多彩な活動の要素が密接に絡まり合い、新たな充実のときを迎えるdCprGとペペ

 DCPRG改めdCprGの最新スタジオ・アルバム『Franz Kafka's South Amerika』はキーボード/ヴォーカルの小田朋美の加入以降の初作であり、主宰の菊地成孔を長年A&Rとして支えていた高見一樹の作曲家デビュー作でもある。盟友・坪口昌恭のシンセ作を思わせるトラックやヴォーカルをフィーチャーしたアフロ/キューバン色の濃い楽曲などさらなる新境地を切り拓いたこの新作のタイトルからは、2007年作『Franz Kafka's Amerika』との関連のほか、菊地が擁するもうひとつのラージ・アンサンブル〈菊地成孔とペペ・トルメント・アスカラール〉を想起した方も多いのでは。

菊地成孔とペペ・トルメント・アスカラール 歴史は夜作られる TABOO/Village Music(2015)

 菊地のソロ第2作目『南米のエリザベス・テイラー』をきっかけに結成された〈ペペ〉も活動10周年。菊地自身のセレクトにより、彼らの公演のなかから、林正樹鳥越啓介らが加入した第2期以降となる2009年~2014年のライヴ映像が収録されたDVD2枚組『歴史は夜作られる』がリリースされる。タンゴ、ジャズ、現代音楽など多様な音楽性が混じり合う妖しくもエレガントな魅力を伝えるのは、冨永昌敬甲斐田祐輔によるによるクールな映像。“熱病”がキーワードの『野生の思考』、ソプラノ歌手・林正子もゲスト参加した『記憶喪失学』、マサカーらのカヴァーも話題を呼んだ『New York Hell Sonic Ballet』、ほぼ全曲で菊地自らヴォーカルを務めた『戦前と戦後』と変遷していくペペの歴史を、色彩豊かな楽曲とパフォーマンスで追体験できる。アルゼンチンおよびモロッコに赴いた際のドキュメント映像も併録。解説テキスト量もかなりのもので、菊地の活動を振り返るうえでも“嬉しいおまけ”以上の充実した資料だ。

 ペペ同様にI.C.ISIMI LABなどが客演陣に名を連ねるヒップホップ・クルーJAZZ DOMMUNISTERSや、SPANK HAPPYや他アーティストのプロデュースなどに見られる強烈な毒と独自の文学性を含んだリリック……。近年の菊地は、以前からの活動が互いに影響を与え合った、ますます濃厚な作品を次々に生み出している。今回のDVDでは、例えば『戦前と戦後』からのヴォーカル曲でそのあたりの結実の妙を存分に堪能しつつ、ソロ作以前から演奏していたという《ルペ・ヴェレスの葬儀》からの流れや一貫性を感じることもできるだろう。ペペと相補関係にあるdCprGも、鮮烈な新作を引っ提げ7月15日(水)から23日(木)にかけて宮城・東名阪での4都市ツアーを開催。高見作の3曲の披露にも期待は膨らむ。更なる進化を続ける両バンドを見逃すべからず。

 

LIVE INFORMATION

dCprG goes on LEVEL XXX
「Franz Kafka's South Amerika」tour
○7/15(水)19:00開演 会場:新宿BLAZE
○7/16(木)19:00開演 会場:仙台・darwin
○7/22(水)19:00開演 会場:名古屋 CLUB QUATTRO
○7/23(木)19:00開演 会場:大阪・umeda AKASO

菊地成孔とペペ・トルメント・アスカラール
結成10周年記念公演「歴史は夜作られる」
○6/20(土)19:00開演 21(日)18:00開演
会場:品川インターシティホール

www.kikuchinaruyoshi.net