COLUMN

BADBADNOTGOOD 『III』(1)

トロントのオルタナティヴなジャズ・トリオが、いよいよ初の一般流通作品を完成! 退屈なセグメントを飛び越える時代のサウンドスケールとは!?

BADBADNOTGOOD 『III』(1)

 悪くない音楽が数分の世界に切り取られて、無数に投げ出されている。ただただ耳を通り抜けていくそれらのなかで心に引っ掛かるというのは至難の業だと思う。いくら画期的であろうと、いくら高度な芸当だろうと、聴き手のハードルは本人たちも気付かないうちにどんどん上がっているから、たいていのものはノットバッドな評価に終わってしまうのかもしれない。で、バッドバッドノットグッド(BBNG)はここまで巧みに可能性を切り拓いてきた一握りの存在なのだ。

 ヒップホップジャズに影響を受けて結成された彼らのインストゥルメンタル作品は、スクエアなトラックと即興演奏の融合といった予想の圏内に佇むものではない。BBNGは、例えばエアヘッドロブ・マクアンドリュース)のようなダブステップ以降のアトモスフィアで前衛的な演奏を包み込み、あるいはタクシゲトのようなループの心地良さを真正直に織り成してもくる。自主盤で積み上げてきた支持が〈コーチェラ〉や〈グラストンベリー〉といった大舞台での経験を受けてさらに膨れ上がり、このたびのサード・アルバム『III』は初のオフィシャル作品としてリリースされることとなった。

BADBADNOTGOOD III Innovative Leisure/BEAT(2014)

 マシュー・タヴァレス(キーボード)、チェスター・ハンセン(ベース)、アレックス・ソウィンスキー(ドラムス)が出会ったのはトロントのカレッジ在学中だという。3人の共通点は、アプローチの自由さとスキルを兼ね備えたプレイヤーであり、同時にヒップホップへの愛を進行形で持ち合わせていたことだった。トリオは2011年に初作となる『BBNG』をリリース。それと並行して、オッド・フューチャー一派の楽曲を取り上げたミックステープで公開し、それを耳にしたタイラー・ザ・クリエイターとのセッションも実現することになる。LAアンダーグラウンドのシーンにカナダからの名前がコミットしてくる例は昔から多かったわけで、BBNGとLAインディー・ラップ最前線のリンクは必然だったのかもしれない。2012年、オリジナル曲も交えた『BBNG2』を披露する頃には業界内の評判もグッと肥大化しており、翌年にかけて彼らはRZA監修のサントラやアール・スウェットシャツダニー・ブラウンらの作品に参加していくことになる。

 満を持して登場した『III』は、沈黙で美しさを倍加した冒頭曲“Triangle”やアンビエントな感触の“Can't Leave The Night”を聴けばわかるように、ECMジャズランドなどに由来する耽美的なエクスペリメントをダブステップ以降のインディー・ダンスにも繋がる形で突き詰めていったもの。奥行きのある空間処理からは昨今のビート・シーンやインディー・ヒップホップに相通じる深みを嗅ぎ取ることができるだろう。さらなる可能性を前に、BBNGのグッドグッドな世界はまだ始まったばかりである。

 

▼バッドバッドノットグッドの参加作品を一部紹介

左から、“Fall In Love”を収録したコンピ『Digging The Blogosphere Vol.1 & 2』(Heavenly Sweetness)、2012年のサントラ『The Man With The Iron Fists』(Soul Temple)、アール・スウェットシャツの2013年作『Doris』(Odd Future/Columbia)、ダニー・ブラウンの2013年作『Old』(Fool's Gold)、JJ・ドゥームの2013年作『Key To The Kuffs(Butter Edition)』(Lex)

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