〈音楽と生き物〉をテーマに、ミュージシャンの沖メイが思考を巡らせる連載〈サウンズ・オブ・クリーチャー〉。前回は特別編として、保護動物の譲渡活動を行うランコントレ・ミグノンの友森玲子さんと対談を行いました。
新型コロナウイルスの感染が拡大するなか、人々の日常や活動は変化を余儀なくされています。先日、沖も〈詩と声のワークショップ〉を、ビデオ会議サーヴィス〈Zoom〉を使って行ったとか。新しい試みには、新しい可能性が宿っているはず。
今回は、そんな非常時に〈「当たり前」なんてないんだ〉というモットーに立ち返った沖が、高校生の頃に経験した西表島でのキャンプと、その体験から生まれた音楽を振り返りました。まずは前編をお届けいたします。 *Mikiki編集部
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こうであるべき、とか、当たり前のことは実はひとつもない
春が巡ってきました。
みなさん、いかがお過ごしでしょうか。
私はというと、前回の連載以降、ソロ・プロジェクトを育て始めています。
今年の1月はソロ・ツアーで台湾に行ったり、Yasei Collectiveの結成10周年パーティーに出演したり、2月は久しぶりの東名阪ツアーをしたり、3月はオーストラリアから初来日したオウル・アイズ(Owl Eyes)の東京公演で演奏したり……。
最近はこんなメンバーで収録現場があったり、
山野楽器ロックイン新宿ドラム・フロアで展開中のドラム・ヘッドのオーダー・ペイント作業をしたりと、日々を過ごしていました。
そんな日々の中で昨日と今日、そして明日への移り変わりをこれほどしっかりと肌で感じる季節があったかな、と考えています。
当たり前であった日常や会話がとても大切に思えますよね。
〈当たり前〉というものは一つもないはずなのに、私たちはいつからそれを慣用化してしまうのでしょうか。
当たり前=ルーティンの幸せを改めて感じるこのタイミングに、私たちが日々どうやって生き、何を作り出してきたのか、今まで以上に問われている気がしてなりません。
私のモットーの中に〈こうであるべき、とか、当たり前のことは実はひとつもない〉というものがあります。
私がそう強く思ったきっかけは3つ。
1つ目は高校生のとき初めて訪れた西表島への旅。
2つ目は音楽。
3つ目は家族、人、そして生き物との関係性。
今回の連載は、そんな経験から考えたこと、学んだこと、そこから生まれた音楽、そして今感じることについて書いてみます。