ザ・バッド・プラスは米国中西部の逸脱ジャズ・マンたちが2000年に結成した、“バカヤロー、俺たちゃ俺らの道を行く”を地で行くような鋭敏変調ピアノ・トリオである。ベースのリード・アンダーソン、ドラムのデイヴィッド・キング、ピアノのイーサン・アイヴァーソン、その顔ぶれは結成いらい不変だ。
「なんか当初からうまく行きそうな気がしていた。皆、音楽に対してマジだし、時間をかけて成長して行く音楽をやりたいという思いがあったからね」(キング)
「3人とも、背骨にはジャズがある。だけど、ジャズだけでなく、いろんなものが入り込んでくることを許容できる3人でもある」(アンダーソン)
「“別のところにある音楽”、それを皆で求めようとした。ありのままの自分たちの姿を受け入れ、僕たちはリスクを負う事を恐れなかった」(アイヴァーソン)
そんな彼らはソニー、ユニヴァーサル、E1から、いろいろとリーダー作を発表。そして、今は再びソニー(のマスターワークス/オーケイ)と契約している。
「また戻って来てうれしい。でも、ユニヴァーサルから現在まで、ウルフ・ミラーとチャック・ミッチェル(現在、その二人がオーケイに関与)とチームを組んでやっているので、僕たちとしては体制が変わったという印象はないんだ」(アンダーソン)
彼らは『The Rite of Spring』と『Inevitable Western 』という2枚のアルバムを、2014年に発表。前者はストラヴィンスキーの『春の祭典』を彼ら流に処理したアルバムであり、後者はすべてメンバーの自作曲で固めた通常の流れにある作品だ。
「『春の祭典』は過去ちょいちょいライヴではやっていたりもし、皆ストラヴィンスキーは大好きだった。だから、もし1枚まるまるやるのだったら、『春の祭典』しかなかった。そこには、ジャズやプログ(レッシヴ)・ロックの要素があったりもし、はたまたデューク・エリントン的な部分も持つ。アレンジはすごく自然にできたと思うよ」(アイヴァーソン)
「『Inevitable Western』はツアー中にできた曲を、あくまで自然体でまとめた。アナログ録音に適したミネアポリスのスタジオで悠々と録ったわけだが、まさしく僕たちのアルバムになったと思うな」(キング)
米国のジャズ専門誌「ダウンビート」の2014年8月号発表の批評家投票において、〈ジャズ・グループ〉部門で2位(1位はウェイン・ショーター・カルテットで、3位はチャールズ・ロイド・カルテット)に選出されている彼らは意気盛んにして、本当に好調。
「ジャズの王道をすべて避けることが、僕たちの表現の公式」(アンダーソン)、だそうである。