連載

【〈越境〉するプレイヤーたち】第2回(前編) 音楽シーンの次代を担う3人の若手ドラマー、松下マサナオ×石若駿×横山和明が柳樂光隆と本音を語り尽くしたスペシャル鼎談

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  鼎談の様子。左手前は柳楽光隆氏。



【共演への憧れ、他ジャンルへのフックアップ】

――石若くんは去年の9月にテイラー・マクファーリンが来日したとき、サポートで一緒に演奏したのもかなり話題になったよね。最初にブレインフィーダーのイべントでテイラーが来日(2014年5月)したときはマーカス・ギルモアと一緒にライヴしたんだけど、2回目の来日公演では石若くんに白羽の矢が立った。なんで自分が選ばれたのか聞いた?

石若「(2回目の来日が決まった時)テイラーのほうで〈日本に誰かドラマーはいるのか?〉みたいな話になって、黒田卓也さんに相談がいったみたいなんですよ。それで黒田さんが候補を何人か挙げてくれて、テイラーがYouTubeでいろいろとチェックして。それで僕がアーロン・チューライっていうピアニストとデュオでやっている動画をたまたま彼が見て、〈これが今度のライヴでやりたいことに一番近い〉と判断して依頼に至ったと聞いてます」 

*テイラー・マクファーリン
ボビー・マクファーリンを父に持つサラブレッドで、ビートメイカー/ヒューマン・ビート・ボクサーとして活躍する俊英。2014年にアルバム『Early Riser』をブレインフィーダーより発表、グラスパーやサンダーキャットも参加するなど、最新のジャズ・シーンともリンクした同作は各所で絶賛された。(インタヴュー記事はこちら)
*黒田卓也
ホセ・ジェイムズのバンドでも活躍し、日本人で初めて
ブルーノートと契約したトランぺッター。2003年にNYへ渡り、ホセやグラスパーらとも交流をしながらジャズを学んだ。2014年にアルバム『Rising Son』を発表。(インタヴュー記事はこちら)
【参考動画】吉本章紘カルテット“How About This Cat”(ドラムは石若、ピアノはアーロン・チューライ)
【参考動画】テイラー・マクファーリン、2014年5月の〈ブレインフィーダー〉出演時のライヴの模様。
ドラムはマーカス・ギルモア




――あのときみたいに、もっと普段のフィールドとは違うところで演奏してみたいというモチベーションはある?

石若「メチャクチャありますね。〈ジャズ・シーンのいちドラマー〉っていうよりは〈石若駿〉として見られたいというか。自分を面白いドラマーと評価してくれるんだったら、いろんなところでコラボレーションしていきたいと常に思ってます」

――松下くんも、最近はジャズ・シーンの中にも入ってかき回してる感があるよね。

松下「そんな事ないですよ。実際、俺は柳樂さんが(〈JTNC〉を通じて)やろうとしているのと同じことをやりたいと思っているんです。たとえばジャズっぽいスタジオ仕事があると、絶対にちょっとフュージョン齧ってるみたいな連中に話がいくんですよ。そうじゃなくて、この2人みたいにガチなミュージシャンを本当は呼ぶべきじゃないですか」

――そうなんだよね。

松下「それがいま、そういう方法論というかルートがないんですよ。なぜなら、こういうガチな人達との繋がりがないから。ジャズ業界自体が外へフックアップされようって意識がなくて」

――横山くんも、いままでは硬派なジャズ・ドラムをずっとやってきたわけだけど。

横山「でも僕だって、言ってしまえば自分が好きなものは全部やりたいですよ。ただ僕は自分に自信がなさすぎるから、外の世界を覗いてはいるけど自分から積極的には行けないんですけどね。それは今後の課題として」

松下「覗き見はしてるよね」

――外の世界とあまり接点がないっていうのもある?

横山「そうですね。ジャズのコミュニティーにいるとその中は凄く狭いので。なかなかそこから外に繋がりにくいっていうのはあるとは思います」

――でも、そういう野心を持ち始めてるのは凄くいい流れだよね。

松下「絶対大事だよ。駿とかも外に出たいっていう野心の塊だし。だから、早くジャズ・シーンの外も見た方がいいと思う。何をどんなに自由にやっても絶対にジャズ界はこの人たちは干せないと思うし。この2人を干したら、ほかにサブがいないんですもん」

