(左から)Yasei Collective・別所和洋、SPECIAL OTHERS・芹澤優真

 

Mikikiブログ〈ヤセイの洋楽ハンティング〉でお馴染みのYasei Collectiveが、自身のレーベル=Thursday Clubからの初作品となるニュー・シングル“radiotooth”を11月25日にリリース! Mikikiではこれを記念し、ヤセイブログのスピンオフ企画として各メンバーをフィーチャーした短期集中対談連載〈ヤセイの同業ハンティング〉をスタートします。メンバーそれぞれがいまバンドマンとして&同じ楽器を演奏するミュージシャン(同業者)として尊敬する人たちを招き、あんなことやこんなことをディープに掘り下げていく全4回!

その第1弾として今回登場するのは、キーボードの別所和洋。まったく異なるパーソナリティーと得意分野を持ち、お互いが師匠であり弟子であるというユニークかつ合理的な関係を築いているSPECIAL OTHERSの芹澤優真を招いて、鍵盤奏者にまつわる話を軸に、両者がいまカッコイイと思うミュージシャンやバンドマンとしてあるべき理想の姿、今後の展望についてなど、かなりじっくり語り合ってもらいました!

Yasei Collective radiotooth Thursday Club(2015)

 

見えている景色が全然違う

――お2人は知り合ってからもう長いんですか?

芹澤優真(SPECIAL OTEHRS)「長くもないよね」

別所和洋(Yasei Collective)「3、4年くらいですかね?」

芹澤「もともとうちのギターの柳下(武史)がヤセイと仲が良くて、ライヴに参加したりしていたのがきっかけで俺はヤセイを知った。それで俺らがツアーで沖縄に行った時、なぜか別所が遊びに来ていて」

別所「(その前に)東京でスペアザのライヴを観に行って、ヤギさん(柳下)から〈沖縄に観に来たら打ち上げも来ていいから来いよ〉って冗談で言われて、でも楽しそうだし本当に行こうかなと(笑)。それで沖縄へ行ったら超楽しくて。ケータイなくすし(笑)」

芹澤「楽しかったね、あの時は」

別所「それで芹澤さんとも仲良くなって、一緒にスタジオへ入るようになって」

芹澤「家に来たりもしてたよね」

別所「そうそう、芹澤さんも一度僕の家に来てくれたりして」

芹澤「それからはかなり密な関係だよね。ちょうど別所と仲良くなった頃、このままの鍵盤のスキルだとアレだから先生に習うのもひとつの手段だなと思っていた時で。クリエイティヴなことはできるけど、基礎的なところをもうちょっとビルドアップしたくて、ネットで検索してたらぴったりの先生がいたんです。しかもフレキシブルにいろいろなことを教えてくれそうだと思って申し込もうとしたら、その先生が別所だった」

――えー!

芹澤「〈Yasei Collective〉って(プロフィールに)書いてあるからそこで一旦思い留まって、これは正規のルートで行かないほうが上手くいくんじゃないかと(笑)。で、それから別所に(鍵盤の)テクニックを教えてもらうようになった。逆に俺は別所に音の作り方とか機材の選び方を教えるようになって。お互いに師匠であり弟子であるみたいな」

別所「お互いに得意分野が全然違うから、それを補完し合う関係というか。僕もすごい勉強になる」

芹澤「別所はジャズ的なアプローチの引き出しをすごくいっぱい持ってて、それをすごい教えてもらえる。俺はリズムの部分で言うと別所よりもちょっと引き出しが多いから、別所にこういうリズムとか採り入れたらいいよという話をしたりとか。全体的なスキルで言ったら別所のほうが全然上手いんだけど」

別所「いやいやそんなことないです。(芹澤とのやりとりで)僕にとって大きかったのはエフェクターですね。もともとピアノから始めて、しかもキーボードはヤセイに入ってから始めたくらいだからよくわかってないことが多くて」

芹澤「なんにもわかってなかったよね、むしろ」

別所「〈芹澤さん、これ電源つかないです〉って言ったりとか、それにアダプターが必要なことも知らなかったくらい(笑)」

芹澤「きっと脇目も振らずにジャズに取り組んできた人はそうなるんだろうな、というか。職人って服がダサかったりするでしょ、そういうことだと思うんですよね。だから別所は職人なんだなーと。ダメなものは全然ダメっていう(笑)」

別所「ほんとそうっすね」

――せっかくなので、それぞれのルーツというか、どういう道を通ってきていまのバンドに行き着いているのかを訊きたいのですが。

別所「僕は小っちゃい頃からピアノをやっていたんですけど、中2の頃にバスケもやっていたし受験もあったから忙しくなっちゃって、中高の頃はピアノに触ってないことが多かったんです。でも高3で部活を引退したら暇になって、その頃ジャズに興味が出てきたのでまたピアノをやりはじめました。それで大学でジャズ研に入って、そこから音楽にのめり込んでいったんです。そういう流れなので、いわゆるロックの人が歩んできた道とまったく違うんですよ。例えばレッチリなんかも聴いたことなくて、〈フリーって誰?〉みたいな。他のメンバーとも聴いてきた音楽が違うから、そういうところがおもしろいっちゃおもしろいなと」

――松下(マサナオ、Yasei Collectiveドラムス)さんは〈AIR JAM〉周辺を通ってきているんですもんね。

別所「マサナオも、拓郎(斎藤拓郎、ヴォーカル/ギター/シンセ)もミッチー(中西道彦、ベース/シンセ)もみんなそういうところは通ってきてる」

――ヤセイのなかではちょっと違う道を歩んできてると。

別所「そうですね、ヘンな出自というか。ヤセイに加入するにあたってキーボードを買わされて、それからどんどん機材が増えて行った」

――ヤセイに入って鍛えられた面はありますか?

