洒脱なセンスでリスナーを魅了してきたふたりがある種の暴走をした結果……やっぱりスタイリッシュ、さらにはフレッシュな新作が完成!

 2015年でデビュー15周年を迎えたparis matchが11枚目となる新作『11』を完成させた。オリジナル・アルバムは実に3年ぶり。本作もソウルやジャズをベースとしたスタイリッシュなポップ・ミュージックを楽しむことのできる作品だが、これまでとは異なるモードも着実に見て取れる。今回は、その変化こそが重要だったようだ。

 「デビュー当初から〈目標はアルバムを10枚出すこと〉って言い続けていて、それが実現した前作で出し切った感があったんです。それで次の作品を出す気持ちになかなかなれなかったんですけど、今年に入って書いた“Killing you”がこれまでと手法もタイプも違う曲で、新しいものが表現できた。その時に〈アルバムを作れるな〉って思えたんです」(杉山洋介、トラックメイク)。

paris match 11 ビクター(2015)

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 その“Killing you”は徹頭徹尾クールなアシッド・ジャズだが、エレクトロ・ファンクな“ディストピア”や、90年代ハウス風の趣がある“電子音の叙情詩(リリック・ポエトリー)”など、ディープにグルーヴを追求した渋めの楽曲が並んでいる。元メンバーの古澤辰勲が手掛ける短編小説のような詞世界やジャケットも相まって、アダルト・オリエンテッドな世界を作り上げているのだ。

 「歌ものポップスとしてのわかりやすさをずっと意識してきたんですけど、今回はそういう枠組みを外して、何も規制せずに作ったんです」(杉山)。

 「デモの段階で〈音符がやたら飛ぶなあ〉とか、〈リズムが難しいなあ〉とか、〈メロディーなのかコーラスなのかわかんないなあ〉とか思う曲ばかりで。今回は洋介さんがチャレンジしているなと思いましたし、それを感じたであろう辰勲ちゃんが、さらにチャレンジングな歌詞を乗せてきて(笑)」(ミズノマリ、ヴォーカル)。

 とは言え、アグレッシヴな展開を見せる曲も、これまでにないエレクトロニックなサウンドをフィーチャーした曲もparis matchの世界にしっかり落とし込まれていて、そこにはミズノのノーブルな歌声が大きく貢献しているように思える。

 「すごい複雑なコード進行とか、ハチャメチャなアレンジの曲を作った時は〈大丈夫かな〉と思うんですけど、ミズノの声が乗ると上手くまとまるんですよね」(杉山)。

 メロウな“アーヴィング・ペンの花のように”など従来の彼ららしい楽曲も盛り込まれているが、「王道な曲はあえて後半に持ってきたんです。今回はチャレンジしているところを伝えたいので」(杉山)とのこと。今作は、大人の自由なフレッシュネスが吹き込まれた、ワクワクさせられる意欲作なのだ。

 「paris matchとしてカッコイイものが出来たし、また新たな第一歩になったと思います。難しい曲ばかりなので〈これをライヴでやるのか……〉って困るところもあるんですけど(笑)」(ミズノ)。

 


【paris match ライヴ情報】
2016年4月29日(金・祝)のミズノマリの誕生日に、shibuya duo MUSIC EXCHANGEにてプレミアム・ワンマン・ライヴが決定! 詳しくはオフィシャルページ〈www.coolism.com/parismatch/〉で!