霞がかった音像がボァ~と広がって、そこに繊細な歌がファ~と入ってきたら、数秒でだいたい〈わるくないね!〉と思ってしまうのだから凄い発明だと思う。が、その源流たるドレイクと、彼の率いるOVO軍団は流石にそれ以上だ。彼の昨年作『Nothing Was The Same』で歌っていた21歳、パーティーネクストドア初のフル・アルバム。ホーリー・アザー使いの不穏な冒頭からナイーヴな声が滲み出し、ドゥルー・ヒル、ディスクロージャー、ミッシー、ジニュワインといったネタ選びの〈バランスの良さ〉も常道的な〈センスの良さ〉ではあるものの、全編を独力で手掛けたトラックは週末の退廃よりも週明け直前の静謐な憂鬱を転写したかのようで妙に揺さぶられる。すでに全米R&Bチャート首位を獲得済みの佳作。