別所「それはやっぱりありますね。バンドもやったことがなかったので。ジャズのセッションはもちろんやったことはありましたけど、バンドとはまったく違うものですし。そういう意味では芹澤さんはずっとバンドをやってきた人だから、バンドのなかで自分がどう存在すればいいかをすごくわかっている。それは一緒にセッションしていてもわかるし。ただコードを追うだけのセッションではなく、全体のサウンドを理解して、自分が行くところは行く、みたいな。そういうところが勉強になります」

芹澤「俺がコードを追えないっていうのもあるけどね(笑)」

――では芹澤さんは?

芹澤「15歳の時にバンドを始めたんですが、鍵盤はまだやっていなくて、ギターや歌をやっていました。とにかくモテればいいやっていうスタイルで、モテるならギターか歌でしょう、とやっていたんです。それでミクスチャーやメロコアがブームになった頃に洋楽も聴きはじめて、レイジ(・アゲインスト・ザ・マシーン)やビースティ・ボーイズを聴くようになったりとか、だんだん音楽自体に興味を持つようになった。それから99年の〈フジロック〉でフィッシュを観たり、〈Organic Groove〉というジャム・バンド中心のイヴェントが始まって、その周辺に俺らはガンガン影響を受けたんです。それでジャム・バンドには鍵盤がいるということで、バンドのなかで歌だけやっているのも手持ち無沙汰だろうと、俺に圧力がかかったんですよね。手の空いてる人間で鍵盤やれる奴いねぇかっていう」

フィッシュの96年のライヴ映像

 

――ハハハハ(笑)。

芹澤「その圧力に負けて、まずはローンを組んでオルガンを買ったんです。俺はまったくピアノが弾けないからオルガンから始めて、そこでヴィンテージの楽器に出会って。いちばん最初にヴィンテージを触るところから鍵盤人生が始まった感じです」

――それはいくつの頃ですか?

芹澤「ハタチでした」

――それまでは全然鍵盤に触ったこともなかったと。

芹澤「そうなんです。だからドレミファソラシドを近所のピアノ教室のおばちゃんに教えてもらうところから始めました。どこがドかもわからないし」

別所「すごいっすよね、それでここまでに至るっていうのは」

芹澤「だからできないことは何もできない。基礎をすっ飛ばして、いちばん最初にその先生に教わったのがエリック・サティの曲だったりしたから。そのサティが大きかったんじゃないかなと思って。その頃はスティーヴ・ライヒ、ストラヴィンスキーのようなミニマルかつ現代音楽的なアプローチが好きで、ああいうのを模倣するところから鍵盤を始めたから、それがいまの音楽スタイルに通じるところがあるのかなと」

エリック・サティ作曲〈Gnossienne〉No. 1, 2, 3

 

――なるほど。

芹澤「なんでミニマルなのかというと、もちろんそういう音楽が大好きだったというのもあるんだけど、コードを追うようなメロディアスなものができなかったからだと思うんですよね。いまでも苦手なんですけど。だからミニマルなものをやらざるを得なかったというか。圧倒的に他のバンドマンより遅れて始めたから、(スキルではなく)自分のなかの音楽性の部分で勝負するしかなかった」

別所「芹澤さんはポリリズムにも強いですよね」

芹澤「それがその時の恩恵だろうね、きっと。あと、鍵盤を触るようになる前にお金を貯めて最初に買ったのがサンプラーで、ひたすらサンプリングしていたというのもある。その頃はテクノ全盛期だったり、ビッグ・ビートも流行っていて、サンプリング音楽が多くあった時代だから、鍵盤をピアノというよりはシンセサイザー、キーボードとして見てた」

――そう考えるとお互い全然違いますね。

別所「全然違いますね、見えてる景色も全然違うんだろうな」

――別所さんはプレイヤーとして影響が大きい鍵盤奏者は誰ですか?

別所「やっぱりビル・エヴァンス、ハービー・ハンコック、チック・コリア、バド・パウエル、最近だとブラッド・メルドー。ジャズの影響がすごく大きいですね」

――Mikikiでやっているヤセイのブログでは、ビル・エヴァンスとブラッド・メルドーを取り上げていましたもんね。ビル・エヴァンスからは具体的にどういう影響を?

別所「やっぱり和声ですね。〈Gm7(Gマイナー7)〉と言っても、その弾き方ひとつで全然サウンドが違うので、エヴァンスの演奏が全部楽譜になっている本を買って彼のアプローチを分析して、この場面でこういうふうにすると、こういうサウンドになる、というのをすごく研究しました。だから僕は音楽の捉え方が和声に寄っているのかもしれません。リズムという概念は後から付いてきた部分が大きくて。リズムに関しては芹澤さんが突出して持ってるところだと思います」

ビル・エヴァンス・トリオ“Waltz For Debby” パフォーマンス映像

 

――まさにバンド育ちだからこその感覚というか。

別所「そうですね。ただヤセイにおいてはリズム的なアプローチは足りすぎてるほど足りているので、リズムのアイデアから曲作りが始まった場合は、和声をこういうふうにしたらいいんじゃないかと提案する役を僕が担っています」

――ヤセイはリズムだけでなく、あらゆる面で飛び抜けたバンドだと思うんですが、芹澤さんはYasei Collectiveというバンドをどう見ていますか?

