽は大好きです」
堀「ぼくはあんまりないですね、クラシックをまともに演奏してこなかったので。ライヒほどの速いミニマルはすごいと思いますけど、自分ではできない。〈繰り返す〉という意味で言えば、〈何も起きない〉ことは、それはそれでとても価値があることだと考えています。個人的には、音楽において〈速い〉とか〈強い〉ではない方面を大事にしたいです」
――ここで改めて、このプロジェクトについてうかがえますでしょうか?
山田「〈Days of Delight Atelier Concert〉の映像収録をこの3人で行ったのがきっかけです。平野さんに〈一緒に演奏したい、相性が良さそうなミュージシャンをあとふたり選んで〉と言われて、上運天さんと堀さんにお声がけしたんです。
そのプロジェクト自体はあくまでセッションだったんですが、収録が終わるとすぐに平野さんが〈これで終わりにしたらもったいない。このユニットで作品を作らない?〉とオファーをくださって。その後、1年半ほどギグを重ねてレコーディングに臨みました」
――ベースやドラムもない、相当に希少な楽器編成だと思いますが……。
上運天「面白そうだからやりましょうという感じですね。ぼくらは日ごろインプロビゼーションをやっているので、編成上の恐怖はないんですよ。
楽器についていえば、僕自身は最初はテナーサックス1本でいいだろうと思っていたんだけど、音を出したところ〈バスクラもあった方が良さそうだ〉と思うようになって、結局バスクラ主体になりました」
堀「ぼくはこのレコーディングに関しては、トランペットにエフェクト処理はしていなくて、生音をそのまま録っています。ラップトップを通したエレクトロ要因と、トランペットの生音を完全に分ける形で臨みました」
――山田さんは、マリンバ、ビブラフォン、パーカッションを演奏なさっています。
山田「楽曲のイメージによって選んだり、自分の曲に関しては、意図的に〈このサウンドがはまる〉という感じで振り分けてもいます。マリンバとビブラフォンでは音から受けるニュアンスやキャラクターがまったく違うので、そのあたりも楽しんでいただけたら、と思っています」
テーマを繰り返す裏でテクスチャーやムードを変化させていく
――今回のアルバムには3人のオリジナル曲がそれぞれ集まっていますが、これはあて書きですか?
山田「そうですね」
上運天「ぼくもそうです」
堀「“ICI”だけは前に書いた曲なんですが、映像収録で3人でやった時にうまくはまったので、今回も持ってきました。それ以外はすべてあて書きです」
――アルバムに入っている“ICI”は、YouTubeで公開されている〈Days of Delight Atelier Concert vol. 120〉のテイクとは、また全然趣の違う展開に感じられました。
堀「実はコレ、ぼくが前にやっていたバンドのために書いた曲なんです。その時からコンセプトは変わってなくて、テーマメロディをずっと繰り返す裏で、テクスチャーやムードを変化させていくというコンセプトを持つ曲です。マイルス・デイヴィスの“Nefertiti”みたいなイメージで、ジャズ的なイディオムも排除して、という」
――〈ICI〉という名称には、どんな意味があるのでしょうか?
堀「〈ici〉はフランス語で、〈ここ〉とか〈here〉みたいな意味です。もちろんそのまま〈アイシーアイ〉と発音してくれてもいいし、よく分からない3文字の頭文字だろうと思ってもらってもいい。あまり意味を考えないでくれ、という感じです(笑)」