“ひと夜のバカンス”や“蜂と蝶”などのクラシックを生み出した文学系ヒップホップ・クルーの先駆け、SOUL SCREAMの司令塔として日本語ラップ黎明期から活動するMr. BEATS a.k.a. DJ CELORYが、最新ミックスCD『BON-VOYAGE VOICES ~Japanese Treasures~』をリリースした。
彼が2004年に立ち上げたクラブ・パーティーの名前に端を発するミックスCDシリーズ〈BON-VOYAGE〉は、『BON-VOYAGE LOVERS ~Sunshine of Mind』(2008年)を皮切りに、これまでに20タイトル以上を制作。レーベルを跨ぎ、ラヴァーズ・ロックや歌ものレゲエをはじめとしたさまざまなジャンル/テーマで展開されて人気を博している。
Mr. BEATS a.k.a. DJ CELORY BON-VOYAGE VOICES ~Japanese Treasures~ SPACE SHOWER(2015)
今回到着した『BON-VOYAGE VOICES ~Japanese Treasures~』は、そんな〈BON-BOYAGE〉が挑む新しい航路。日本のR&B~レゲエ作品に焦点を当てたシリーズ初の内容で、サブタイトルからお察しの通り、国産のヒット曲や知られざる名曲に新たな輝きをもたらすミックスになっている。
進水のシャンパンを割るのは、シェネルの英語カヴァーでも注目されたTEEのヒット曲“ベイビー・アイラブユー”の共作者、MIHIRO~マイロ~によるセルフ・カヴァー。ソウルフルなバラードで始まり、船のエンジン出力をどんどん上げていくかのように、JAMOSA“いきてるよ”、Crystal Kay“Rising Sun”、PUSHIM“RAINBOW”といった力強く晴れやかなナンバーが続いていく。
眩しくハジける三浦大知の“SHINE”は、春の陽光がキラキラと反射する海面を連想させるよう。そのあたりから船の推進力は増し、グルーヴも加速。Full Of Harmony“Different”から安室奈美恵“GIRL TALK”へと続く流れでテンションもグングンとアップしていく。
その後は、日本の男性R&Bシンガー・コレクティヴ、SUGAR SHACKに名を連ねるLL BROTHERSとFull Of Harmony、HI-Dが組んだユニット、RUNNING MANによるバリバリのニュー・ジャック・スウィング“Every Little Step”でさらに気分上々。いくつものデュエットで名唱を残しているCIMBAから宏実へとバトンを渡し、そこから青山テルマがいかつく迫る“TOKEYO”へと繋がる流れで昂揚感はピークに達する。
柴田知美“Kiss Me”から始まる後半はスムースなR&Bの連続。気分最高潮の日本語R&Bトリップが、その興奮を徐々にクールダウンさせながら帰路につく。DOUBLE“残り火 -eternal BED-”、EMI MARIA“Show Me Your Love”という流れは、昼間の洋上パーティーで日焼けした肌の火照りをゆっくり鎮めてくれるようだ。
旅の最後はAIのしっとりとしたバラード“マイ☆フレンド”と、MISIAのデビュー曲のカヴァーとなる山口リサの“つつみ込むように…”。DJ CELORYが操縦する〈BON-VOYAGE VOICES〉号は、最高のパーティーを演出した後、まさに包み込まれるような安らぎを聴き手にもたらして穏やかに帰港する。
なお、本作には昨年ANARCHYとのコラボ曲“Shake Dat Ass”で各地のフロアを揺らした実力派女性シンガー、AISHAの新曲“SHYでもいいよ”も収録。ここだけのエクスクルーシヴ・トラックなので、そちらもぜひ一聴を。