COLUMN

映画「マエストロ!」

オーケストラの人間模様を描き出す喜怒哀楽のシンフォニー・エンタテインメント

(C)2015 「マエストロ!」製作委員会

 

 オーケストラは、弦楽器、管楽器、打楽器など、さまざまな楽器を演奏する数多くの奏者によって構成されている集団である。しかし、そこには生身の人間が存在し、ひとりひとりが生きた音楽を演奏する。その演奏は、彼らのことばであり、歌であり、心の叫びでもある。

 オーケストラのメンバーは各々が自身の楽器に誇りをもち、幼いころからその楽器と日々対峙し、過酷な練習を重ね、音楽ひと筋に歩んできた人ばかりだ。大人になってオーケストラという音楽家の集まりに就職してからは、他の楽器の奏者たちとも融合しなければならないし、コンサートマスターの意見にも従わなければならない。そして、もっとも大切なのは、指揮者の目指す音楽を全員で奏でなければならないことである。

 指揮者がその作品をどう解釈しているのか、どんな演奏を求めているのか、楽譜をどう読み込み、作曲家が意図したことをどう表現すべきか。それを各人の練習後にリハーサルで仕上げ、ひとつの大きな作品を創造していかなくてはならないわけである。

 

(C)2015 「マエストロ!」製作委員会

 

 このオーケストラと指揮者の関係、ふだんはステージ上の演奏のみで聴き手が判断する両者の絆は、実は人間対人間の壮絶なぶつかりあい、音楽を巡るせめぎ合い、お互いに人生を賭けて戦う場から生まれるもの。それを『マエストロ!』が目の前につきつける。

 さそうあきらの漫画アクション「マエストロ」原作、小林聖太郎監督、奥寺佐渡子脚本による映画『マエストロ!』は、不況で解散を余儀なくされた元名門オーケストラの楽員たちと、若手コンサートマスターの香坂、アマチュアフルート奏者のあまねたちが、謎の指揮者・天道に導かれて音楽性と人間性が次第に変わっていくというヒューマンドラマである。最後は感動的な演奏シーンが盛り込まれ、クラシックのすばらしさに改めて目覚めることになる。

 登場するのはベートーヴェンの交響曲第5番「運命」とシューベルトの交響曲第8番「未完成」という有名な2大シンフォニー。演奏するのは、再就職先もなく、日々の暮らしにも事欠く負け組の楽員たち。ある日、彼らは再結成を呼び掛けられ、廃工場に集まる。

 若手コンサートマスター香坂を演じるのは松坂桃李。あまねを演じるのは映画初出演のシンガーソングライターmiwaである。

 

(C)2015 「マエストロ!」製作委員会

 

 実は、この呼びかけは香坂の父親のヴァイオリニストと仕事をしたことのある指揮者・天道だった。西田敏行扮する破天荒な天道は、口調はきつく粗野だが、指揮の腕は一級。最初はタクトの代わりに大工道具を振り回す天道に反発していた楽員たちも、次第に彼の実力を認めるようになり、やがて演奏に集中していく。

 映画出演に際し、松坂桃李はヴァイオリンの演奏を習得、西田敏行は指揮に本格的に挑戦している。さらに映画では、指揮指導・指揮演技監修を佐渡裕が、エンディングテーマを辻井伸行が担当。感動のオーケストラ・エンタテインメントに参加して、音楽的なクォリティを高めることにひと役買っている。

 香坂や天道の演奏に対する名演技をサポートするのは、演技派俳優たち。ここに実際のオーケストラのメンバーが混じり、まさに本物のオーケストラのような雰囲気をただよわせ、まったく違和感を見せない。

 ストーリーは、オーケストラの負け組メンバーたちがそれぞれの人生を生きながら、「自分には音楽しかない」と心に決め、反発しながらも天道に着いていくというもの。その天道は人にいえない秘密があり、それがクライマックスで明かされるという趣向だ。

 複雑な人間模様、それぞれの人間が抱える過去、多種多様な人間関係などが随所に炙り出されるが、ラストシーンでは歴史と伝統を誇るクラシックの名曲に導かれてそれらの感情がすべて昇華し、天上の音楽となって全員の心が融合する。まさに、これが"音楽の力"である。

 

(C)2015 「マエストロ!」製作委員会

 

 よく音楽映画では、演奏のアテレコの見事さに脱帽するが、今回もごく自然な演奏シーンが全編にちりばめられ、俳優たちの名演技に魅了される。彼らはオーケストラのメンバー、指揮者であるマエストロを温かい血の通った人間として描き出し、音楽に生命を吹き込んだ。そんな生身の人間が生み出す情感豊かな音楽は、聴き手の心に深い感動をおよぼし、演奏終了後もその余韻がいつまでも続く。

 「運命」は、ベートーヴェンが推敲を重ねて無駄なものはいっさいない究極の美を備えた作品に仕上げられた。人間の喜怒哀楽の感情と音楽の美しさが融合し、熱く深く活力に富む作品だ。一方「未完成」は、憧憬、優美、神秘などの表情が絶妙な転調と歌心を備えたハーモニーで彩られていく。いずれも心に響く名曲である。それらを天道がどうオーケストラを指導していくか、ここが見どころ、聴きどころである。

 これを機に、もっとクラシックの名曲を聴いてみたい、オーケストラっておもしろい、マエストロに興味を抱いたという人が多くなれば、映画の果たす役割も大きい。さあ、感動を胸に!

 

MOVIE INFORMATION

映画「マエストロ!」

奏でられる“人生の交響曲”に笑って、泣けて、拍手喝采!!

《STORY》
若きヴァイオリニスト香坂のもとに舞い込んだ、解散した名門オーケストラ再結成の報。だが、練習場は廃工場、集まったのは再就職先も決まらない「負け組」楽団員たちとアマチュアフルート奏者のあまね。合わせた音はとてもプロとは言えず、不安が募る。そこに現れた謎の指揮者、天道。再結成を企画した張本人だが経歴も素性も不明、指揮棒の代わりに大工道具を振り回す。自分勝手な進め方に楽団員たちは猛反発するが、次第に、天道が導く音の深さに皆引き込まれていく。だが、香坂だけは天道の隠された過去を知り、反発を強めてしまう。そして迎えた復活コンサート当日、楽団員たち全員が知らなかった、天道が仕掛けた本当の秘密が明らかになる――。

○監督:小林聖太郎 ○脚本:奥寺佐渡子 ○原作:さそうあきら『マエストロ』(双葉社刊)漫画アクション連載 
○指揮指導・指揮演技監修:佐渡裕 ○音楽:上野耕路 ○エンディングテーマ:辻井伸行「マエストロ!」(エイベックス・クラシックス) 
○出演:松坂桃李 miwa / 古舘寛治 大石吾朗 濱田マリ 河井青葉 池田鉄洋 モロ師岡 村杉蝉之介 小林旦弥 中村倫也 斉藤暁 嶋田久作 / 松重豊 / 西田敏行     
配給:松竹、アスミック・エース (2015年 日本 129分)
(C)2015 『マエストロ!』製作委員会 (C)さそうあきら/双葉社
◎2015年1/31(土)全国ロードショー!
www.maestro-movie.com

 


intoxicate presents
特別試写会

映画「マエストロ!」
特別試写会に25組50名様をご招待!

日時:2015/1/15(木) 18:00開場 19:00開映
会場:都内試写室

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