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俺にとってのスチュワート・ゼンダーが、ハマ・オカモトでいうミック・カーンなのかな(Hsu)

――では、今日はせっかく来ていただいたので、隼太くんの好きなベーシストの話も訊いてみたいなと。

ハマ「聞きたい、聞きたい」

Hsu「あんまりベースに詳しくない人からしたら、俺もハマくんもファンキー・ベースだけど、ルーツは違うんじゃないか、という話をこの間したよね」

ハマ「そうそう」

――隼太くんはジャコ・パストリアスが好きとおっしゃっていますが、ハマくんはまだジャコの良さがあまりわからないと。

※SANABAGUN.の連載〈SANABAGUNのSANABA談〉Vol.1より

ハマ「そうなんです、まだわからない」

Hsu「あ~……でもわからないよね」

一同「ハハハハハハ(笑)」

ハマ「でも好きなんだよね?」

Hsu「そうなんだけど、ジャコは俺のなかではちょっと特殊なの。プレイ自体に影響を受けたわけではなく、〈PUNK JAZZ〉というジャコの志や、人となりみたいなところで」

ジャコ・パストリアスの78年のライヴ映像
 

Hsu「プレイで言ったら俺はピノ・パラディーノが大好き。そこはハマくんと共通してるのかな」

ハマ「うん、そうだね」

★ピノ・パラディーノについてハマ氏が語っている本連載の記事はこちら

Hsu「ピノはグルーヴを参考にしているんだけど、ジャミロクワイの元ベーシスト、スチュワート・ゼンダーはそのスタイルを参考にしていて、もう一人、ジャズ・フュージョン寄りになるけどアドリアン・フェローという人。クッソ(弾くのが)速いんですけど(笑)、速いなかにもいろいろある。ちゃんと自分で(ベースで)歌っていながら速いという。だからフィジカル的に、楽器の面でも参考にしています。この5年くらいは基本的にこの3人のやり方を軸にしていて。たまにピノ寄りになりすぎたり、アドリアン・フェロー寄りになりすぎたりするけど」

ハマ「なるほどね」

Hsu「憧れの3人のプレイスタイルをその時々で使い分けるようなイメージ。スラップする時はスチュワート・ゼンダーっぽくしたり、ストップ・ビートというか、ツッカッツッカっていうビートの時はピノっぽく、速いパッセージやアドリブ的なことをする時はアドリアン・フェローっぽくしたり。そのどれでもない時はその3人の中間――つまりそれが自分になる。しかも全員白人だな。だから俺には黒人のルーツがあんまりないのかも」 

アドリアン・フェローのベース・ソロ映像まとめ
 

――ハマくんは……。

ハマ「あまり黒人・白人で見ることはないですが、僕だったら……これを言うとベタだけどレッチリフリーはやっぱり。〈PUNK JAZZ〉の発展形のような人ですよね」

Hsu「ジャコの影響を受けてると言っているよね」

ハマ「あとはロッコ(・プレスティアタワー・オブ・パワー)やミック・カーンジャパンほか)かな」

★ハマ氏がミック・カーンについて語った、いまや本連載の神回となっている記事はこちら

Hsu「そのミック・カーンって人、俺知らない!」

ハマ「ジャパンというバンドにいた人で、もう亡くなってしまっているけど」

Hsu「どういうベースを使っている人なの?」

ハマ「Walのフレットレスで……(と動画を検索しはじめる)ファンクがどう、というところとは関係なく好きなんだよね。いわゆる音楽的な知識もなくベースを弾いていた人だから、音の置き方なんかが独特で」

※ウォル:エレクトリック・ベースのブランド

Hsu「逆に俺はそういう人のほうが好きかも」

ジャパンの80年のパフォーマンス映像
 

ハマ「(冒頭の、ミックがただ立っているだけで)もうすでに好き(笑)」

一同「ハハハハハ」

Hsu「なるほどね(笑)。なんかフラフラしてるし」

ハマ「この揺れが……。イントロが始まるやいなや、もう前に出てくる」

Hsu「(ミックがベース弾きはじめると)あー! ヤバイね! めちゃくちゃカッコイイ! こう言っちゃなんだけど、(ハマくんに)似てるよ!!」

ハマ「すごく好きなんだよね。僕のなかではかなり大きな存在」

Hsu「(大興奮で)わー、めっちゃ似てる! この人かー!!」

一同「アハハハハ(笑)」

――似てるというのは、この佇まいが?

Hsu「フレーズも。(0’38秒~0’39秒頃)これこれ! こういうのハマ・オカモトやるじゃん!」

OKAMOTO’Sの2012年のシングル“青い天国”。ちょっと前のものですが、なんとなくハマくんがミック・カーンに似てるという感じが伝わるでしょうか
 

ハマ「ハハハ(笑)。解釈が本当にすごくて、〈この人は何小節後にこのフレーズを終わらせる気なんだろう〉ということがよくある」

Hsu「俺は(音楽理論を)学んじゃったから、こういうベースがめちゃくちゃカッコ良く感じるんだよね。これは感覚じゃないとできないことだから。俺のなかでのスチュワート・ゼンダーが、ハマ・オカモトでいうミック・カーンなんだろうね。なるほど!」