昨年は初ソロ作を発表、この後にはインコグニートの新作も待機中……と、還暦を目前にしてなお旺盛なブルーイ。これはギタリストのジム・マレンと組むユニットの14年ぶりの新作で、ヴァレリー・エティエンヌをリードに据えつつインスト中心に熟達のフュージョンを聴かせる。テリー・キャリアーの追悼カヴァーも!
ワイルドじゃないチェリーの魅惑。『ippo』の時点で好事家を惹き付けていた6人組ではあるが、金澤寿和のプロデュースに新川博や山川恵津子も援護した今作ではライト&メロウなシティー・ソウルの魔法を手に入れている。ときめきを燦々と振り撒くジャケそのままに当世流のAORをしなやかに響かせる爽快作!
昨年は活動20周年記念ベストも出しているが、その前のオリジナル作がまた素晴らしい。昔から歌ってきた大人の世界が歌い手と完全に一体化して届けられる安心感は、積み重ねたキャリアと信頼があってこそ。シンプルにホーンやストリングスをあしらう河野伸のプロデューシングも歌の色気を優美で際立たせる。
【参考動画】古内東子の2011年作『透明』収録曲 “透明”
スタカンとカフェ・ミュージックのクロスオーヴァーというか、気取りすぎないポップ・グループとしての矜持を絶妙の匙加減で見せてきた彼らだが、この通算10作目ではあえてシティー・ポップ再考の時流に身体を預けている印象。フュージョンめかした意匠にもミズノのマチュアな美人声はよく映える。
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BTエキスプレスからスカイに至るまで、70~80年代のディスコ・ファンクに流行を刻んできたランディ・ミューラー御大の新プロジェクト。名うてのプレイヤーたちとEW&Fやブラス・コンストラクションを現行ブギーにアダプトしたようなグルーヴを具体化、ケニー・ドープのリミックスも良し!
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トム・サヴィアーノを中心に80年代に活動していたシティー・ファンク・バンドが20年以上ぶりに出した〈サード・アルバム〉。実態はトムが既発音源のマスターを元に内容をブラッシュアップし、未発表曲もプラスしてアルバムに仕上げたものだ。スキルフルな演奏にモダンな厚みも増して現行AORの好品に転生!
地元フィンランドのフュージョン・バンドでサックス奏者を務めるアンドレ・ソロンコのソロ・デビュー作。エレピを基軸にしたメロウ・グルーヴの揺らぎに、繊細で甘えるようなヴォーカルがソフトにまとわりつく最高の都市生活者ポップだ。北欧ノリの清涼感もあり、要所でのみサックスを挿入する手つきも完全な大人。
キリンジと同じくポスト渋谷系ジェネレーションの作り手だが、彼のユニークは90年代的な目線の対極にあるような〈洋楽ポップス〉への愛情をも併せ持っていることにある。この初のソロ・アルバムではそのあたりの表情もより率直に出ており、結果的にはブルーノ・マーズらとも歩みがシンクロしていて興味深い。
今年で始動から20周年を迎えたフリー・ソウルのムーヴメント。その前哨戦として久々に編まれたのがこちらのコンピで、2010年代のインディーR&Bやアンビエント・ポップから、ネオ・ソウルの麗しさやダブステップ以降のメロウネスを抽出。インターネット・ゲームから一歩引いた、大人目線のコンパイルが光る。
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3名の女性シンガーを擁するカナダの大所帯バンド。7インチの人気を受けて登場したこの初作は、ブギーからジャジーまで鮮やかなフィーリングを瑞々しい歌とグルーヴィーな演奏で紡ぎ出した、エヴァーグリーンにしてフリー・ソウルフルな出来映え。バックグラウンドなど関係なく流れてくるだけで心地良い佳盤。
キリンジとの縁でも知られるマエストロの謳った〈大人たちのファンタジー・テール〉は、奇を衒わず隅々まで作り込まれたアルバム・オリエンテッド・ポップ。原由子に椎名林檎、さかいゆう、横山剣を歌い手に配し、その4人で披露される“この世は不思議”を詞作した坂本慎太郎など、作詞家の人選も贅沢なポイント。
作品を重ねるたびに奥深さと濃密さを増していくトリオ。ストリングスの鮮烈なシティー・ソウル“A都市の秋”で粋な緊張感を放ち、柔らかなハーモニー・ポップの描く晴れ晴れした風景によって聴く者の心を解放するかのような出来映え。林静一のジャケがミスマッチかと思えばそうでもないのがおもしろい。
一昨年亡くなったフォーキー・ソウルマンのフリー・ソウル盤。もともと同名パーティーを始めるきっかけが“Ordinary Joe”だったそうで、監修者にとっても格別の意味を持つ一枚だろう。カデット以前の音源からトーキング・ラウド期、ポール・ウェラーやNujabesとの共演まで、偉人の輝きを自由に辿ってほしい。