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やくしまるえつこ
無二の才能を多面的に浮き彫りにする3作品が、まとめて到着したよ!
ソロ活動も継続して行い、ティカ・α名義ではももいろクローバーZや花澤香菜への楽曲提供も記憶に新しいやくしまるえつこ。彼女の関連作品が同時期にリリースされるので、ここでまとめて紹介しよう。
まず、相対性理論のニュー・アルバム『天声ジングル』は、ペンタトニック・スケールやディスコ的意匠といった過去のトレードマークを踏襲しながらも、〈その先〉へ歩みを進めている。マーク・ジュリアナに触発されたようなビートが刻まれたり、ヒップホップ風のトラックがあったり、特にリズム面での工夫が顕著だ。シンガー・ソングライター的な趣の強かった前作に比べ、バンド・サウンドが要となっているのも特徴だろう。特に、楽曲を立体的に見せる山口元輝のドラムと、ぶっとい音圧で圧倒する吉田匡のベースというリズム隊が頼もしい。
続いて、Yakushimaru Experiment名義で発表された『Flying Tentacles』は、即興・朗読・数字を扱う実験的なコンセプト・アルバム。オリジナル楽器であるdimtaktを操ってドラびでおや伊東篤宏と即興セッションを繰り広げたり、小説家である円城塔のテキストを朗読して重ねたりしており、やくしまるのアヴァンギャルド・サイドを照らし出す作品に仕上がっている。
そして、TVアニメ「美少女戦士セーラームーンCrystal」の〈デス・バスターズ編〉のオープニング・テーマ“ニュームーンに恋して”も、やくしまるが作詞/作曲/プロデュースと歌唱を担当。こちらはホーンやストリングスをフィーチャーした勇壮な曲調が印象的で、〈戦闘美少女〉について綴った歌詞もキャッチーだ。
色合いの異なる3作品がまとまって到着することで、やくしまるえつこというアーティストの多面性が浮き彫りになった格好と言えるだろう。