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いつも通りのストレート

 『United We Are』でハードウェルが披露するのは、あくまでもいつも通りにダッチ・トランス~プログレ・ハウスを基盤とした、スマートにしてビッグな直球のトラックたちだ。アルバムへのキックオフ・シングルでもあった“Arcadia”(ジョーイ・デイルとの共作)はルシアナの激しい歌唱がキャッチーな即効性の高い出来映えで、続いてのシングル“Young Again”はクリス・ジョーンズの温かい歌声をノスタルジックに響かせる昂揚感たっぷりのシンガロング・ナンバー。今年に入って正式に公開された“Sally”にしても、ロッキッシュなリフをアクセントにしながらハリソン(・ショウ)のラフな歌声をしっかり立てるアップリフティングなトランスだ。ポップ・フィールドでも機能する歌モノとしての強度も意識しつつ、フロアやスタジアムが望むストレートなEDMの在りようが迷いなく追求されていると言ってもいいだろう。

 そういった先行カットの路線に違わず、アルバム全体がポップネスに配慮しながらフロアでの機能美を優先したトラック揃い。その塩梅はヴォーカリストの人選にも明白で、“Follow Me”で爽やかに歌うジェイソン・デルーロを除けば、名の立ったポップスターの起用はない。衆知のように、EDMが北米のポップ・フィールドで受容されるにあたってケリー・ローランドやリアーナ、クリス・ブラウンら(主に)アーバン系アーティストの果たした役割は大きかったものだ。が、今回ハードウェルが選んだのは、先述のアンバを筆頭にダンス方面でお馴染みの人気ヴォーカリストを中心とした、従来の人脈を活かす顔ぶれ。これはもう〈EDM〉なるものが十分グローバルに浸透した証拠と見ることもできるし、そうしたトピックをもはや要さないという自信の表れにも思える。その意味では、終曲にオランダからブレイクしたMrプロブズのビートレスな歌モノ“Birds Fly”があるのは興味深い。

 上記した他にもティエストやW&W、ファンカーマンらとのコラボ・チューンを含み、一貫して高いテンションをキープしながら圧倒的にスケールを拡張してみせた『United We Are』。その表題が意味するように、ここに並ぶ最強のトラックたちは現場での一体感をよりいっそう強固にし、彼の名をこれ以上なく高めることだろう。

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