初めての〈トライアスロン〉で新たなステップへ! 楽曲制作を他者に委ねることで膨れ上がったワクワク感は、本人たちにも制御不能!?
いまもっとも勢いに乗るインディー・アクト――水曜日のカンパネラをそう称して、概ね異論はないだろう。メンバーは、パフォーマーとしてフロントに立つコムアイ、トラックメイカーのkenmochi hidefumi、その他諸々を担うDir.Fの3人。鋭利なビートの上で、チャーミングかつ頓狂なヴォーカルがパンチラインだらけの物語を紡いでいくその音世界は、聴き手を捉えるフックに満ちており、リリースを重ねるごとにグイグイと認知を拡大。趣向を凝らしまくったPVの大量投下も相まって、圧倒的なバズを巻き起こしてきた。
そんな彼女たちが2015年に放つ最初の作品が、3曲入りのEP『トライアスロン』だ。これまではkenmochiがサウンド面を掌握していたが、今回は2曲のプロデュースを、かねてから交流があったというN.O.R.KのOBKRやオオルタイチに依頼。リリックも含めて委ねることで、これまでとはまったく異なる世界を作り上げている。
「去年はカンパネラがラジオでもヒットして、いろんな人に聴いてもらって。でも、とにかく引っ掛かりを考えて作った曲ばかりだから、流れるたびに〈またかよ!〉とうんざりしている人も少なくないんです。〈なんかサブカルっぽいやつでしょ?〉って。そういう人たちを掬いたくて、全然違うことがやりたかった」(コムアイ、以下同)。
PVが先行公開された“ナポレオン”はOBKRが詞を、彼のレーベル=Tokyo Recordingsの酒本信太が曲を手掛けたナンバー。ディスクロージャーのアプローチと呼応するようなド直球のハウスに仕上がっており、クールに洒落のめすコムアイの振る舞いに、旧来のリスナーは大いに驚かされるだろう。
「ナポレオンはイタリアから出てきてフランスの皇帝になった人で。そういう史実に沿った歌詞に、これから音楽業界に殴り込んで乗っ取っちゃえっていうメッセージも込めてるんです。クールに言ってるんだけど実は相当エモい(笑)」。
オオルタイチがすべてを手掛けた“ユタ”は、宮古島の島唄をモチーフにした無国籍な風合いのダンス・チューン。呪文めいたフレーズがシャーマニックなトランス感を焙り出していく。
「タイチさんの音楽は祝詞って感じなんですよね。メロディーとか曲の展開とかで価値が変わるんじゃなくて、演者がどれだけパワーを出せるかで決まるというか。趣味でやって〈最高のものが出来た、楽しいなあ〉ってだけなので、これを皆さんに対してのエンタメとして提示するのが嬉しいような恥ずかしいような感じがありますが、水曜日のカンパネラのこれからのためにも出しておきたかった」。
唯一、kenmochiの手による“ディアブロ”は、カンパネラらしいユーモアを効かせた銭湯礼賛ソングだが、「歌詞が〈いい湯だね〉ってそのまんまじゃないですか。ひねったり凝りまくったりしないで楽に作ってる感じがこれまでと違うし、それが良いなって」とのこと。サウンドだけでなく、活動のスタンスや音楽との向き合い方まで含めて、彼女たちは大きく変わろうとしているようだ。
「いままでみたいに詰めて制作するのはやめようと。やりたいことがどんどん変わるんです。それをその都度形にしたほうが絶対イイし、そのためには今回みたいにちょっとずつ、ポンポン出したほうが良い」。
スタイルも柔軟に変化させるし、コラボもアリ。大胆な変化を遂げた本作を経て、彼女たちがどこへと進むのかはまったく予測がつかないし、だからこそワクワクさせられる。
「この先に何をやっても大丈夫なように、これを出したというのもあります。〈私たち変わるからね〉ってことですね」。
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ここでは水曜日のカンパネラの関連作を一部紹介! まず、楽曲制作担当のkenmochi hidefumiは、もともと生楽器とサンプリングを駆使した流麗なブレイクビーツ作品で支持を得てきた人物。2008年に初フル作『Falliccia』を、2010年には2作目『Shakespeare』を残しています。そんな彼を含む3人で2012年に始動したカンパネラは、2013年5月に初ミニ・アルバム『クロールと逆上がり』を一部店舗限定でリリース。同年10月に初の全国流通盤となる2枚目のミニ・アルバム『羅生門』がタワレコメンに選ばれ、注目を集めます。2014年には『シネマジャック』と『私を鬼ヶ島に連れてって』の2枚のミニ・アルバムを発表。クールなトラックと風変わりなラップのアンバランス感に中毒者が続出しました! *bounce編集部