心地よい音楽旅行へ誘う待望のソロ・アルバム

 スティールパン、スティールギター奏者で、青山陽一 the BM'sLITTLE TEMPOLONESOME STRINGSでの活動でお馴染みの田村玄一。最近は、新体制になったKIRINJIに正式メンバーとして参加。この作品は8/22(土)日比谷野外音楽堂で行われた、彼の還暦ライブに合わせて制作された初のオリジナルソロアルバム。KIRINJI、LONESOME STRINGSのメンバーも参加。この作品を一言で言うと音楽疑似時間旅行体験アルバム。

TAMURA GENICHI Drifting Ship Slide Labo(2015)

※試聴はこちら

 日本人の琴線に触れるメロディ、世界観、音の粒たちがつむぐ、極上の音に包まれて、自分勝手にイメージを膨らませて、聴いてみるのも一興です。

 僕なりのそれになりますが、(1)遊牧民の生活。山間の民族が四季に合わせて、その暮らしの色を変化させていくように、紡がれた音が少しずつ変化していき、淡い色合いで描かれた世界観。(2)土埃舞う地平線の向こう側。ナショナルの金属音が奏でる、埃まみれの日常。陽炎が揺らめく地平線を皺だらけの男がまぶしそうに見つめ、いつものようにトラックがやってくる。舗装されていない道路は荷台に乗る男たちを容赦なく揺らしていく。(3)沈む夕日に魅せられて。ペダルスティールが空に溶け込んでいくように、美しい夕日が沈んで行く瞬間をとらえたような音世界。(4)オーロラ。深い静寂と、満天の星に囲まれた幻想的な世界を描いたような時間が流れだす。宇宙空間にものぼれるようなうっとりした気分を味あわせてくれる。(5)星座の瞬き。フィナーレを飾るのはキラ星のごとく瞬く、2つのスティールギターが星座を描き、音楽空間旅行から、突然自宅のベットに揺り戻される感覚。

 intoxicateが開催したエリック・サティ演奏会〈TOUCH OF CLASSIC-SATIE-〉にも出演した彼の、唯一無二の世界観と、妙演を堪能してください。

LITTLE TEMPOライブ映像「頂 -ITADAKI- 2015」