後期ロキシー・ミュージック以降のフェリーの音楽性を端的に言えば、〈黒人音楽を極めて欧州的な洗練とデカダンスで再構築したサウンド〉ということになるだろうか。それは実にコンテポラリーな仕上がりの本作でも一切ブレていない。ナイル・ロジャースやトッド・テリエから、ジョニー・マーにフリーまで多彩なゲストを随所に配して生まれた、豊潤でしなやかなグルーヴ。決して黒っぽい声質ではないのに、得も言われぬ甘さと艶気を帯びたヴォーカル。これはブラック・ミュージックの安易な模倣とは別種の、他に類のないフェリー・ソウルである。また楽曲も粒揃いだが、とりわけ9人のギタリストが参加した“Midnight Train”のバウンシーな昂揚感は筆舌に尽くし難い。たまらんよ。