――そうかもしれない。たとえば、テイラー・マクファーリンが音楽ファンのあいだで騒がれて、サカナクション山口(一郎)さんとかも最近のお気に入りに挙げて、それで気になってテイラーのライヴに行ったら石若くんが叩いてた。それでライヴが終わったあとに、「あの石若っていう日本人ドラマーは凄い!」って、ネットとか口コミで話題になる――そんな感じで、実力のあるジャズ・ミュージシャンがフックアップされるルートを僕は作りたいんですよ。今日持ってきたCDでも、ディアンジェロにフライング・ロータスやケンドリック・ラマーと、彼らの作品ってそういう繋がりがすごく機能しているじゃないですか。

【参考動画】ディアンジェロ "Sugah Daddy"パフォーマンスの模様。ドラムはクリス・デイヴ


★ディアンジェロ特集【from BROWN to BLACK】記事一覧はこちら
★コラム「FLYING LOTUS 『You're Dead!』再び“ジャズ”にフォーカス!多彩な音に溢れたロータス・ワールド」はこちら
★コラム「コンプトンで羽化した希望、ケンドリック・ラマーが新作『To Pimp A Butterfly』で伝えたいこと」はこちら



――ダフト・パンクの『Random Access Memories』もそう。70~80年代の音が出したいからオマー・ハキムをあえて使う、この音色でこのリズムが欲しいからこの人を使う、みたいなのが海外のハイエンドだとあるじゃないですか。日本もそうなってほしいし、そうなったときに〈使える〉ミュージシャンが誰かっていうことをジャーナリスト側としては名前を出して強調していきたいと思っていて。

松下「マスが小さすぎるんですよ。どのシーンももっと外に目を向けたほうがいいと思う。でっかい枠が海外にはあるんだから、たぶん」

――でも、少し状況も変わってきてるのかも。少し前に、mabanuaさんがくるりのツアー・ドラマーに決まったでしょ。その前にはGotchさんのバンドにも参加してたけど、いままで日本ではこういう動きってあんまりなかった。売れっ子のスタジオ・ミュージシャンが起用される機会は多かったけど、「いまコイツが面白いんじゃない?」って人を単独でピックアップしてバンドに入れるって動きがようやく出てきて、そういうのって健全だと思うんですよ。

【参考動画】mabanua“talkin' to you”パフォーマンスの模様



松下「そうですね。というか、今後は純粋なスタジオ・ミュージシャンっていう存在そのものがたぶんなくなるんじゃないかな。昔は職人といえば村上"PONTA"秀一さんとか青山純さんとかだったけど、いまって2小節をグリッドにきっちり合わせて叩ける人が職人なんですよ。あとはコピーしてペースト。俺の知り合いにも何人かいるん ですけど、そんなのバーナード・パーディー(*)の音源を使った方が全然いい。その2小節のループを作る職人が、俺よりちょっと上の世代で2、3人いて、その人達が大御所のツアーとかも結構回してる。そのもっと上の世代には、〈上手い=フュージョン〉みたいな人達がいるわけで。あの層がもっと色々理解してくれたなら、日本の音楽はもっと良くなるかも!」

*バーナード・パーディー
60年代から数多くの歴史的名盤に参加してきた、セッション・ドラマーの代名詞的存在。そのプレイは今日、サンプリング・ネタとしても広く愛されている。
(参考音源はこちら)

 

――たしかに。mabanuaさんがピックアップされるような動きを見てると、「俺もやりてぇな」って思うでしょ?

石若「すげぇ思います」

――石若くんは、そのうち外から引っ張りだこになりそうですけどね。それこそ、くるりとかGotchさんみたいな感じでピックアップしていくバンドはこれから増えていくと思うし。

松下「惜しかったよな(笑)」

石若「そうなんですよ。僕くるり大好きなんですよね」

松下「知ってるよ。少し前に呑んだとき、〈俺、くるりに入りたいんですよ!〉って言ってたんだけど、そのときに俺はもうmabanuaが入ることを知ってたからさ(笑)」

石若「え、そのとき言ってくださいよ!」

松下「可哀そうだな、言えねぇなって思いながら〈いけるよ絶対!〉って言ってた
(笑)」
 



【グラスパーの衝撃、 ジャズ・ドラムの進化過程、日本と世界のあいだの時差】

――少し話は戻るけど、フライング・ロータスやディアンジェロ、ケンドリック・ラマーの新作ってみなさん聴きました?

