独創的なパイオニアの開拓史を、アルバムと客演作品で振り返ってみよう
ブラック・トゥワングらを擁するサウンド・オブ・マネーから“Next Type Of Motion”(95年)でデビューし、トリップ・ホップやアブストラクトの旋風が吹き荒れるなかでストリクトリーなNYスタイルのストリートワイズを追求していたルーツ・マヌーヴァ。
99年に最初のアルバム『Brand New Second Hand』を出す前にはINORANの“Rat Race”でDJ KRUSHとも共演しているが、それは以降に獲得する振り幅の前ぶれだったのかもしれない。レフトフィールドやハーバライザーとのコラボを経て、初作同様にビートもほぼ自作した2001年の2作目『Run Come Save Me』がゴールド・ヒットとなってからは、共演相手もさらに多様化し、シネマティック・オーケストラやヒル・ストリート・ソウル、フレック・ナスティらの楽曲に参加。リミキサーとしてベス・オートンを手掛けてもいる。また、2002年に発表したダブ・アルバムの『Dub Come Save Me』ではリミキサーにスーパー・ファリー・アニマルズを招いてもいた。
そこにもう一段階上の注目をもたらしたのは、ゴリラズ“All Alone”に客演したことだろう。同じ2005年にはオーディオ・ブリーズ“Made Like That”やブルーイの旗振りによるチャリティー企画のホープ・コレクティヴにも参加。生音の割合も増した3枚目のオリジナル作『Awfully Deep』がまたも高い評価を得ている。同作及び、それと表裏の関係にあるリミックス+未発表曲集『Alternately Deep』を聴けば、USサウス系のバウンスやグライムへの意識が現れているのもわかって興味深い。この頃になるとコールドカットやMrスクラフらニンジャ繋がりの顔ぶれとのビートを選ばないコラボはもちろん、憧れのリー・ペリー作品ではシャーウッドと邂逅している。
が、続く2008年の『Slime & Reason』で選ばれたのは攻めの姿勢だった。新進のトドラTやメトロノミーをプロデューサーに抜擢し、グライムも消化した異形のダンスホール・ベースに挑んだ同作は全英22位まで上昇し、コアなメディアでも最高傑作との評価を獲得している。
翌年にはロングトムによる過去曲のリワークに新録も加えた『Duppy Writer』でレゲエ/ダブに最接近。並行してトドラTのデビューに華を添えたり、レーベル後輩のスピーチ・デベルを援護、さらにはマッカビーズ、アンチポップ・コンソーシアム、ブレイキッジ、ビヴァリー・ナイトら幅広い面々と手合わせしながら、2011年の『4everevolution』ではセルフ・プロデュース主体に回帰。
今回の新作までの間に経験したコラボもレヴァランド・アンド・ザ・メイカーズやサリフ・ケイタ、リヴァ・スターと多彩だが、やはり驚きはコール・ポーターのスタンダードに挑んだジェイミー・カラムとの“Love For $ale”か。