俺にとってのスチュワート・ゼンダーが、ハマ・オカモトでいうミック・カーンなのかな(Hsu)
――では、今日はせっかく来ていただいたので、隼太くんの好きなベーシストの話も訊いてみたいなと。
ハマ「聞きたい、聞きたい」
Hsu「あんまりベースに詳しくない人からしたら、俺もハマくんもファンキー・ベースだけど、ルーツは違うんじゃないか、という話をこの間したよね」
ハマ「そうそう」
――隼太くんはジャコ・パストリアスが好きとおっしゃっています※が、ハマくんはまだジャコの良さがあまりわからないと。
※SANABAGUN.の連載〈SANABAGUNのSANABA談〉Vol.1より
ハマ「そうなんです、まだわからない」
Hsu「あ~……でもわからないよね」
一同「ハハハハハハ(笑)」
ハマ「でも好きなんだよね?」
Hsu「そうなんだけど、ジャコは俺のなかではちょっと特殊なの。プレイ自体に影響を受けたわけではなく、〈PUNK JAZZ〉というジャコの志や、人となりみたいなところで」
Hsu「プレイで言ったら俺はピノ・パラディーノが大好き。そこはハマくんと共通してるのかな」
ハマ「うん、そうだね」
★ピノ・パラディーノについてハマ氏が語っている本連載の記事はこちら
Hsu「ピノはグルーヴを参考にしているんだけど、ジャミロクワイの元ベーシスト、スチュワート・ゼンダーはそのスタイルを参考にしていて、もう一人、ジャズ・フュージョン寄りになるけどアドリアン・フェローという人。クッソ(弾くのが)速いんですけど(笑)、速いなかにもいろいろある。ちゃんと自分で(ベースで)歌っていながら速いという。だからフィジカル的に、楽器の面でも参考にしています。この5年くらいは基本的にこの3人のやり方を軸にしていて。たまにピノ寄りになりすぎたり、アドリアン・フェロー寄りになりすぎたりするけど」
ハマ「なるほどね」
Hsu「憧れの3人のプレイスタイルをその時々で使い分けるようなイメージ。スラップする時はスチュワート・ゼンダーっぽくしたり、ストップ・ビートというか、ツッカッツッカっていうビートの時はピノっぽく、速いパッセージやアドリブ的なことをする時はアドリアン・フェローっぽくしたり。そのどれでもない時はその3人の中間――つまりそれが自分になる。しかも全員白人だな。だから俺には黒人のルーツがあんまりないのかも」
――ハマくんは……。
ハマ「あまり黒人・白人で見ることはないですが、僕だったら……これを言うとベタだけどレッチリのフリーはやっぱり。〈PUNK JAZZ〉の発展形のような人ですよね」
Hsu「ジャコの影響を受けてると言っているよね」
ハマ「あとはロッコ(・プレスティア:タワー・オブ・パワー)やミック・カーン(ジャパンほか)かな」
★ハマ氏がミック・カーンについて語った、いまや本連載の神回となっている記事はこちら
Hsu「そのミック・カーンって人、俺知らない!」
ハマ「ジャパンというバンドにいた人で、もう亡くなってしまっているけど」
Hsu「どういうベースを使っている人なの?」
ハマ「Wal※のフレットレスで……(と動画を検索しはじめる)ファンクがどう、というところとは関係なく好きなんだよね。いわゆる音楽的な知識もなくベースを弾いていた人だから、音の置き方なんかが独特で」
※ウォル:エレクトリック・ベースのブランド
Hsu「逆に俺はそういう人のほうが好きかも」
ハマ「(冒頭の、ミックがただ立っているだけで)もうすでに好き(笑)」
一同「ハハハハハ」
Hsu「なるほどね(笑)。なんかフラフラしてるし」
ハマ「この揺れが……。イントロが始まるやいなや、もう前に出てくる」
Hsu「(ミックがベース弾きはじめると)あー! ヤバイね! めちゃくちゃカッコイイ! こう言っちゃなんだけど、(ハマくんに)似てるよ!!」
ハマ「すごく好きなんだよね。僕のなかではかなり大きな存在」
Hsu「(大興奮で)わー、めっちゃ似てる! この人かー!!」
一同「アハハハハ(笑)」
――似てるというのは、この佇まいが?
Hsu「フレーズも。(0’38秒~0’39秒頃)これこれ! こういうのハマ・オカモトやるじゃん!」
ハマ「ハハハ(笑)。解釈が本当にすごくて、〈この人は何小節後にこのフレーズを終わらせる気なんだろう〉ということがよくある」
Hsu「俺は(音楽理論を)学んじゃったから、こういうベースがめちゃくちゃカッコ良く感じるんだよね。これは感覚じゃないとできないことだから。俺のなかでのスチュワート・ゼンダーが、ハマ・オカモトでいうミック・カーンなんだろうね。なるほど!」