度重なる延期を経てやっと出た8作目は、昨年までのヒット群も置き去りにして(“Good Kisser”“She Came To Give It To You”は日本盤にボーナス収録)、直近のモードでまとめたトレンディーな意欲作だ。ダジャレ的なフックで押し切るヤング・サグとの先行カット“No Limit”やフューチャーとの“Rivals”、さらにルークの声ネタを用いたドリーム製の“Bump”やメトロ・ブーミンとの合体は、主役がクランクスナップトラップと掌中に収めてきたアトランタR&B流儀の最新マナーといった感じ。ラップ風のフロウも交えつつ内省に寄せた繊細な歌唱の柔軟さは、ポップ&オーク作の“Missin U”やパーティーネクストドアらカナダ勢との共作でも機能美を見せる。他にもオープナーにはポール・エプワースを招き、柔和なトロピカル・ハウスの“Crash”ではニコ&ヴィンス仕事で注目されたフォーレン&カルロス・セント・ジョンを起用するなど、トップに立つ人ならではの貪欲さもいい。モダンアートなジャケはともかく、中身は圧倒的だ。