〈耳ひとつリードする〉ポップかつ遊びゴコロに富んだ楽曲で、ガール・ポップ界隈をFree & Easyに駆け抜けてきた星野みちる。そんな彼女がニュー・シングル“Love Me Again feat. ikkubaru”を届け、2016年夏のクラクションを鳴らした。同曲は、日本でも人気の高いインドネシアの4ピース・バンド、イックバルが2014年に発表したアルバム『Amusement Park』収録曲の日本語カヴァーで、演奏はイックバル自身によるもの。山下達郎や角松敏生など、緻密なスタジオ・ワークから洗練されたポップスを生み出していく日本のアーティストに影響を受ける彼らとの、〈聴いてみたかった〉共演を実現させたものだ。カップリングにはシンガー・ソングライター、矢舟テツローの楽曲をスウィンギーに衣替えした“しっぽのブルース”を収録している。
星野みちるの新たな魅力も垣間見ることができる“Love Me Again feat. ikkubaru”は、単なるカヴァー・シングルでは終わらない出来映え!――というところで、今回は2012年から〈星野みちる再生〉を手掛けてきたプロデューサーのはせはじむを交え、どうでもいいような雑談も含めつつ、彼女の近況と新シングルについて伺った。
〈100年前からこの歌を歌っています〉みたいな顔して歌ってくれる(はせ)
――新しい作品の話を伺う前に、せっかくお2人がお揃いになったので、まずはこのところの星野みちるはどうなの?みたいなところから話しはじめましょうか。えー、5月に“ディスコティークに連れてって”のシングルが出て……。
はせはじむ「久しぶりのシングルだったよね」
星野みちる「待ち遠しかったです」
――ライヴはコンスタントにやられていましたけど、やはり作品が出てホッとしたところはありました?
みちる「ホッとしました。昨年は4か月連続で出したので……」
はせ「それは2年前の話だね(笑)」
みちる「あっ……(笑)。去年も結構出していたので※、今年は全然出てないとドキドキしていました」
※シングル4枚、アルバム1枚をリリース
――『YOU LOVE ME』(2015年)のアナログ盤が2月に出たぐらいでしたからね。
みちる「はい、良かったです」
はせ「リリース・タイミングがそれほど遅れてるわけじゃないんですけどね。普通に考えれば半年に一遍出せれば上等なんだけど、みちるちゃんの場合は2、3か月のスパンでどんどん出していたので、半年出てないと〈みんな私になんてもう興味ないんだ〉と結構ネガティヴになるみたいなんですよ(笑)」
みちる「そうなんですよね。もう期限切れかなって(笑)」
――期限って何の期限ですか?
みちる「賞味期限(笑)」
――歌い手としての期限は未知でしょうから、心配してるのはたぶん……。
みちる「ヴィジュアル」
はせ「ヴィジュアルというのも、ねぇ(笑)」
――そこが売りというわけじゃない……っていうのもアレですけど(笑)、はせさんは以前、昔よりいまのほうが綺麗になってると言っていましたよね?
はせ「AKB48の時が〈底〉だったもんね(笑)」
みちる「人生最高にブスでした」
はせ「どの年齢でピークが来るかというのもあるじゃないですか。小学生の時にモテてた男の子は、同窓会で会ったりすると大抵クズになってたりするでしょ(笑)?」
みちる「うんうん。〈昔あんなにモテてたのに、どうしちゃったんだろうね?〉って、女の子とこそこそ話したりしました。最初誰だかわかんなくて」
はせ「みちるちゃんはその逆だから」
――同窓会で久々に会って、男性陣が予期せぬときめきを覚えるタイプですね。
みちる「でも話が全然合わないです。会社の話とか、そういうのはまったくわからないから」
はせ「だってみちるちゃんは10時に起きて、早く起きすぎたからと二度寝して、また起きて『ミヤネ屋』観て、プラ板工作していたらお母さんが帰ってきてご飯作ってくれて。お父さんが帰ってきたら〈みちる、そろそろ寝なさい〉と言われるって。もう11時間ぐらいしか起きてないんじゃないかなという生活を送っているから、そりゃあ合わないでしょう(笑)」
みちる「でも最近夜更かしになってきました。夜眠れなくて」
はせ「それは寝すぎてるからじゃない(笑)?」
みちる「夜中の3時ぐらいまで平気で起きていて……困ってるんです」
――でも、朝は10時まで寝てるんですよね?
