今年も〈ULTRA JAPAN〉出演! 世界を踊らせるKSUKEの新作!!

 プロダクトやテクノロジーはもちろん、カルチャーやスポーツなどなど、さまざまな分野で〈MADE IN JAPAN〉がかまびすしく謳われている時代。〈日本人はここでも活躍している!〉〈日本はこんな分野でも愛されている!〉など、マーケティングやメディアのゴリ押しめいた部分も含めて〈世界で認められていること〉そのものが日本での支持に繋がる風潮はいまも強いが、時として本当のスターが思わぬ方向から登場してくるということは、そろそろ受け手の側は察しているだろう。それは音楽の世界も同じことで、例えば海外ラウド・シーンで日本の猛者たちが受け入れられてきたように、普通に世界を騒がせるアーティストはシンプルに生まれてくるのだ。その意味で、ここに紹介するKSUKEもまた、独力で世界に認められた誇るべきMADE IN JAPANなアーティストであろう。何と言っても、EDMシーンの最高峰となっているマイアミのメガフェス〈Ultra Music Festival〉に今年メイン扱いで出演を果たしたのだ。そんな本場での評判は、2年連続の出演が発表されたばかりの〈ULTRA JAPAN〉において、ここ日本でもさらに大きく広がっていくことだろう。

 89年生まれ・岐阜出身のKSUKEが学生時代を過ごした名古屋を拠点に独学でDJを始めたのは2011年のことだという。そこからダンスフロアの現場で腕を磨き、2014年には活動拠点を東京へ移しているのだが、その年の6月には早くも〈Ultra Korea 2014〉に出演し、それから3か月後には開催自体が大きな話題を呼んだ〈ULTRA JAPAN 2014〉のメインステージに登場しているのだから恐るべきサクセスのスピードだとも言える。が、新人ながらも圧巻のパフォーマンスを披露した彼にとって、以降の歩みは幸運なシンデレラ・ストーリーでもなんでもなく、現場でのオーディエンスの反応やライヴ配信をオンラインで視聴していた世界中のリスナーのレスポンスが自然に導き出したステップだったのである。そこでの評価は同年11月、ラスヴェガスの名門ビッグ・クラブ〈Light Night Club〉へアジア人として初出演するという大舞台へと繋がり、それは今年に入ってからレジデントDJとして同クラブからオファーを受けるという大きな転機に繋がった。そんな状況の激変もあってKSUKEは活動拠点をアメリカへ移すに至っている。

 そうして、ついに本場マイアミの〈Ultra Music Festival〉でメイン級のステージに立った3月には、満を持して初めてのアルバム『SPACE SHOUT』をリリース。いわゆるEDMというものを妙に単純化して一面的に評しようとする向きも日本には多いように思えるが、リブキャットをフィーチャーしたドープなベース・チューン“Trigger”を筆頭に、ここでの彼は外野の狭量なEDM観を引っくり返すほどの多彩なサウンドを披露し、DJとしてだけではなくサウンド・クリエイターとしてのポテンシャルも開拓中であることを窺わせた。4月には世界最高峰のクラブのひとつとされる〈XS Las Vegas〉に日本人として初めて出演し、アヴィーチーと共演。そして6月には2年連続となる〈Ultra Korea〉に招聘され、〈フジロック〉のために凱旋も果たした7月にはクロアチアのスプリトで開催された〈Ultra Europe 2015〉のメインステージにも日本から唯一出演しているのだから、アジアNo.1のDJとして、彼の相手はもはや言うまでもなく世界なのである。

KSUKE WEIGHTLESS ワーナー(2015)

 そして、〈ULTRA JAPAN 2015〉を目前に緊急リリースされたのが、8曲入りのEPとなる新作『WEIGHTLESS』というわけだ。今回は大半がLAで制作されたそうで、海外での生活やトップDJたちから受けた刺激を大いなる源泉として創作に臨んだのは間違いないだろう。アンディ・ラヴの歌唱がアッパーに上昇を促す表題曲をはじめ、banvoxの“Real Deal”でお馴染みLAのメレキを迎えてポップに聴かせた“BAD THINGS”、ポットベリーズイラン・キドロンを招いたシンガロング系の“HEAL”など、ほぼ全曲にゲスト・ヴォーカルをフィーチャーしてキャッチー度数はシンプルにアップ。それに加え、『SPACE SHOUT』に収録されていたHello Sleepwalkersメンバーとのコラボ“TO THE NIGHT”をNYのエクソダスがリミックスしたヴァージョンも収められていて、EPと捉えるにはずいぶん豪華で重厚な、現在進行形の彼が堪能できる一枚じゃないか。

 自由に国境を飛び越えて世界を踊らせ、最近では〈世界で活躍する日本人アーティスト〉として日本で紹介される機会も増えているKSUKE。ただ、まさに無重力状態で上昇を続ける彼のめざす地平はもっともっと上のはずだ。