松下「アメリカにいた頃からロータスは聴いてたけど、あの周辺の動きもジャズメンを起用したりでかなり面白いですよね。もう死んじゃったけど、オースティン・ペラルタのトリオもよく観に行ってました。ドラムがロナルド・ブルーナーJr.で。ツアーでドラムを叩いてるショーン・ホートンとはアメリカにいた頃にツイン・ドラムでセッションしてたんですけど、一昨年にサンダーキャットが来日した時も代官山UNITのライヴに呼んでくれて。やっぱり全然感覚が違う。ライヴハウスであんなに爆音で叩いたら、ホロウ・ボディーのベース使ってるしハウリングするに決まってるじゃん? でも叩くんですよ。それでハウるからベースを調整しているうちにライヴが終わる。そんな感じなんだけど、それも全部カッコよく見えちゃうんだよね。そういう連中が、普通にジャズ・ギグもやるっていうね」

【参考動画】オースティン・ペラルタ・トリオ、2006年東京JAZZのパフォーマンスの模様。
ドラムはロナルド・ブルーナーJr.



――ディアンジェロの新譜のドラムとかはどう?

横山「僕はあんまり考えて聴かないからなぁ。良いアルバムだなぁって」

石若「やっぱりみんなJ ・ディラ好きだなって感じですよね。ループしてる感じを表現したいというか」

――フライング・ロータスも、凄く雑に表現すると〈レディオヘッド+J・ディラ〉みたいな感じありますもんね。

松下「たしかに。彼が日本でまだ売れてない頃のアルバムとかそんな感じですよね。リトル・ドラゴンも、最初に出てきた時は同じ枠組みで俺は見てました。ああいうバンド日本にいないからな。いまはまた違う感じでやってるけど、今度この3人でスリーマンやる時(※詳細は後述)のバンド、Za FeeDoはたしか〈リトル・ドラゴンの感じを日本でもやろうよ〉ってところから始めたバンドなんですよ」

【参考動画】リトル・ドラゴン“Twice”のパフォーマンスの模様。
グラスパーも好んでカヴァーする一曲で、『Black Radio』日本盤にもボーナストラックとして収録。
【参考動画】ケンドリック・ラマー“The Blacker The Berry”
(キーボードはグラスパー、ドラムはロナルド・ブルーナーJr.)



――ケンドリック・ラマーの最新作もジャズメンがガンガン絡んで面白いことになってるじゃないですか。グラスパーも弾いてたし。

松下「俺のなかでは、グラスパーはやっぱりクリス・デイヴと一緒じゃないとダメなんですよね。グラスパーって〈ハービー・ハンコックの現代版〉とか色んな言われ方をしてますけど、あいつが凄いのってメンバーの起用とかそういうところにあって。もちろんグラスパーのプレイも凄いんだけど、やっぱりクリス・デイヴがいた頃が破壊的で全部良い。アラン・ハンプトンが入ってた頃のトリオも良かったし」

石若「最初はYouTubeもあの動画しかなかったですもんね」

【参考動画】グラスパー、クリス・デイヴ、アラン・ハンプトンのトリオによるパフォーマンスの模様。
アップロードされたのは2008年の3月31日。



松下「最初にエクスペリメントが日本に来た時って(2009年、会場は)コットンクラブだったでしょ。ウチのメンバー全員で観に行って、デリック・ホッジがベースを〈ボォッ〉て一音弾いたら、もう音がジャズのライヴハウスじゃなかった。すげぇ出てて。そこからはもう4人釘付けで観てましたね。あれ以降は一時期本気で追っかけたけど、ドラムが(マーク・コレンバーグに)代わってからはエクスペリメントではないんですよね。グラスパー・トリオでいいんじゃない、みたいな。クリス・デイヴが走っちゃうのをデリックが抑えて……みたいなのがやっぱりよかった」

横山「いまはそういうバランスの関係ではないですよね。もっとシュっとしてる」

松下「やっぱり猛獣がいないとつまんないんだよな。それは俺がドラマーだからじゃなくて、バンドの面白さとして。クリス・デイヴのドラムヘッズも、ライヴ中はドラムしか見えないんだよね。あのバンドが面白いのは、ピノ(・パラディーノ)はクリス・デイヴのほうを(演奏中)絶対に見ないじゃん。あれは本当に凄い。それで、曲が終わった後にニヤッとして。目視しても追いつけないのをわかってるから、全部耳で聴いてやってるんだろうな」 

*ピノ・パラディーノ
ジェフ・ベックやフーなどロック・レジェンドとも共演し、ディアンジェロなどネオソウル勢とも深い交流をもつセッション・ベーシスト。ホセ・ジェイムズがネオソウル的な意匠に接近した13年作『No Beginning No End』のプロデュースを手掛け、ディアンジェロの新作にも参加している。クリス・デイヴのバンド、ドラムヘッズの一員でもある。
【参考動画】クリス・デイヴ&ドラムヘッズのパフォーマンスの模様。



――ドラマーが代わってからのエクスペリメントは、いまのアメリカのR&Bにアジャストしてる感じがするね。音色とかがジャネル・モネイとかのほうに向かって。(ドラマーが代わってから録音された)『Black Radio 2』は、たしかに演奏もシュッとしてる。

松下「やっぱり『Double Booked』が凄かったよ」

石若「もうめっちゃ聴きましたよ。登下校のときに」

松下「登下校で『Double Booked』? すげぇ、俺なんてトンボ追っかけてたわ(笑)」

――2009年のアルバムだよね。それは高校生の時?

