©Makoto Kamiya

デビュー10周年、ブラームスとグラズノフの協奏曲で彩る渾身の最新作

 国内屈指の若手ヴァイオリニストである辻彩奈が、ブラームスとグラズノフのヴァイオリン協奏曲をそろえた新譜を発表した。一見対照的な両作曲家の情感と美しい旋律を際立たせるのにふさわしい渾身のアルバムだ。辻に制作に込めた思いを聞いた。

 ブラームスのヴァイオリン協奏曲は数々の名奏者が演奏してきた王道中の王道の協奏曲。だが、辻が人前で演奏したのは、意外にも2025年が初めてだった。

「この曲はヴァイオリニストにとって偉大な作品です。精神性が高く、一筋縄ではいきません。協奏曲を弾く前に彼の作品をたくさん知り、勉強するべきだと思い、室内楽に積極的に取り組みました。ピアノの阪田知樹さんとのツアーではソナタを取り上げたりと、ブラームスと向き合い続けた後に満を持して協奏曲に挑みました」

辻彩奈 『ブラームス&グラズノフ:ヴァイオリン協奏曲』 ソニー(2026)

 2025年10月、パスカル・ロフェ指揮大阪フィルハーモニー交響楽団の公演でライヴ録音した。

 「初めてオーケストラと弾いたときにオケの厚み、特に弦楽器の厚みを感じました。憧れの作品が〈ついに来た〉という感慨深い思いで、本番では自分を解き放てました。ブラームスの作品の魅力は彼の素直な感情がメロディに乗って現れること。演奏するのは心身ともに大変でしたが、弾くたびに勉強になり、大きな経験でした」

 グラズノフのヴァイオリン協奏曲は、2025年3月ケンショウ・ワタナベ指揮の東京フィルハーモニー交響楽団とのライヴ収録だ。グラズノフは2024年のシャルル・デュトワ指揮九州交響楽団との公演でも演奏し、思い入れの深い大切な作品だ。

 「デュトワさんは本当に音楽に対して厳しい。思い通りの音が出るまでリハーサルをやり続けます。〈音の魔術師〉として音を引き出す力に感動しました。演奏機会が少ない曲ですが、皆さんに曲の魅力を知ってほしいです」

 辻は現在28歳。デビュー10周年を迎えた。コロナ禍においては海外アーティストの来日が相次ぎキャンセルとなり、多くの公演で“代役”を務めた。この経験が今に生きている。

 「30代になったらベルクや武満徹など現代作曲家の楽曲をやってみたいです。来年2月にはバッハの無伴奏全曲演奏会も控えており、今年はじっくりバッハと向き合う年です」

 18歳の頃からプロとして国内外の華やかな舞台で演奏し続けて10年が経ち、次の10年に向けた新たな挑戦が始まる。辻は今後どのような音楽を聴かせてくれるのだろうか。

 


LIVE INFORMATION
辻彩奈&阪田知樹 デュオ・リサイタル

2026年9月12日(土)大阪 住友生命いずみホール
2026年9月13日(日)栃木 宇都宮市文化会館 小ホール
2026年9月16日(水)北海道 札幌コンサートホール Kitara 小ホール
2026年9月19日(土)愛知・名古屋 しらかわホール
2026年9月21日(月・祝)香川 観音寺市文化会館 ハイスタッフホール 小ホール
2026年9月22日(火・祝)鳥取 米子市公会堂 大ホール
2026年9月23日(水・祝)京都コンサートホール アンサンブルホール ムラタ
2026年9月25日(金)神奈川 横浜みなとみらいホール 大ホール
2026年9月26日(土)静岡 グランシップ静岡 大地ホール
2026年9月27日(日)埼玉 所沢ミューズ アークホール
https://www.kajimotomusic.com/artists-projects/ayana-tsuji/