©Oliver Johnson / Stephen Wilkinson

15年以上にわたって関係を深めてきた鬼才トラックメイカーと孤高の音職人が初のコラボ作を完成! 解き放たれた互いの好奇心とクリエイティヴな対話から導き出された『Answers』とは?

 ビビオことスティーヴン・ウィルキンソンとドリアン・コンセプトことオリヴァー・ジョンソンが、初のコラボレーション・アルバム『Answers』を完成させた。

 二人が初めて出会ったのは2009年、ロンドンで開催されたブレインフィーダーのショーでのこと。その後も交流を続け、2022年にドリアン・コンセプトの“Let It All Go”のMVを観たウィルキンソンがジョンソンへ共同制作を持ちかけ、やがて本作へと発展。メールやメッセージ・アプリ、共有フォルダを介して楽曲や映像、アイデアを交換し、相手から送られてきたものに対して、それぞれが反応を返すという直感的なプロセスで制作を進展させていった。そのプロセスは楽曲の各パートを具体的に分担して制作するというよりも、お互いのアイデアにコメントを返していくことに近いものだったという。

 「まるでクリエイティヴな文通のような感じだったよ。お互いに何かを送り、それに反応して、また送り返す。ある意味ではお互いの質問に答えていくような感じ。それが、今回のコラボそのものなんだ」(ウィルキンソン)。

BIBIO, DORIAN CONCEPT 『Answers』 Warp/BEAT(2026)

 〈前に進むために過去を振り返る〉というテーマを根底に据えた本作では、それぞれの暮らす環境や、長くアーティストとして歩んできた道程によって形作られてきた、二つの異なる音楽世界が融合している。そして、二人の共有するサウンドが実験と即興を通じ、どちらも予想していなかった場所へと導かれている。そのために、お互いが楽曲に完全な自由を与え、一切の制約を取り払い、完璧主義よりも好奇心を優先した。

 「音を上げたり下げたり、すべてを細かくレイヤーに分けたりするのではなく、録音全体をそのまま扱うようにしたんだ。絵の具をカンヴァスに投げつけて、何が残るかを見るような感覚に近いのかな。二人ともこのコラボに関しては普段とは違うことをして、いろいろ試してみるための良い機会だと捉えていたんだよ」(ジョンソン)。

 指示を付けずに音楽を共有することで、新しいリズムが生まれていく。余白が広がることで楽曲は大きく開放され、ループがゆっくり展開していく。その結果、十分に速度を落として観察したときに初めて見えてくる、細部に宿る美しさが浮かび上がった。手回し式オルゴールの音色を用いた“Pearl Net”はまるで水面に反射する光のような煌めきを放ち、トレイの上で回転し、跳ねながら散らばる画鋲の繊細な音がタイトルの由来となった“Pins And Needles”は小さな摩擦や息の音をパーカッションのようにサンプリングすることで新たなリズムを生み出している。アルバムを導くのは感情に満ちたギターとピアノのメロディーだ。“Starbird”は鳥の声から始まり、ジョンソンによる豊かなピアノのリフレインへと繋がっていき、“Womb Glow”ではウィルキンソンのループ・ギターがサンプリングされ、やがて柔らかくピアノのような音へと変化していく。

 こうした制作プロセスはアルバムを彩るヴィジュアル作品にも影響を与えている。年代物のビデオカメラやミキサー、改造を施したビデオ機器などを駆使し、経年した機材の生み出すエラーやグリッチ、予期せぬ映像の乱れを積極的に採用。二人の身の回りで撮影された映像は加工やレイヤーの素材となり、自然の風景や日常の何気ない瞬間が、アナログとデジタル双方のプロセスを通じて、新たな映像表現へと姿を変えている。

 「自分たちで撮影した映像を観返しながら、目に留まる瞬間を探していったんだ。世界を彷徨いながら、フレームに収めるべき風景を探している写真家に近い感じなのかな」(ウィルキンソン)。

 二人が手掛けたアルバムのジャケットには、ウィーン郊外の豊かな緑の風景を背景に、赤い服を着たハイカーが写っている。また、裏ジャケにはリード・トラック“Lichen Trip”のMVから切り取った、瞬きすれば見逃してしまいそうな一場面が使用されている。CDやLPを実際に手に取って、音楽や映像と一緒にアートワークまでじっくり味わうことで長く愛されそうな作品だ。

左から、ビビオの2022年作『BIB10』、2024年作『Phantom Brickworks (LP II)』、ビビオが参加したケリー・モーランの2025年作『Don’t Trust Mirrors』(すべてWarp)

左から、ドリアン・コンセプトの2022年作『What We Do For Others』(Brainfeeder)、2025年作『Miniatures』(Play Instinct)、ドリアン・コンセプトが参加したケニー・ビーツの2023年作『LOUIE』(XL)