インタビュー

ネーメを父に持つ指揮者クリスチャン・ヤルヴィ(Kristjan Järvi)、過去と今を繋いで音楽の世界をユナイトする攻め姿勢とは

Photo by Takuo Sato

北へ、南へ、そして、パラドキシカルな現在へ

 アルヴォ・ペルトとスティーヴ・ライヒ――自身交流の深い偉才の組み合わせで都響の5月定期を沸かせたクリスチャン・ヤルヴィ。ペルトは父ネーメのエストニア時代からの同僚、7歳で渡米したクリスチャンにとってミニマル・ミュージックは本土でもある。だが、翌日会った43歳の風雲児は「ライヒもペルトも、カンチェリも、グラスもほぼ80歳。新しくなんてない」と言い、MDRライプツィヒ放送交響楽団の新シーズンについて熱弁を振るった。首席指揮者3年目の昨シーズン(「雪娘」を含む)が全体を“Go North”、今季は“Go South”と称するが、次なるシーズンも攻めの姿勢を強める。「3つのフェスティヴァルの最初が“Regular Crisis”。パラドキシカルだが、いまの経済は通常危機的だ」とほくそ笑む。マリナ・ランディナの映像と、アンドリーセン、ブライス・デズナーやヤルヴィ自身の音楽による新しいマルチメディア・カンタータの名だという。同作をプロコフィエフの「ロミオとジュリエット」と組み合わせ、ライヒ80歳の誕生日にフェスティヴァルを始めて、デズナーやマックス・リヒターの作品まで採り上げる。続く“Ideal Chaos”は、フィリップ・グラスからジョニー・グリーンウッドまで。“Practical Spirituality”は、ジョン・アダムズからスヴェン・ヘルビグへと進む。

 「父がペルトの交響曲第3番を初演した年に私は生まれた。新しい音楽ではないが、そこから私は始まった。だから、デズナーやグリーンウッドへとブリッジを架けるんだ。私はすべてが統合されたミュージック・ランドケイプについての話をしている」

KRISTJAN JÄRVI, MDR LEIPZIG RADIO SYMPHONY ORCHESTRA, MDR LEIPZIG RADIO CHOIR, VSEVOLOD GRIVNOV, ANNELY PEEBO 『チャイコフスキー:劇付随音楽「雪娘」作品12』 Sony Classical(2016)

KRISTJAN JÄRVI, GSTAAD FESTIVAL ORCHESTRA 『チャイコフスキー:バレエ音楽「白鳥の湖」組曲(K.ヤルヴィ編)』 Sony Classical(2016)

 彼が指揮すると、ペルトやグラスには過去が響くし、ロマン派の作品は随所に現代を予見させる。「どんな音楽を採り上げようと、私の今日の理解で演奏することだ。だから、チャイコフスキーの『雪娘』を録音した。『白鳥の湖』は考え得る史上最高の音楽なのに、小さな舞曲の組曲でしか知られていないので、自分でチャイコフスキーの新しいドラマティック・シンフォニーのように仕立て、68分で音楽の全容がわかるようにした。いまは時代がクイックだからね(笑)。この曲には実際ミニマル・ミュージックの要素も存在する。私は音楽の世界をユナイトしたいんだ。ナイーヴな理想主義者だとよく言われるが、チャイコフスキーだって、ベルオーズやシューマン、ワーグナーだってそうだった(笑)。バルティック・シー・フィルハーモニックを創設したのも、私たちの時代のオーケストラのモデルをつくりたかったからだ。そこで広めたいメッセージは〈ヘイ、目を覚まそうぜ! ひとつになろう。協働しよう、始終争うのではなく〉ってことだよ」

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