石若「そうですね。高校2年生かな」

松下「最後の曲(“Open Mind”)とか凄いですよね。もうほとんどライヴじゃないですか。あのアルバムは本当に凄い」 

――プレイヤー的には、あの曲はやっぱり衝撃ですよね。

石若「そうでしたね、(2007年の前作)『In My Element』の後で」

松下「大きく変わってたよね。J・ディラ色が強くなってたし、4ビートの曲はほとんどない」 

ROBERT GLASPER Double Booked Blue Note/ユニバーサル(2009)



石若「エクスペリメントが日本に来る前辺りに、ミュージシャンのあいだでグラスパーのバンドに、マーカス・ストリックランドとハーモニカのグレゴリー・マレットとかが入ってる隠し録りの音源が出回ってたことがあって。それも聴いて衝撃を受けましたね。先にあれを聴いたあとだったから、『Double Booked』ですら少しシュっと感じたくらいで」

――その話、前に丈青さんも同じこと言ってましたよ。やっぱりミュージシャンのあいだでは、(『Black Radio』が出た2012年ではなく)その頃から〈グラスパーすげぇ!〉ってなってたんですね。

松下「あのアルバムで完全に変わったよね。ていうか、全然いまの音楽じゃん。実際いまでもよく聴くし。アップデートされていくものと別に、いつまでも凄いものっていうのはあると思うんだよな。ドラミングは特にそういうのがあって、ソニー・ペインをいま聴いても凄いんですよね。系譜的に黒人でいうとソニー・ペイン、トニー・ウィリアムスデニス・チェンバース、クリス・デイヴっていう流れは絶対ある。ジャズの人達は(こういう流れに)デニチェンとか入れたがらないから抜くんだけど、でもあんなふうに叩ける人なんて当時いなかったし、いま聴いてもフォーマットがフュージョンでちょっとダサいだけでプレイは凄いんですよ。あいつが3点セットとかクリス・デイヴと同じセットとかで叩いたら、クリス・デイヴよりも全然凄いはず。でも、そこは時代っていうのがあって。当時はああするしかなかった。だからこそ、クリス・デイヴもパイオニアだと思うし、マーク・ジュリアナも白人の系譜からいうとパイオニアですよね」

【参考動画】カウント・ベイシー楽団、1959年のパフォーマンス(ドラムはソニー・ペイン)。
【参考動画】マイルス・デイヴィス“Gingerbread Boy”(ドラムはトニー・ウィリアムス)
【参考動画】ジョン・スコフィールド・バンドによるパフォーマンス(ドラムはデニス・チェンバース)。

 


松下「俺なんてアメリカから帰国する前、2008年頃からずっと〈マーク・ジュリアナが凄い〉っていろんなところで言ってきて、いまでこそドラム雑誌からマーク・ジュリアナのレビュー執筆とか頼まれますけど、やっぱ日本は遅すぎなんですよね。そういうふうに、アップデートもしていて尚且つこれから残っていくものってどんどん出てきてるから。日本のシーンが必ずしもそれに従うことはないけど、せめてフォローはしないと」

――単にマネするわけではなくて、そういう存在を知ってる前提でそれぞれがオリジナルな音楽を作っていくと、たぶん日本人のリテラシーも上がるんだよね。

松下「あとはバケモンだって諦めるヤツがほとんどなんですよ。同じ人間だから絶対に追いつけるはずなのに。バディ・リッチみたいな、バケモンの中の本当のバケモンみたいなのもたまにいるけど、ビニー・カリウタとかデイブ・ウェックルは練習したらたぶん出来るんですよ。デニチェンとかはマネ出来ない。マーク・ジュリアナも練習したらたぶんマネ出来る。アイディアとそれまで聴いてきた音楽、一緒にやってるメンバーといったところでいろいろと(マーク・ジュリアナの)派生がこのあと出てくるんじゃないかな。誰と一緒にやってたかが問題だと思うんですよね。マーク・ジュリアナがアヴィシャイ・コーエン(ベース)とずっと一緒にやってたら、 いまのような音楽はやらないでしょうし。そういうところに日本人である俺らも身を置こうと思えばいけるんですよ。俺は(そういう環境が)なかったから自分で作って、ヤセイとかZa FeeDoみたいな一緒にやる仲間を集めたけど」 

