このコラムでは、平均年齢17歳という若さでデビューしたキティ・デイジー&ルイスの躍進を、陰で日向で支えてきた大人たちにスポットを当ててみたい。まずは両親から。これがフツーの母さん父さんではない。何しろ母親のイングリッド・ウェイスはレインコーツの元メンバーである。レインコーツは70年代末から80年前半に活躍したポスト・パンクを代表するガールズ・バンドで、素人臭さ丸出しの奇跡的にプリミティヴなサウンドには、ダム・ダム・ガールズをはじめ、熱烈なファンが多い。現在のイングリッドは子供たちのライヴをサポートしているほか、フォトグラファーとしても活動しているようで、KD&Lのジャケット写真は彼女によるものだ。
一方、父親のグレアム・ダーラムは著名なマスタリング・エンジニア。70年代末からアイランドに所属し、代表的な作品だけでもブラック・ウフル『Sinsemilla』(80年)やパラゴンズ『The Paragons』(80年)、B-52's『Mesopotamia』(82年)にU2『The Unforgettable Fire』(84年)など枚挙に暇がない。また87年には自身のマスタリング・スタジオ=エクスチェンジを設立し、現在もホスピタル、ミュート、ドミノ、XLなどの作品に関与している。当然ながらKD&Lのマスタリングはすべて父のワークスだ。
続いては、これまたKD&Lの全作品に携わっているエディ“タンタン”ソーントン。ジャマイカのアルファ・ボーイズ・スクール出身(同期はドン・ドラモンド)で、ボブ・マーリーはもちろん、ビートルズやローリング・ストーンズとも共演してきたスカ界の伝説的なトランペッターであり、83歳になった現在もスカ・クバーノの一員としてステージに立っているスーパー老人だ。KD&Lにスカのいろはを教えた御大の一声で、リコ・ロドリゲスが前作『Smoking In Heaven』に駆け付けたことも特筆すべきトピックか。
最後に紹介するのは、ニュー・アルバム『Kitty, Daisy & Lewis The Third』のプロデュースを担当したミック・ジョーンズ。ご存知、元クラッシュ~ビッグ・オーディオ・ダイナマイトのギタリストだが、プロデューサーとしてリバティーンズを手掛けたことも忘れ難い。ロカビリーやスカ、カリプソの要素を採り入れた音楽性という点でクラッシュはKD&Lの先輩バンドとも言えるので、今回の選出は適任と言えるだろう。そんなこんなで、素晴らしい大人たちのバックアップを受けながらみずからの信じる道を突き進む3姉弟の今後を、僕も(勝手に)親戚の叔父さんのような気持ちで見守っていきたい。