みちる「はい」
――しっかり7時間ぐらいは寝られてるじゃないですか(笑)。
はせ「ですよね」
みちる「でも寝不足なんです。深夜のTV番組が楽しくて」
はせ「主にTVを観てるんだね(笑)」
みちる「詞を書いたりすることもありますよ」
――うんうん。最近書いている詞は、何か進歩が見られたりしますか?
みちる「う~ん……変わらないですね。変わりました?」
はせ「寄せてきている感じがする。格好つけなきゃとか、そういったことを考えて書いているんじゃないかなと」
みちる「それは全然ないです」
――そもそもシンガー・ソングライターとしてご自身で作詞もしていたみちるさんですけど、近作では割合が減ってますよね※?
※2013年のファースト・アルバム『星がみちる』では4曲、『YOU LOVE ME』でははせとの共作で1曲
はせ「〈良い歌詞が出来たら使うから、ちょくちょく書いてね〉と言っているんですけど、伝えたいことがひとつもないらしいんです(笑)。空っぽ……というのも、良さのひとつなんですけどね」
みちる「聴いている人を元気付けようとか〈日本ガンバレ!〉とか、応援ソングみたいなのは……」
はせ「まずは自分ががんばらなきゃってところがあるからね(笑)。他人を応援している場合ではないもんね」
みちる「そうですね(笑)」
はせ「〈別にメッセージ性なんてなくてもいいから、みちるちゃんが思ったことを書けばいいじゃん〉と言って書いてきたものを見ると、思っていることの幅が極端に狭かったりする(笑)」
みちる「それで(歌詞を)差し換えられる」
はせ「言語感覚がおもしろいから、それをそのまま歌詞にしてくれたらなと思うんですけど、歌詞になると急に〈君と僕が出会った〉みたいなくだらないことを書き出して、〈そうじゃなくて〉と言っても、何だかんだで〈君が好きだ〉などと」
――中二病的な。
はせ「まさに」
みちる「それは随分ですよぉ」
はせ「淡い恋に対する憧れが強いのかなんだか……」
みちる「そうなんですかね」
――はせさんの歌詞が素晴らしいので、もしかするとそれで安心しきってるというか、ここは甘えていいところなんだと思っているところがあるんですかね? 実際のところ、歌詞を書く割合が減ったからといって、そこがマイナスになっているような要素は作品から感じさせてないですし。
みちる「ああ、甘えてるなあと思います。がんばってますけどね」
はせ「たぶん男の人目線の女の子の歌は書きやすいと思うんですよね。やっぱりみちるちゃんを〈誰か〉に投影するわけだから、投影される側よりも投影する側の性のほうがイメージが膨らむというか。こんな彼女がいたらなとか、こういう子がこういったことを言ったらなと、あくまで全部フィクションなんだけど。でも彼女はパフォーマンスで、そのフィクションにリアリティーを与えますからね。〈100年前からこの歌を歌っています〉みたいな顔して歌ってくれる。まるで自分が書いたかのように(笑)」
みちる「あたりまえじゃないですか」
はせ「まぁ、たまに2番を3回歌ったりすることもあるけどね」
みちる「間違えちゃう(笑)」
はせ「ストーリーを立てて書いている歌詞もあるから、1番と2番がひっくり返ると意味が通じなくなっちゃうからね。でもそこは、みちるちゃんのチャームで押し切ってくれているけど」
みちる「すみません(ペコリ)」
このままピョン!って行けたら嬉しい(みちる)
――そういえば、最近は地方のイヴェントに呼ばれる機会が多くなりましたよね。
みちる「この間も青森に行ってきました。それはもうはせさんの人徳もあって」
はせ「クラブ界隈というか、夜の世界の人たちというのは基本的に日陰者だから、みちるちゃんみたいに〈陽〉な人を呼ぶことはあまりなかったと思うんですけど、いろいろと架け橋になるようなトピックもあって、最近は〈呼んでもいいんだ〉みたいな感じになってますよね。音的にも、みちるちゃんはアナログを切っているから親和性があるし、やっと開眼してくれたというか。それまではジャズやファンク、弾き語りとか、わかりやすくカッコイイものであれば声が掛かりやすかったんですけど、みちるちゃんの場合はカッコイイというより、可愛くておもしろい。だから、お客さんが多くても少なくても鉄板で盛り上がるんですよ」
みちる「すごく楽しいです」
はせ「その場にいる人がみんなファンになってくれるのが実感としてわかるので、その証拠ではないですけど、ホントに物販が売れる。その日の思い出を形に変える、みたいな」
みちる「ペンライトとかも売れるんですよ」
