デザインの裏にある使いやすさ、美しさ、心地良さ、そして人

 工業デザイン、グラフィックデザイン、服飾デザイン、建築デザイン、照明デザイン。デザインの裏には、使いやすさ、美しさ、心地良さが隠れている。NHK Eテレで放送中の「デザインあ」は、身近なモノ・コトを分解し、もう一度組み立てる。それを、デザインの視点、上質な映像と音楽で表現した番組。上質な、というのは、シンプルで明確という点で特に秀逸。番組自体に美しさ、心地良さ、が隠れていてまさにデザインみたい。

佐藤卓,中村勇吾,コーネリアス デザインあ NHKエンタープライズ(2018)

 今回、放送7年間分の映像コンテンツから、人気のコーナーをセレクトし収録された初の映像集がリリース。〈つくる〉では身近なものがつくられていく過程を見つめるようにじっくり映し出す。どの映像も丁寧で美しい。コーネリアスが担当する音楽の演出が耳にも印象深い。〈もん〉は、日本に古くから伝わる〈紋(もん)〉のこと。円と線の組み合わせの妙。伝統的な描き方と完成された美しさに溜息がでる。〈うた〉のシリーズにはコーネリアスのほかLEO今井、チボマット、やくしまるえつこも。そして、祝福や祈りといった〈気持ち〉がどのように〈物〉に込められ、形になっているのかを、ラップとアニメーションで紹介する〈めでたい〉シリーズからは〈水引〉が収録。KAKATO(環ROY&鎮座DOPENESS)のラップがめでたさを演出する絶妙な組み合わせ、とてもいい。

 落語や折り紙、あやとり、紋や水引もそうだが、全編を通して日本の古くからある美しさが絶えない。〈つくる〉シリーズでは〈くし〉や〈おけ〉を作り上げる職人さんの姿。和菓子もでてくる。〈デザイン〉と言ってしまうとなかなか結びつかないかもしれないが、日本の文化には、〈デザイン〉の本質、使いやすさ、美しさ、心地良さがあふれているのがわかる。

 番組の紹介文に「デザインとは、人とモノ、人と人との関係を『より良くつなげる』ための観察・思索・行動のプロセスです」とある。プロセスか、これは人じゃなきゃ作り出せないし人じゃなきゃこなせない。この番組の裏にもプロセス。そしてそれに尽力する人が見えてくる。