芹澤「音楽的にもちろん素晴らしいのは間違いないけど、茨の道を進むバンドだなと思いますね。ヤセイの音楽を理解してもらうのは相当難しいというか、ポップなアプローチのメロディーの曲もあるけど、絶対そのまま行かせなかったりする感じは、楽器好きが喜ぶポイントだったりするんですよね。目線が〈本当に音楽好き〉という方向に向いている。でもそういうものを日本の音楽シーンにドーンと出そうとしている心意気は素晴らしいと思いますね。それこそ近年のEDMブームのように、簡単にフィジカルに訴えかける音楽が流行ったりするなかで、それに逆行するような、フィジカルだけでなく脳味噌でも理解しなくちゃ楽しめない音楽は、TVで流れている音楽がトレンドになるわけじゃなくなるであろうこれからの時代に必要とされてくるんじゃないかな。こういうカッコイイ遊び場にある音楽がどんどん市民権を得てくると思う」

Yasei Collectiveの2013年のミニ・アルバム『Conditioner』収録曲“Goto”

 

――そうだといいですよね。

芹澤「細かいことを言えば別所の役割は重要で、ヤセイの音楽の散らかり具合ってすごいんですよ。それは悪い意味じゃなくて。良い意味でとっ散らかってるところを、別所がひとつコードを出すことで手引きするというか、説得力のある和声を出すことができるんです。単純ではないけどキャッチできる音楽にする。それはジャズをちゃんと研究している人のいいところだなと思って。別所はジャズについて、和声については職人的なんです、研究がハンパない。それで、俺もよく〈この曲のこのコードどうなってるの?〉って動画を送って解析してもらったりして。そういう面で学ぶことが多い」

――もともと別所さんは研究家肌なんですかね、音楽の聴き方が。

別所「やっぱりジャズを始める際に、何もわからないのでいろいろ考えてやるしかなかったのが始まりだと思います」

芹澤「すごいね。俺、まだわかんないよ(笑)」

別所「ハハハ(笑)。大学でジャズ研に入ると、全然何もわかってないのにいきなりセッションに参加させられるんです。何もわからないから何もできないのに、とりあえず音を出せと言われるんですけど、僕はとりあえずの音を出し続けるのが嫌で。自分で考えたことができていないと意味がないじゃないですか」

芹澤「そこに大きな性格の違いが出てると思うんですよね(笑)。俺がそこにいたとしたら、何も準備ができていなければ何もできないという考えすらまずなくて、とりあえず参加してみて、何もわからないけど堂々としていればいけるんだ、という楽観的な感じでいる。〈だって音楽でしょ?〉って」

別所「それでできる人とできない人がいて、僕はできない人間なので……。だからもういろいろこねくり回して考えるしかないんですよ」

芹澤「そのほうがいいだろ本当は(笑)。準備したほうがいいに決まってんだもん。でも、俺はそこで準備していなくてもみんなに後ろ指さされない術を学んできたんですよ、人生で。アプローチとか音の出し方とかで」

――ある意味で研究かもしれません(笑)。

別所「〈BASEMENT SESSION〉という芹澤さんやひなっち(日向秀和、ストレイテナー)さん、田中邦和(サックス奏者)さんなどとやっているイヴェントがあって、そこでセッションしていると、芹澤さんが弾くとスペアザ感が出るんですよ」

SPECIAL OTHERSの2015年作『WINDOW』収録曲“Good Luck”

 

芹澤「それは引き出しが少ないから」

別所「でもそれはすごいことなんです。どこへ行っても自分の色が出せる。それはマサナオがよく言ってるんですけど、Yasei Collectiveという名前の由来は、どこへ行っても一人立ちできるという意味があるんです。そうやってどこでもヤセイの感じが出せるようにしたいよねという話をしているんですが、まさにそれを芹澤さんは体現してる」

芹澤「それも一長一短があると思うんだけど、どこにいても俺っぽさ、バンドっぽさが出るというのは、逆に言うとプレイヤー然としてやることができないからそうならざるを得ないっていうことで。別所はプレイヤーとしての生き方もできるタイプの鍵盤だから、逆に羨ましい。俺はバンドありきでプレイが構築されているから」

別所「でも僕らはバンドのシーンにいるので、いまはバンドとしてどうなるかということが重要なんです」

――ヤセイは最近ACIDMANの事務所に所属したり、自身のレーベルを立ち上げたり、新たな旅立ちと言えるタイミングかと思いますが、今後バンドとしてどういう方向に行きたいと考えていますか?

別所「そうですね、僕らの音楽の基本的な部分は曲げずに、ポップな要素も織り込んで、多くのリスナーに受け入れられるような音楽を作っていきたいなと」

芹澤「ヤセイってさ、もうわかんなくなっちゃってるというか、あまりに音楽に造詣が深くて、その〈曲げない〉という部分は相当だから、そこが強みだよね。浮世離れしてるところが」

別所「確かに自分たちでもあんまりわからないですけど(笑)、これまででいちばん、何も考えずにポップな曲作ろうとして作ったのが前作(『so far so good』)の“Tonight”だったんですよね。僕らとしてはすごいポップだと思ってる」

芹澤「ポップだけど、キャッチーではないというか。ポップとキャッチーって混同して使われがちだけど、全然違う。でも俺はポップなものは好きだけど、キャッチーなものが好きかというと必ずしもそうではないしね」

 

 

日本には鍵盤ヒーローの存在が必要

――バンドのなかでの立ち位置が重要という芹澤さんの話がありましたが、別所さんは自身のバンドのなかでの役目はどういうところだと思いますか?