【参考動画】ナウVSナウのパフォーマンス。ドラムはマーク・ジュリアナ



――〈JTNC〉が出たときに、(評論家で柳樂のレコード店勤務時代の元同僚でもある)矢野利裕くんがele-kingに書評を寄稿したあと、さらにブログでも書評の続きを書いてくれたんですけど、そこに「5年ほどまえに友人のジャズ研の演奏を観に行ったとき、そのバンドのドラムがやけにヒップホップ的だと感じたことがある(中略)終了後に話しかけてみると、案の定、クエストラヴやJ・ディラといった名前が出てきた。」ってくだりがあるんですよ全文はこちら。気になって矢野くんに訊いたら、その友人というのが(Yasei Collectiveの)別所和洋さんで、要するにドラムは松下さんのことで。これが5年前の話だから、松下さんはまさに日本でそういう事を最初にやろうとしてるパイオニアのひとりって感じですよね。

 【参考動画】Yasei Collective、2013年4月のパフォーマンスの模様。



松下「超圧力かかりましたけどね。2014年に俺が書いたクリス・デイヴのビート分析みたいな原稿が『リズム&ドラム・マガジン』に掲載されたんですけど、それを読んで初めてクリス・デイヴやケンドリック・スコットの存在を知ったって人が結構いたみたいで。ドラマー業界ですらやっとですからね。で、マーク・ジュリアナが去年の12月に来日したときにドーンと話題になって、ちょっとずつだけど認知されるようになった。LAに行ったら同じくらい叩けるヤツが死ぬほどいるし、NYにはもっといる。でもジュリアナにはピックアップされる天性があるんですよね」

――自分のサウンド以外の部分もちゃんとコーディネートできてる人ですもんね。フォトジェニックだし、音楽に対するリテラシーも高いし、インタヴューでもちゃんといいこと言うし。

松下「あとマーク・ジュリアナは、〈こんなの、絶対生ドラムで出来ないじゃん〉っていう演奏表現に挑戦する姿勢が好きなんですよ。ジョジョ・メイヤーみたいな、少し前の世代とは全然違うスタイルでエレクトロに対決してるっていうか。ルイス・コールとか、クリス・デイヴもある意味そう。J・ディラのビートを完全に生ドラムで再現するっていう、クエストラヴには出来なかったことをやってるわけだから。しかも、それがきちんとグルーヴしてる。グルーヴって言うと日本だと〈一定のリズム〉だって感覚が勝手にあるでしょ」

石若「ありますね」

松下「グルーヴ・ドラマーといえば、未だにスティーヴ・ジョーダンとかジム・ケルトナーみたいなさ。もちろん2人とも最高だしむっちゃくちゃ尊敬してるけど、日本人ってそれとは別に起こってる新しいことに対する感覚が遅いんだよね。例えばミニマルな音楽でもグルーヴってあるじゃないですか。日本だとrabbitooとかが好例だと思うんだけど、ああいう音楽に対してグルーヴっていう言葉を使えない状況にあるから色々根付かなかったんですよ。バックビートがないとグルーヴじゃないのかっていう」

【参考動画】rabbitoo“渦巻” 

 

横山「そういうのありますよね」

松下「スウィングなんて最高のグルーヴじゃないですか」

横山「でも、ああいう表現に対して〈グルーヴ〉って言葉はほぼ使われない」

松下「〈スウィング〉って言うでしょ? そのお国柄とこういう音楽が馴染まなかったっていうのは絶対に関係あると思うんですよね」
 
★後編はこちら

 




★最も注目すべき日本人ドラマー、横山×石若×松下が参加したスリーマン・ライヴを柳樂光隆が企画。〈JTNC〉以降のジャズにも精通したスペシャリストたちが、いま聴くべきリズムを叩く!

〈Mitsutaka Nagira & drummers presents “Hang out”〉

日時/会場:6月23日(火)渋谷UNDER DEER LOUNGE
開場/開演:18:30/19:00
出演:ZaFeeDo、石若駿 & The成吉思汗Band、横山和明Trio、柳樂光隆(DJ)
チケット:前売り/2,500円 当日/3,000円
問い合わせ:03-5728-2655(会場)

http://www.under-dl.jp/schedule/?tribe_events=ask-info-284%2F

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