オリジナルはもちろん、「ツイン・ピークス」の世界観に挑む〈マダム・クルーナー〉2026!

 1980年前後にパンク直後の音楽ムーブメントとして登場したニューウェーブ。パンクが反体制を標榜する荒々しい表現だったのに対して、コチラは遊戯的である意味テクニカルだった。過去のポップ文化の偏愛からの引用満載のレトロ、衣装やキャラクターを重視するシアトリカル感覚、主流音楽から距離を取るオルタナティヴな姿勢がない交ぜとなって、明るく奇妙で、人工的で、どこか不穏なポップスとして1980年代の感性を形づくったのである。

 そして、シーンの渦中に、アンドロジナスな雰囲気とテクノカットで登場したコシミハルは、まさにニューウェーブの申し子だった。シューベルトの“野ばら”を打ち込みの編曲手腕と少年の美声でポップに蘇らせた彼女はその後、オリジナルの楽曲とともにテクノ/電子音楽という表現手段でもって、シャンソンや古き良き時代の名曲を手がけ、そのあたりのセンスを大いに共有する細野晴臣とも多くのコラボ作品を創り上げている。

 そんな彼女は、〈マダム・クルーナー〉と題し、クインテットによる生演奏ライヴシリーズを長年行っている。2013年にスタートし、何と今年で13回目。選曲を見ればその輪郭は明快で、音楽好きならば反応必須の〈古いけれど新しい音楽〉が満載なのだ。1930~40年代のビッグバンドジャズやシャルル・トレネ、ジャン・サブロン、イヴ・モンタンといったシャンソン群、マレーネ・ディートリヒ、マリリン・モンロー、さらにジョルジュ・オーリックなどなど。〈Le bal secret(ル・バル・スクレ)〉と名付けられた今回は、オリジナルはもちろんのこと、「ツイン・ピークス」第2弾として、デヴィッド・リンチ × アンジェロ・バダラメンティの音楽など、新たな選曲に挑む。

 ちなみにバンドメンバーは、フェビアン・レザ・パネ(ピアノ)、渡辺等(ベース)、今堀恒雄(ギター)、則武諒(ドラム)という名手たちがそろい踏みで、〈伴奏〉という表現がいかに主役を引き立たせ、世界を広げていくかの妙を、身をもって体験することになるだろう。

 美脚をストッキングに包み、コルセット姿も粋なショウガールスタイルで舞台に立つマダム・クルーナーことコシミハル。ウディ・アレンの「ミッド・ナイト・インパリ」は、1920年代の文化繚乱期のバリにタイムスリップしてしまう男の物語だが、私たちはこの夏の夜、彼女の音楽を前に、時空を越えて酔いしれることになる。

 


LIVE INFORMATION
コシミハル Madame Crooner 13
“Le bal secret”

2026年7月29日(水)東京・四谷区民ホール
開場/開演:18:00/18:30

■出演
コシミハル(ボーカル/アコーディオン/グロッケンシュピール/ボコーダー/ピアノ)
フェビアン・レザ・パネ(ピアノ)
渡辺等(ベース)
今堀恒雄(ギター)
則武諒(ドラムス)

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