サウンドプロデューサー、コンポーザー、鍵盤奏者、ドラマーとして、大森靖子やZOC、KinKi Kids、V6、堂島孝平、吉澤嘉代子、Negiccoなど数多くのアーティストのレコーディングやライブサポートを行う佐藤友亮のソロプロジェクトsugarbeans。2005年からはシンガーソングライターとしても活動し、2013年にはシンガーソングライターの伊沢麻未と楽曲制作ユニットTommy & Sammyを結成。そんなsugarbeansが、実に10年ぶりとなるオリジナルアルバム『つぶあんこしあん』を2022年1月19日(水)にリリースする。
表題曲や“煮物”、“豆大福のテーマ”、極め付きは“止まらない食欲”と、聴くだけでお腹が空いてきそうなハートウォーミングな楽曲が出揃った今作は、伊沢が共同プロデュース、楽曲共作、コーラス、コーラスアレンジを担当し、千ヶ崎学がベースで参加。それ以外はすべての楽器を自身が担当したという意欲作。そんな『つぶあんこしあん』がどのように制作されたのか、メールインタビューでsugarbeansに訊く。
40歳の自分の思っていることや考えていることを集めたむき出しのアルバムに
――今作『つぶあんこしあん』は、前作『Rudolf』から約10年ぶりのリリースとなります。10年も間が空いたのはなぜでしょう?
「もともと作曲家・アレンジャーとしてレコーディングをしたり、サポートミュージシャンとしてシンガーの方々をサポートすることを生業としていたのですが、その比重がかなり大きくなってきたのと、自分としてもその仕事の方が向いているかもしれないと思ってきていた時期だったので、ソロの活動がなおざりになっていました。
だけど昨年40歳になって、今自分の思っていることを表現するのは今しかないと思い立ち、アルバム制作に踏み切りました」
――アルバムタイトルの『つぶあんこしあん』という言葉の意味は?
「タイトル曲である“つぶあんこしあん”という曲は、好みがまったく違う2人が出てくるのですが、そんな趣味嗜好が全然違う人とでも、互いを理解して、認め合いながら共存していく世界になったらいいなという思いで作りました。多様性を受け入れることが現代を生きる人々のテーマになりつつありますが、そんな世の中へ少しでも近づくようにアルバムタイトルとしても掲げることにしました」
――ちなみにsugarbeansさんは、つぶあん派ですか? こしあん派ですか?
「基本的にはつぶあんですが、そこにあんこがある限りどちらでも食べます」
――制作についてお聞かせください。今作の楽曲はどうやって制作されていったのでしょうか?
「コロナ禍になって仕事が全部キャンセルになり、暇だからこれを機にしばらく作っていなかったアルバムを作ろうかと思い、毎日曲を作る生活を送っていたのですが、77曲作っても一向にしっくりくるものができませんでした。10年近くアルバムを作っていなかったので1人で完成させることは到底不可能だと思い、その後の共同プロデューサーとなる伊沢麻未に助けてもらい、どんなアルバムにするか試行錯誤していく毎日を送っていました。
そのうちに1年が経ち、だんだんやる気がなくなってもうアルバム作りはやめようと思いかけていたところ、5月の誕生日がきて40歳になりました。その際、せっかくなので短いムービーを作ってみようと思いつき、半ば冗談でサビだけ歌を作って歌ってみたらちょっとした手応えがありました。これを広げていったらおもしろいものができるんじゃないかと思ったのがきっかけで、アルバム制作が始まったという感じです。
その曲の仮タイトルは“40歳”だったのですが、〈今現在の自分のこと、思っていることや考えていることを集めたむき出しのアルバムになればいいんじゃないか〉という伊沢の鶴の一声でアルバムコンセプトが決まりました。
そのコンセプトが決まるか決まらないかの時、KIRINJIの堀込高樹さんとお仕事でご一緒する機会があり、アルバムを作ろうとしているということをお話ししたら、〈先に歌詞を書くとあとで書かなくて済むから楽だよ〉というお言葉をいただき、眼から鱗でした。
これはどういう意味かというと、メロディーを書くことは無限にできるのですが、限られたメロディーに合わせて言葉を選んではめていく作業というのが至難の技なのです(それが楽な方もいると思いますが、少なくとも僕はそうなのです)。先に言葉を書いてしまえば、その言葉に合うメロディーを作っていくだけ、ということです。歌詞を大事にしたかった今回のコンセプトとしてもそれが合致し、先に歌詞から書くことにしました。
そこからはひたすら言葉を書いていく毎日で、伊沢からもアイデアをもらい、駐車場が見つからなくて焦る話や、居酒屋での話、Twitterでもよくつぶやいていた〈止まらない食欲〉の話を歌詞にしていきました」
――今のお話にも出た伊沢麻未さんは、sugarbeansさんと多くの作品でタッグを組んでおり、今作においても共同でプロデュースをされています。今作においての伊沢さんはどういった役割だったのでしょうか?
「そもそもの曲作りのアイデアや、細かい歌詞の推敲、歌詞のメロディーへのはめ方、アレンジへのアドバイスに至るまで、すべて助けてもらいました。これまでのアルバムではディレクターみたいな人がおらず、自分1人で作りたい放題作っていたので、正直詰めが甘いところもありました。しかし今回は自分としてもとても納得のいく曲たちができましたし、伊沢がいなければこのアルバムは完成できていませんでしたので、本当に感謝しています」