別所「さっきも言った通り、味を整える役目というか、レコーディングの時などに〈ここでこの感じを出したい〉みたいなことをマサナオが言ったりするんですけど、その感じを出すには和声的な部分でどういう音の積み方をしたらそういう感じになるかを整える。ヴォコーダーのハーモニーを考えたりする時に、そのハモが音楽的にどうかというのをディレクションしたりとか、そういう役割ですね。最後の調整をする立場というか。芹澤さんはどういう立場なんですか?」

芹澤「うーん、リハスタでは、ワーッて弾いている時に自分がカッコイイと思うリフとベースラインをずっと弾き続けて、周りがついてくるのを待つ立場です(笑)」

別所「ミニマルな立場ですね(笑)」

芹澤「〈こうします!〉と言うのが俺は苦手だから、密かにカッコイイと思うものを弾いて、周りがキャッチするのを待つ」

別所「スペアザの曲作りはジャムりながら?」

芹澤「きっかけとなるフレーズがあって、それを録音しておきつつ後で掘り返して、じゃあこの曲をどう構築しようか、みたいな」

別所「そうなんですね」

芹澤「フレーズを考える時も、〈このフレーズをこうして入れる!〉って言うのは苦手だから、弾いてみせるような感じかな。俺がバンドの鍵盤として嫌なのは、斜め後方、ドラムよりも目立たない位置で白玉弾いてる、みたいな既存のイメージ。もちろんそれは職人にしかできないことだから、本当はそれもカッコイイことなんだけど。でも……違うじゃん、ガシガシ弾きたいじゃん」

SPECIAL OTHERSの2015年作『WINDOW』収録曲“I'LL BE BACK”

 

別所「それはセッティングにも表れてますよね。普通に考えたらシンセ1台で、内部エフェクトだけでやったほうが楽じゃないですか」

芹澤「そうだね、荷物も少ないし」

別所「でも全然音が違いますもんね」

芹澤「聴いてる側にはわからないかもしれないけど」

別所「それは芹澤さんと出会ってからわかったことで。バンドマンはコンパクト・エフェクターを並べてなんぼだって(笑)」

芹澤「そうそうそう、バンドマンだからね」

別所「でも、キーボーディストでそういうことをやってる人はあまりいないですよね」

芹澤「海外のミュージシャンだよね、やっぱり。俺はジェイコブ・フレッド(・ジャズ・オデッセイ)から思いっきりパクってるから。あとソウライヴのニール・エヴァンスとか。昔、そういう人たちのセッティングを写真撮ったり、目で見て覚えたりしてエフェクターを学んでいった」

ジェイコブ・フレッド・ジャズ・オデッセイの2013年のライヴ映像

 

別所「そしてそのエフェクターを俺がパクってるという、ハハハ(笑)」

芹澤「音の研究はとことんしたから」

別所「アンプにもすごいこだわってますよね」

芹澤「アンプなんて何十台試したかわからないくらいやって、いまの形になった。だから変わってるセッティングなのかもね」

――そこがバンドマンぽいですよね。

芹澤「俺はバンドマンぽいことしかできないから」

別所「キーボードをラインで全部出しちゃうとちょっと違うんですかね、みんながアンプで鳴らしてるのは重要なのかなと」

芹澤「そうだね、立体感が変わるからね。もちろん綺麗には出るんだけど、ラインの音はラインの音だから。結局はプレイっていうのはあるけど、逆に言うとこの音さえ出せていればどんなプレイでも説得力が出るという音もあるから」

別所「ほんとそうですね」

芹澤「だからめちゃめちゃ音をカッコ良くすることで、プレイの面で楽する……という考え方もあるよね(笑)」

――いまいくつか影響源となるミュージシャンの名前が出ましたけど、音作りに関してなかでもこの人、というのはいますか?

芹澤「さまざまなんだけど、強いて挙げるならジェイコブ・フレッド(の鍵盤奏者、ブライアン・ハース)と(ジョン・)メデスキかな」

メデスキ・マーティン&ウッドの2011年のライヴ映像

 

――それはさっき言っていた通り、まずセッティングを見て盗んで、という感じですか。

芹澤「そうですね。ジェイコブ・フレッドはライヴではまだ観たことないんですけど、動画を見て、〈なんか緑色の箱使ってるぞ〉となると、それを何とか探し当てたりとか。すごい音がカッコイイんですよ。俺はいまローズ(・ピアノ)を使ってるんですけど、ローズの音は完全にジェイコブ・フレッドの音を模してる。メロディオンを使い出したのもジェイコブ・フレッドの影響。それぐらい多大な影響を受けてる。そんなに有名な人たちではないんだけど」

別所「ローズはいつから使ってるんですか?」

芹澤「25歳くらいからかな」

別所「どんなに小さなライヴハウスでも持って行ってました?」

芹澤「入口から入らないと言われない限り持ってってた」

別所「ハハハ(笑)、そういうこだわりがスペアザらしいですよね」

芹澤「本物じゃないとね、やっぱりね。でもそろそろ身体が辛いからリハに持ってくのは止めたいなと思ってるんだけど(苦笑)」

――別所さんは、音作りに関しては芹澤さんに会ってからどんどんこだわるようになったんですか?

