タワーレコード新宿店~渋谷店の洋楽ロック/
つねにリスナー視点を大切にした語り口とユーモラスな発想をもっと多くの人に知ってもらいたい、読んでもらいたい! ということで始まったのが、連載〈パノラマ音楽奇談〉です。第5回は〈夏の極私的名盤〉として浜田省吾の『CLUB SURF & SNOWBOUND』について綴ってもらいました。 *Mikiki編集部
浜省に馴染みない人にこそおすすめ! 北爪啓之の〈夏の極私的名盤〉
今回は〈夏の極私的名盤〉という、ベタなのかそうでもないのかよくわからないテーマのもとに、浜田省吾(以下、敬愛を込めて浜省)のアルバムを取り上げたいと思います。
浜省というと熱く硬派なロックシンガーというイメージを持っている人が多いんじゃないかなと思うのですが、彼のルーツの一つにビーチ・ボーイズをはじめとする往年のアメリカンポップスがあることは意外と知られてないかもしれません。そんな彼のポップフリークぶりが存分に発揮されたアルバムが、87年にリリースされた『CLUB SURF & SNOWBOUND』です。
〈Surf=夏〉と〈Snow=冬〉をテーマにしたそれぞれのミニアルバムを合わせた変則的な作りなうえに、THE FUSEというバックバンドとの共作名義。そして音楽性においてもパブリックイメージとはやや異なる作風。そんなイレギュラー要素が重なっているからか今ではなかなか語られる機会もないアルバムだけど、それはあまりにも勿体ない。むしろ〈浜省には馴染みがないけど、大滝詠一や杉真理、山下達郎は好き〉という人にこそレコメンドしたい名品なのです。
ビーチ・ボーイズ色濃厚な“二人の夏”と出会った中三の夏
洋楽オールディーズに夢中だった(第1回参照)中学三年の夏のこと。
そのころ地元のローカルテレビでは深夜にお色気番組が放送されていて、親に隠れてそれを観ることが当時の中高生男子のたしなみでした。その日はたまたま少し早目にチャンネルを合わせて漫画(たしか「気まぐれオレンジ・ロード」)を読んでいたところ、不意にテレビから素敵な音楽が流れてきたのです。慌てて目をやると、それは浜田省吾 & THE FUSEの“二人の夏”という曲のPVでした。
精巧な模型で作られた「アメリカン・グラフィティ」のような町をミニチュアカーがドライブするという映像からして完全にツボで、もはやお色気番組どころではありません。そしてなによりも思いきりビーチ・ボーイズを彷彿とさせる楽曲、しかもそれが日本語で歌われていることに大きな衝撃を受けました。もともとクールスやシャネルズなどオールディーズテイストのある邦楽は好きだったけれど、これほど大胆に洋楽ポップスを和訳したような音楽を耳にしたのは初めてだったのです。じつはそれ以前に大滝詠一も聴いていましたが、我がリスナースキルが未熟だったため、当時はあまりアメリカンポップス風味を感じ取れていなかったのでした。
ともあれ浜田省吾が誰なのかはわからないものの、一聴しただけで僕はその虜になってしまったのです。“二人の夏”を聴くと、今でも中三の〈あの夏の感じ〉(ジョナサン・