ルーツ・ミュージックへの愛情、ヴィンテージ・サウンドへのこだわり、人懐っこいポップセンス……初作から15周年を迎えて来日も控える3人から人気曲満載のシングル・コレクションが到着!

 現時点での最新アルバムにあたる4作目『Superscope』(2017年)を引っ提げて来日した2018年にはサンデイ・ベストから“Suspicion”を配信し、同年のクリスマスに自主で“Silent Night”を発表、さらに2019年にはスティーヴィー・ワンダーの快活なカヴァー“Signed, Sealed, Delivered (I’m Yours)”も届けていたキティ・デイジー&ルイス。ここしばらくはパンデミックの影響もあってか動きが見えにくくなっていたものの、その間にキティとルイスのコンビによる外部活動は、ジョージ・フォークナーによるマリー・ウィルソン(ビーチ・ボーイズのウィルソン兄弟の父親)曲のカヴァー集『Sings Murry Wilson』(2020年)でのプロデュース/演奏をはじめ、ファンク・メサイアズなるプロジェクトのディスコ・チューン“Save Me”(2022年)での演奏、ラヴィルやニック・コービンら参加者が出会って48時間で曲を作るというフォノ48のシングル“So Pure”(2022年)への参加など、いくつかの名前を見ることができていた。そんな状況を経て今年の春からツアー活動を再開したという3人が、この10月には実に5年ぶりの来日を果たす。そんな喜ばしいタイミングに合わせて日本独自にコンパイルされたのが、このたびリリースの『Singles Collection』だ。

KITTY,DAISY & LEWIS 『Singles Collection』 Sunday Best/BEAT(2023)

 そもそもロンドン生まれのダーハム3姉弟妹によるこのロックンロール・バンドは最初からセンセーショナルだった。次女のキティ(ヴォーカル/ギター/ハーモニカ他)、長女のデイジー(ドラムス/ヴォーカル他)、長男のルイス(ギター/ピアノ/ヴォーカル他)の3人は、マスタリング・エンジニアのグラッツ・ダーハムを父に、レインコーツのメンバーとして知られるイングリッド・ウェイスを母に持つという生粋の音楽一家に生まれ、幼い頃からヴィンテージの楽器に囲まれて育ってきた。揃ってさまざまな楽器の演奏に習熟し、10代前半からトリオでライヴを行ってきたセンスや技量は、そうした環境によって着実に育まれてきたものに相違ない。

 やがてロブ・ダ・バンクの主宰レーベル=サンデイ・ベストにフックアップされると、2008年にはジャケのインパクトもあるファースト・アルバム『Kitty, Daisy & Lewis』をリリース。ブリティッシュ・ビート以前の古典的なロックンロールやロカビリー~ヒルビリー、リズム&ブルースといったトラディショナルな音楽性を瑞々しく追求した同作の音作りは、アナログ機材のみを使用したヴィンテージ志向のロウでプリミティヴなもので、ちょうどエイミー・ワインハウスやマーク・ロンソンらの活躍によってレトロ~ヴィンテージな雰囲気作りがメインストリームのシーンで脚光を浴びていた時流にもうまくハマって、各方面から大きな注目と称賛を集めることになった。高まる評判を受け、3人は同年に〈朝霧JAM〉出演で初来日も果たす。

 多くのセレブリティーからも注目される状況を踏まえて2009年にはコールドプレイのUSツアーでサポート・アクトに起用。さらに2010年は〈フジロック〉出演のために再来日を果たすなど、3人の人気は大いに広がっていく。2011年にはオーセンティックなスカなどアレンジの幅を広げたセカンド・アルバム『Smoking in Heaven』を発表し、2015年にはかねてからファンを公言していたミック・ジョーンズ(元クラッシュ)をプロデューサーに迎えてサード・アルバム『The Third』をリリース。日本でも初の単独ツアーとEGO-WRAPPIN’との対バンツアーの両方が全公演ソールドアウトとなり、安定した人気ぶりを証明した。その後は再度セルフ・プロデュースに戻った4作目『Superscope』(2017年)を経て2018年に来日。それ以来となるこの10月の来日は、〈朝霧JAM〉への出演と東阪での単独ツアーで彼らのステージが楽しめる。

 シングルのスリーヴデザインをジャケに用いた今回の『Singles Collection』では過去4作からの定番曲や人気曲に加えて、最初期のシングルB面曲“Ride”(2006年)とスリムキッド3(ファーサイド)との“Baby Bye Bye”(2015年)もCD化が実現。さらに進化しているであろうパフォーマンスを目撃できる人も、そうでない人も、素晴らしい楽曲の数々を改めて楽しみたい。

キティ・デイジー&ルイスの作品を紹介。
左から、2008年作『Kitty, Daisy & Lewis』、2011年作『Smoking In Heaven』、2015年作『The Third』、2017年作『Superscope』(すべてSunday Best)

 


LIVE INFORMATION
KITTY, DAISY & LEWIS JAPAN TOUR 2023

2023年10月22日(日)朝霧JAM 2023
2023年10月23日(月)東京・SHIBUYA CLUB QUATTRO *SOLD OUT
2023年10月24日(火)大阪・UMEDA SHANGRI-LA *SOLD OUT