別所「もともとKORGのシンセとmicroKORGというシンプルなセッティングだったんですけど、芹澤さんからローズを買って、それからコンパクト・エフェクターをどんどん揃えるようになりました。流石に全部のライヴで(ローズは)持っていけないんですけど、ワンマンや、フェスでも転換に余裕がある時は持って行くようにしていますね。生のローズだと全然違うので」

――だいぶ芹澤イズムの影響があるんですね。

別所「そうですね。このムーヴメントを日本で盛り上げたいなと思ってるんですよ、密かに」

――このムーヴメントというのは?

別所「鍵盤奏者がちゃんとバンドマンな感じで存在するというか……」

芹澤「(鍵盤奏者は)サポート・メンバーっぽく見られがちなんだよね、どうしても音が前面に出てこないというか。だから日本には鍵盤ヒーローの存在が必要なんだよ。メデスキやロバート・グラスパー、ブラッド・メルドーみたいな存在が必要なんだけど、日本にはいまのところヒイズミ(マサユ機、PE’Z)くんしかいないと思っていて。上手い人、カッコイイ人、素晴らしいプレイヤーは日本に山ほどいるんだけど、俺の思う鍵盤ヒーロー像はヒイズミくん」

ヒイズミマサユ機の2010年のソロ・パフォーマンス映像

 

別所「アイコンとして強いというか」

芹澤「何よりプレイが凄まじくカッコイイから」

別所「すごいですよね、バキバキですよね」

芹澤「すごいよね。でもヒイズミくん、機材のことは何にも知らないんだよ」

別所「そうなんですか(笑)。確かに、前にPE’Zのライヴを観に行ったら、結構KORGの61鍵かなんかを使っていて、でもバキバキな演奏してて」

芹澤「〈アンプ、Marshallの1発※使ってるんすね〉って言ったら〈1発? 1発?〉って言ってて(笑)。Ohyama(“B.M.W” Wataru)さんが〈あの丸(スピーカー)1個のやつ〉って言ったら〈ああ〉って言ってて」

※アンプに搭載されるスピーカー・ユニットの積載数のこと。〈1基〉のことを〈1発〉と言われたりする

一同「ハハハハ(笑)」

芹澤「ああいう人は、鍵盤を〈大体〉で捉えてるんですよ。(ヒイズミは)すごくいい加減に弾くでしょ。でもそれは凄まじいテクニックがある人のいい加減さ、遊びっていうか」

PE'Zの2012年作『JumpUP!』収録曲“JumpUP!”

 

別所「リズムもすごいタイトですもんね」

芹澤「すごい、あの人は本当にすごい! 俺、前にヒイズミくんと連弾したことがあってさ……でも途中で弾くのやめたもんね、〈もう無理だ〉って。この人とガチで刺し合うのは無理だよ」

――先日ヒイズミさんに取材させてもらった時に、まさにその話をされていました。すごく高いレヴェルでの適当でいい、大体でいいって。

芹澤「理詰めで緻密に繊細に弾くというのももちろん職人的でカッコイイんだけど、あの大胆さっていうのがやっぱりヒーローなんだなと。そういったアイコンとしての力がある人がもっと鍵盤で出てきたらいいのにと思っていて。それはたぶん俺や別所じゃないんだけど……」

別所「芹澤さんですよ」

芹澤「無理でしょー。俺はそのムーヴメントの隅っこのほうで一員としていれれば(笑)」

別所「でも芹澤さんしかいないですよ。そんな人は他にいないんですもん。だからこそ今回対談を申し込んだわけですし」

芹澤「ありがたいね」

別所「鍵盤に対してのアプローチの面で新しい時代を作れるという意味では、ヒイズミさんとはまた別の次元でヒーローだと思いますよ」

芹澤「確かに、鍵盤の捉え方で同じ考え方の人はなかなか会ったことない。みんな鍵盤を鍵盤として捉えているというか」

――いまプレイヤーとしてやっている人は小っちゃい頃から鍵盤を触ってる人が大部分だと思うんです。他の楽器をやっていた人が途中から鍵盤に転向するパターンはあまりないから、その結果生まれるオリジナリティーというのはあるのかなと。

別所「それはありますよね」

芹澤「俺が意識的に大事にしていることがあって、これはディスってるわけではまったくないんだけど、クラシックやジャズに親しんでいる人は何となくお上品な感じがイメージとしてあるんだよね。でも俺は、ビースティ・ボーイズが主宰していたレーベル、グランド・ロイヤル周辺にいたマニー・マークあたりが出してる、DJカルチャー、ストリート・カルチャーと密接な鍵盤の感じを意識してる。日本にもそういうシーンはあるんだけど、あんまりオーヴァーグラウンドにならないというか。でも俺はそういうところに意識的にいたいと思ってるんだよね。そういうカルチャーが日本に根付くといいなと」

ビースティ・ボーイズ“Sabotage”の94年のパフォーマンス映像。マニー・マークがキーボードを担当

 

