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カミーラ・メザの旬な瞬間を捉えたスマッシュ・ヒット

 チリ出身の注目の女性ギタリスト/シンガーのカミーラ・メザの4作目。ブルーノート、ワーナー・ブラザースで幾多のビッグ・アーティストを手がけ、現在も精力的に若手の発掘を手がけているマット・ピアソンをプロデューサーに迎え、シャイ・マエストロ(p,key)、マット・ペンマン(b)、ケンドリック・スコット(ds)ら俊英達を擁したレギュラー・グループにゲストを迎え、サニー・サイドからリリースされた野心作だ。

CAMILA MEZA Traces Sunnyside Communications(2016)

 ポスト・カート・ローゼンウィンケル(g)の座をめぐって、多彩な才能が割拠しているコンテンポラリー・ジャズ・ギター・シーン。その中でも透明感溢れるヴォイスと、卓越した作曲能力、ウェス・モンゴメリー(g)、パット・メセニー(g)らを消化し、そのコンセプトを前進させたギター・プレイで、メザは大きな存在感を放っている。

 オープニングを飾るオリジナル曲《Para Volar》は、傷ついた小鳥を見つけ、再び飛べるように祈るストーリーだが、メザ自身のすべてから解き放たれて飛び立つ決意を表している。美しいギターのアドリブ・メロディ・ラインに、スキャットが寄り添う。 アルバムは、6曲のオリジナルと4曲のカヴァーで構成される。ベティ・カーター(vo)のヴァージョンにインスパイアされた、ジャヴァン(vo,g)の《Amazon Farewell》、チリのヌエヴァ・カシオン(新しい歌)の旗手の一人であったヴィクトル・ハラ(vo,g)の《Luchin》、ミュージカル作曲家のスティーヴン・ソンドハイムの《Greenfinch And Linnet Bird》、 ジョン・ブライオンが音楽を担当した映画 『脳内ニューヨーク』からの《Little Person》らも、メザの個性的なオリジナル曲と違和感なくブレンドされている。太古の昔、地殻変動によって裂かれた南北アメリカ大陸が、あたかもカミーラ・メザの音楽のよって再結合されたような、幻想を覚える。新世代のアーティストの、鮮やかなステートメントである。