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やっぱり5人でやりたい

 SAKEROCKという季節が終わり、それぞれが新しい戦地へ向かう。それもまた人生だ。しかし、ここからの展開がSAKEROCKというバンドのオモロイところ。「解散は嫌だから、その考えは頭の隅にやっていた」という星野だが、ふと「解散するとしたら何ができるだろう?」と考えた時、とんでもないことを思い付く。

 「脱退した2人を迎えて、もう一回、5人でやりたいと思ったんです。これまで後ろを振り向くのはイヤだったんですけど、解散を前提にしたらできるかもと思って。そして、これまでやったことがなかったこと、何かに挑戦するとかじゃなくて、ただニコニコ音楽を楽しんで演奏するということができると思ったら超おもしろそうで(笑)。〈やった! SAKEROCKで新しいことができる!〉って思ったんです」。

SAKEROCK SAYONARA KAKUBARHYTHM(2015)

 ラスト・アルバムに脱退したメンバーを呼んで、思い切り楽しむ。そんな前代未聞の〈解散大作戦〉がスタート。星野は浜野と伊藤に解散とアルバム制作を打診し、二人は「ちょっと〈しょんぼり〉しつつ、でもおもしろそうだね」と受け入れた。一方、野村と田中については「快諾してくれました。断られるってことは考えてなかったです。きっと向き合ってくれるんじゃないかと」という星野。脱退したメンバーとそういう関係を続けられているのも、SAKEROCKならではかもしれない。そして、言い出しっぺとして、リーダーとして、星野はすべてを投げ打ってアルバムに挑んだ。

 「みんなまったく時間がないところで集まってくれるので、そこは責任持とうと。作曲は自分で全部して、ミックス作業もいつも一人で。あ、一瞬だけ大地君が来てくれたかな(笑)。おかげでスケジュール的には超キツかった(笑)。でも、一緒にリハーサルを重ねたり録音していくのはすごく楽しかったから、淋しくはなかったです。おもしろかったのは、みんなの間に壁がなかったこと。バンドを維持するためには言わないでおくことが生まれてくる。でも、今回は〈維持〉ってことを気にしなくていいから思ったことが言えるし、自由に音楽が楽しめる。それって解散を前提にしているからこその特権なんだなって」。

 曲作りにあたって星野は、なるべくライヴでそのままできるようなアレンジを意識。あとで楽器を重ねることはせず、「素直な音というか、ギミックがなくて演奏してて楽しい音」をめざして曲を作っていくうちに、気持ちは少しずつ変化していった。

 「最初は3人だけでやる曲があってもいいかな、と思っていたんですけど、途中からやっぱり全部5人でやりたいと思うようになっていったんです」。