――ヤセイは、もしかしたら茨の道を通ることになるかもしれないけど(笑)、新たなカルチャーを牽引する可能性を持つバンドかなと思うんですが。

別所「そうですね、まあいろいろクリアにしなきゃいけないこともあるんですが、それもご意見を賜って(笑)」

芹澤「とりあえずまずダイエットだな。デカくなりすぎてる(笑)」

別所「そうですね、そういうとこですよね」

 

~互いのバンドのミュージック・ビデオを鑑賞しながらトーク・セッション~

Yasei Collective “radiotooth”

芹澤「このコード進行変わってるよね」

別所「これは拓郎が作ってきたんですよ」

芹澤「絶対ポップで終わらせないよね」

別所「俺的に〈コード進行オブ・ザ・イヤー〉なんですよ(笑)。拓郎は音楽理論に詳しいわけではないんですけど、飛び抜けていいものを作ってくるんです」

芹澤「すっごいヘンだもんね。ちょっとインテリっぽいところがある、ヤセイは。インテリというかインテリジェンスを感じる、(曲の)流れとか。でもそのインテリジェンスをイヤらしく出さないからいいよね。育ちの良さが出てるなと思う時があるよ。俺らはたまに育ちの悪さが出ちゃうから(笑)」

別所「ハハハハハ(笑)」

芹澤「この曲は従来のヤセイよりもアプローチがシンプルだよね」

別所「そうかもしれません」

芹澤「NY感がある」

別所「ありますか、ハハハ(笑)」

芹澤「リズムの独特のつんのめり感が最近のアメリカの流行というか、むしろスタンダードになりつつある、ハイエイタス・カイヨーテ※とかあのへんの匂いも感じるよね」

※ハイエイタス・カイヨーテはオーストラリア・メルボルン出身のバンド

ハイエイタス・カイヨーテの2015年作『Choose Your Weapon』収録曲“Breathing Underwater”

 

別所「ハイエイタス・カイヨーテはすごい好きですね」

芹澤「ヤセイがそのあたりの音楽の影響下にあるということを、みんなよくわかってないかもね」

別所「でもいまではもういろんな人がやってるから……」

芹澤「いろんな人がやっているなかで、ドンズバで近いのはヤセイだと思うよ」

別所「そう思ってくれるのは嬉しいですね」

芹澤「スキルもあってセンスもあって、ちゃんとできているバンド。表層を掬ったようなものはいっぱいあるんだけど、日本人でここまであのへんの音楽と共振していて、なおかつオリジナリティーを持って表現できているのはヤセイくらいじゃないかな。この曲を聴いて思ったけど」

別所「その評価はすごい嬉しいな」

芹澤「昔よりそっちに近くなった」

別所「やっぱりニーボディ※との交流も大きいかもしれません」

※ニーボディについてはヤセイブログでもたびたび取り上げられているので、以下もチェックを!
★日本にいたら嫉妬して友達になれない! ハイエンドなミュージシャンから絶大な信頼を得るドラマー、ネイト・ウッド
★インプロヴィゼーションはどこまで進化するのか? ニーボディの提示する新しい音楽的コミュニケーション

芹澤「そうだね、ニーボディは直接的にあるよね」

別所「ニーボディはハイエイタス・カイヨーテ周辺とも仲良いし、近いものを感じてる部分はあるかもしれない」

ニーボディの2014年のライヴ映像

 

芹澤「俺らからしたら、そこがいまいちばんカッコイイ音楽じゃん、彼らがやっているものが」

別所「そうですね」

芹澤「そういうなかで、〈そう、これこれ!〉という音楽ができているのがヤセイだと思う」

別所「そう言ってもらえると嬉しいですね。芹澤さんが言うなら間違いないや」


SPECIAL OTHERS “neon”

別所「(オープニングで)いい音してますね。レコーディングの時はラインの音も混ぜてますか?」

芹澤「最近はもう使ってない、全部アンプ」

別所「このヒャンヒャンヒャンヒャンて音(0分26秒頃から)は何を使ってるんですか?」

芹澤「ローズのオクターヴ」

別所「(もう一方のリフと)同時に弾いてるんですか?」

芹澤「そう! 結構難しいから練習した」

別所「へぇ~すげえ。(0分42秒頃から)これはメロトロン?」

芹澤「クラビ(ネット)の音にトレモロをかけて、フィルターをちょっといじってる」

別所「へぇー」

芹澤「ちなみに、このバッキング(1分頃から)は自分がどんな和声で弾いているのかをまったく理解せずにやってる。このキーすらわからない」

別所「ハハハハ(笑)。それでもちゃんと音楽になってるからすごい。ここ(2分15秒頃)は心に残るメロディーですね」

芹澤「やっぱりメロトロンで弾く時はメロディーを活かさないと。リズムには限界があるから、こういうアタックのない楽器だと」

別所「レコーディングの時、弾く音はあらかじめ練っていくんですか?」

芹澤「最近は考えてから弾いてる。じゃないと上手くいかなかった場合、悲惨なことになるから。これは一音一音、端から端まで全部考えた」

別所「へぇ~。構築されてる感があります」

芹澤「(3分9秒頃から※)このあたりは祭囃子の笛の音をイメージしてる。アメリカでツアーする頃に作ったから、海外の人がキャッチして日本を感じられるようなフレーズを意識していて。オリエンタルな感じを」

