謎の指揮者・天道(西田敏行)のタクトの下、解散した名門オーケストラが再起をかけて《運命》と《未完成》に取り組む姿を描いた『マエストロ!』。メガホンをとったのは『かぞくのひけつ』『毎日かあさん』で家族を描いてきた小林聖太郎監督だ。
「実はクラシックはあまり聴いていなくて、ソウルやレゲエなどのブラック・ミュージックが好きだったんです。楽器も俳優部の練習に付き合ってギター等を始めたことはあるんですが、全て三日坊主で全くダメ。おまけにドレミのミとファの間が半音だと知ったのも数年前ですし。ただ、『ナビィの恋』『ホテル・ハイビスカス』など音楽絡みの映画に助監督として就く機会が多かったこともあり、いつかは自分も、という想いを持っていました。企画成立まで二年余り時間がかかったことが幸いして、音楽の上野耕治さんからクラシック音楽史や理論の講義を受けたり、プロからアマまでオーケストラのリハや本番を見学したり、指揮者や演奏者の方々に取材を重ねたり、と「付け焼き刃」が分厚くなっていきました。指揮者の天道役に西田さんをキャスティングしたのは、これも助監督として就いた『ゲロッパ!』でご一緒したことが大きいです。西田さんなら、芝居への安心感は勿論ですが、"大阪弁""指揮"などという枷をはめられても、必ず乗り越えていただける、という信頼というか、読みはありました。むしろご本人が快適に気持ちよくお芝居するよりも、枷を打ち破ろうとする欲望が湧き出る瞬間が一番輝くのではないか、と」
もうひとり、フルート奏者のあまね役に演技初体験のmiwaを抜擢したのも、大きな話題だ。
「下手すると現実感のないキャラクターになってしまうのですが、実際にご本人とお会いし、『これだ!』という本能的な直感で決めました。撮影前には演出部と一緒に全シーンをリハーサルしました。それこそ『今日は沢庵食べながらお芝居してみよう』とか言って、スタッフルームで青椒肉絲定食を一緒に食べながら(笑)耳がいいので、神戸弁も難なく吸収してました。でも後で聞くと、よくそう言われるけど、すごく不安でいっぱい準備するらしいので、影でめちゃめちゃ頑張ってたのかもしれません」
物語の中ではコンマス・香坂(松坂桃李)と、ヴァイオリン奏者だった亡き父の複雑な関係が描かれている。
「30代になった男が父親の影を引きずり続けるという設定に本当に普遍性があるのか、かなり悩みました。その設定に確信が持てたのは、撮影前に見たカルロス・クライバーのドキュメンタリー『アイ・アム・ロスト・トゥ・ザ・ワールド』。死ぬまで父エーリッヒの影を引きずっていましたからね。あれはずいぶんと参考になりました」
MOVIE INFORMATION
映画「マエストロ!」
監督:小林聖太郎 原作:さそうあきら『マエストロ』(双葉社刊)漫画アクション連載
出演:松坂桃李 miwa/ 古舘寛治 大石吾朗 濱田マリ 河井青葉 池田鉄洋 モロ師岡 村杉蝉之介 小林且弥 中村倫也/斉藤暁 嶋田久作/松重豊 /西田敏行
◎2015年1/31(土)全国ロードショー!
http://maestro-movie.com/