※YouTubeで公開されているショート・ヴァージョンには含まれていないので音源で聴いてください

別所「すごくイイ感じですね。(5分45秒頃から)こうやって同じフレーズを繰り返してどんどん積み重ねていくのは、さっき芹澤さんが言っていたようなことですよね」

芹澤「ミニマル・ミュージックっていうかね。ライヒやエイフェックス・ツイン、あとアフロ・ミュージックの影響はデカい。繰り返しの気持ち良さ、〈1回目と8回目でこんなに感じ方変わるんだ〉みたいな」

エイフェックス・ツインの97年作『Come To Daddy』収録曲“Come To Daddy”

 

――スペアザが初期にポスト・ロックと言われていたのもその部分が大きかったんですかね。

芹澤「それはそうですね、ポスト・ロックと言われても納得できるくらい。マイス・パレードとか」

別所「しかも踊れるし」

芹澤「踊らせるというのはずっと考えてた。同じフレーズがどんどんフェイズしていくのは気持ち良いよね」

別所「トランス感というか」

芹澤「そのためにどんどん音を変えていかなきゃいけなくて、どんどんエフェクターが増えていくんだよね。ちょっとずつ音を変化させていくのに、1回使ったら1個はそれで終わりだから、その数だけ増えていく。同じフレーズを4パターン変化させるためには、4つのエフェクターが必要」

別所「それらのエフェクターがハマるかどうかの検証をひとつひとつしていくとなると、リハの時間を長く取らないと曲ができないですよね」

芹澤「そうだね。他のバンドよりもリハの時間はすごく長いと思う」

別所「やっぱり、そうしないとバンドじゃないと思うんですよね。ジャズメンの人たちを悪く言うつもりはないですけど、ジャズの人たちは全然リハをしないから、すごい技術を持つ人たちが集まっても、ガチッとなったバンドのあの感じは出ない」

芹澤「特有の感じがあるよね。ジャズの人たちは器用だし上手いから(リハをしなくても)形にできちゃうんだけど、俺らはあらかじめ集まってやらないと曲がダメになっちゃう」

別所「俺やマサナオももともとジャズが好きで、キャリアの初期はジャズの場所にいたけど、そこのいい部分を保ちつつ、〈バンド・シーン〉にいるということを意識して、そちら側にいるように常に心掛けている部分はありますね」

芹澤「別所はそうしているよね。アプローチが最初に会った頃よりバンドの鍵盤っぽくなってきた」

別所「やったー! バンドマンぽいですか(笑)?」

芹澤「バンドマンぽくなってきたね。最初はほんとプレイヤーだったもんね。フレーズも上品だったし」

別所「それは嬉しいっす」

芹澤「別所みたいにちゃんとプレイヤーとしてもできる奴が、バンドマンらしさを手に入れたら最強になるわけじゃん」

別所「その部分を学べたのは芹澤さんのおかげですから」

芹澤「逆に俺はプレイヤーの面を別所に学んでるから。それを総合するとどうなるか知ってる?」

別所「なんですか?」

芹澤「ヒイズミくんになるんだよ」

別所「ハハハ(笑)、そっか」

芹澤「あの人は両方持ってる。やっぱりいつまでもあの人には追いつけない。大スターだよね、ほんと。あの人はストリート・カルチャーとジャズのすごい部分を併せ持ってる。ヒイズミくんにクラシック弾かせたら物凄いらしいし。最高の技術に裏打ちされた、あのいい加減さ」

別所「あー、そうなんですねー」

――でもジャズ側の人のほうがアバウトで、ロック側の人のほうがきっちり準備しているというのは、イメージとしては逆でした。それが技術を持ってるからこそのいい加減さ、というところなんですかね。まあロックの人に技術がないというわけではないですが……。

芹澤「いや、ロックの人のほうが技術はない、完全に。なかにはジャズメンに負けないくらいの技術を持ってる人はいるけど、でも大きく括ったら絶対ロックの人のほうが技術はない。技術を得ることでダメになるなんてことは絶対になくて、技術に溺れるからダメになる。それは心の問題。だからジャズメンに学ぶことはたくさんあって、つまり別所に学ぶところはたくさんある」

別所「いま名言が出ましたね、〈技術に溺れるからダメになる〉……見出しに使えるくらいの(笑)」

芹澤「ロックの奴は溺れるほどの技術がないんだから練習すればいいんだよって俺は思う。俺なんて溺れるほどの技術なんて全然持ってないから。でもそのかわり、技術では説明できないカッコ良くておもしろいフレーズは、技術力のある人よりも多く持ってる自信はある。だからその2つ(スキルとクリエイティヴィティー)が手に入れば鍵盤スターになる未来もあるんじゃないかな」

――ちなみに、お2人がいま注目している鍵盤奏者は誰ですか?

別所「いろいろいますけど、ジェイソン・リンドナーやショーン・ウェイランド、あとブラッド・メルドーは説明のしようがないくらい。ショーン・ウェイランドはローズを使ってたり、最近はヴィンテージ・ヴァイブっていう、小っちゃめなんだけどローズみたいな音がする楽器を使ってるんです。ヤセイの音に近いところにいる人というとジェイソン・リンドナーかもしれませんね。アナログ・シンセとウーリッツァーという2つの主軸があるという部分で近いかも」

ジェイソン・リンドナー率いるナウVSナウの2010年のパフォーマンス映像。当時ドラムスを担当しているのはマーク・ジュリアナ

 

芹澤「いやー、服ダサいねー(笑)。服なんてかまってられないくらい音楽に没頭してるんだろうね」

別所「そうなんですよ」

芹澤「超カッコイイ。俺いまこういうのをやりたい」

別所「これは結構古い動画ですけどね」

芹澤「まあでも、そもそも新しいことをやってるわけじゃないもんね。ただただカッコイイことやってる人たちって感じだね」

別所「ファジーに聴こえて、実はちゃんと拍子が決まってるというのはわかってないとできないんですよ」

芹澤「そうだね。この人たちはこういうことをずっとやってきててさ、いま時代がそれをキャッチして、こういうリズムのおもしろいものを最先端って言ってるだけなんだろうね」

別所「そうですね。だいぶ前からYasei Collectiveの共通認識として知っておかなければならないものとしてシェアされていたんです。マーク・ジュリアナも日本でそこまで知られてない時から注目はしていたし、ロバート・グラスパーもこんなになる前からシェアしてた。いまはその影響が出すぎないように気を付けてるくらいです。みんなやってることだし」

――いまはceroもそのあたりからの影響を受けてますよね。

別所「そうですよね、受けてますよね」

芹澤「なるほど。俺も別所と被ってるところはあるんだけど、やっぱ最近はコリー・ヘンリーかな。スナーキー・パピーで弾いたりしている鍵盤奏者で。この人の“Afro Brooklyn”っていう曲があるんだけど、リフがカッコ良すぎて、この間の〈BASSMENT SESSION〉で、俺がこの曲のリフでやりたいと言ったくらい」

コリー・ヘンリーの2014年作『First Step』収録曲“Afro Brooklyn” ライヴ映像

 

別所「なんか聴いたことあると思った(笑)」

――カッコイイですね!

芹澤「NYフィーリングとアフロ・ミュージックがこんなふうにマッチしてることはなかなかないから。俺、このタイトルだけ見て音源買ったからね(笑)。カッコイイに決まってるだろうと思って。俺はすっごいアフロに影響受けてるから」

――アフロ・ミュージックは何かきっかけだったんですか?

芹澤「俺らのミドルネームを付けてもらったくらいだから※トニー・アレンはもちろん、個人的にすごい好きでハマったのはアンティバラス。アンティバラスとは昔〈Organic Groove〉で共演して生で観て、やっぱりすごいなと。メッセージ性とかはよくわからないけど、音はすごい。洗練されたアフロ」

※スペアザのメンバーはそれぞれトニー・アレンが付けたミドルネームを持っており、芹澤は〈芹澤“REMI”優真〉である

アンティバラスの2012年のスタジオ・ライヴ映像

 

――別所さんはそのあたりは聴いてるんですか?

別所「あんまり聴いてきてないですね。だから芹澤さんに教えてもらったりして。例えばアフロビートだと、音楽的にちゃんと理解していないとできないと思うんですよ。そうじゃないとカッコ良くならない気がする」

芹澤「でもやってる人たちはきっとそんなに理解してないと思うよ。勘違いの繰り返しというか、レゲエはジャマイカ人がソウル・ミュージックをやりたくてやりはじめたら、なんかわからないけど裏打ちになっちゃった、みたいな。これが気持ちいいからいいやっていう感じ」

――アフロビートの場合だと、フェラ・クティがジェイムズ・ブラウンに影響を受けて、あのテイストを採り入れたオリジナルな音楽をやろうとして、ああなったわけですしね。

芹澤「そうなんだよね、そうやって自分なりにしちゃうところがカッコイイ。だから演奏してて物凄く楽なの」

――通じるところがあるからじゃないですか、そういう感覚的な……。

芹澤「そう、俺もアバウトだからそういう音楽とリンクする(笑)。別所みたいにちゃんとしてないから、そういうところ」

――ハハハハ(笑)、向き不向きがあるってことですね。

芹澤「そうそう。だから俺が別所に教えられるのはいい加減さだな(笑)。真剣にいい加減なフレーズを弾くんだよ」

別所「おもしろいっすね」

芹澤「自分がどう思われるかより、それが音楽として成立していればいいやっていう気持ち。自意識が高くないというか。自意識の高くないカッコイイ音楽が俺のめざすところかな。気高さのない音楽というか」

――逆に別所さんは?

別所「さっき言ったことと同じですが、ジャズの要素も自分を作り上げてきた大切な部分なのでそこを残しつつ、バンド・シーンにフィットする存在になれるといいなと」

芹澤「別所はそこを全うするしかないよね。後ろから付いてきてる人もいないでしょ」

別所「まだ付いてきてもらえるほどのものじゃないんで(苦笑)、ただその先駆者になりたいという気持ちはありますね。いままでのシーンに乗っかってもしょうがないから。自分らが作っていくシーンというのは必ずあると思うので、ジャンルレスに、ボーダーレスにいろんな人と繋がって、どの人とセッションしても成立するような存在でありたいです」

 

Yasei Collectiveニュー・シングル“radiotooth” リリース・パーティー

日程:2016年1月30日(土)
会場:東京・代官山UNIT
開場/開演:16:30/17:00
チケット:前売3,000円/当日4,000円
ライヴ:Yasei Collective/FULLAROMOR
DJ:社長(SOIL & "PIMP" SESSIONS)、仰木亮彦(在日ファンク)
オープニング・アクト:沖メイ(Za FeeDo)
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