――それは良いことですね。
はせ「それで集まるのがまた、地方の音楽的な猛者というかね。いろいろ知って夜遊びしてる人たちが、最終的には〈みちるちゃーん!〉みたいな感じになって、〈レコードにサインください〉と言ってくる(笑)」
みちる「ちゃんと物販に並んでくれるんです。それで、私を応援しに東京から足を運んでくれている方と地元のお客さんが交わるんですけど、どこに行っても〈みちるちゃんのファンの人は優しいんだね〉と言われます」
はせ「ね。ほかのアイドルの現場はよく知らないんですけど、毎回地方まで来てくれるお客さんがいて、そういった方はクラブ系の人間からしてみれば、水と油とまで言わずとも生息域が違うと思うんですよ。だけど、みちるちゃんを応援するということできちっと混ざるんですよね。クラブ側の人間が〈いやあ、みちるさんのファンはみんなイイ人で、ジェントル。電話番号交換しましたよ〉なんていうのもある。それがおもしろくて」
みちる「(東京のファンが)地方のお客さんに手拍子とかを教えていたり、テキーラ呑まされてベロベロにさせられたり」
――交流してますねえ。まあ、長らく応援してきたファンの方は、みちるちゃんを応援してくれる人たちとなれば、オープンになりますよね。
はせ「オープンマインドな人たちだから、もう僕のイヴェントにも単体で来たりするんですよ。〈はせさん、DJ上手いですね〉と(笑)」
――みちるちゃんが出ているわけじゃなくても?
はせ「そう。それでこっちも嬉しくなるから、〈まあ呑め呑め〉と言って呑ませて(笑)」
――素晴らしいですね。
はせ「みちるちゃんのご人徳だと思います」
――ですね。そういう相も出ていると思います。ちなみに、何か運勢とかを見てもらったことはあります?
みちる「ありますよ。年末にいつも知り合いの占い師の方に見てもらうんですけど、今年は〈遊べば遊ぶほど仕事が上手くいくから、遊んだほうがいいですよ〉と言われたんです……けど、全然遊んでない(笑)」
はせ「外に出て行ったほうが良いということだろうね」
みちる「でも全然遊んでない」
――遊びではないですけど、地方に行くことも外に出て行くという意味では適っていますよね。
はせ「そうですね」
みちる「その占いでは、〈来年は遊ぶ暇がなくなるから〉と言われて」
はせ「おおっ!」
――おおっ! 何があって暇がなくなるなるんでしょうね。
はせ「バイト(笑)?」
みちる「いや、仕事で(笑)」
はせ「だよね」
みちる「だけど、前の年に占ってもらった時も、来年はすごく運勢が良いからと言われたんです。それで去年はすごく良かったんですよ、自分的には」
はせ「遊ぶ暇がなくなるぐらい忙しかったら、それは素晴らしい」
――気が早いですけど、はせさん的には今後彼女にどうなっていってもらいたいですか?
はせ「とにかく売れてほしい。あと、変わらないでほしいですねぇ」
――変わらないままで売れるのは難しいことですね。
はせ「ホントそう。でもね、みちるちゃんはもともと世間がこうだから、と迎合したりしない人だと思うんですよ。だって〈もっと歌いたい〉と言ってAKBも辞めちゃうし。打算が働いて辞めないという手もあっただろうけど、そこは非常に男っぽいなと。あと、物作りのことで話をしていても突っぱねるところは突っぱねるし、この路線でやりましょうとなれば腹を決めてやってくれる人だしね。このままの感じで売れてくれることが、僕たちにとっていちばんストレスのない成功の道ですね。グレードアップしなきゃいけないところはあるんだけど、本筋は変えないまま、このテンションのままTVに出たらホントにおもしろいと思う」
みちる「声、通りますかね。視聴者まで(笑)」
はせ「マイクというものがあるから大丈夫(笑)。だからまぁ、芸能界用とかTV用、メジャー用という装備を付けない、このままの彼女をラジオやTVを通して多くの人に知ってもらうことがいちばん幸せですね」
みちる「いまはストレスなく活動できているので、このままピョン!って行けたら嬉しい」
はせ「いまはみんな良いことや前向きなことをたくさん言いがちじゃないですか。でもみちるちゃんは、イヤなことや後ろ向きなことをおもしろく話す才能がすごいんですよ。あと、正直。正直に見せる能力に長けてる」
――腹の中でどう思ってるかわからなくても……ですね。
はせ「まあ、ホントは防火扉5枚ぐらい備えてますからね」
みちる「いや正直です、正直(笑)」
みちるちゃんのカヴァーの選曲はいつも慎重に(はせ)
――ハハハ(笑)。さて、先立ってリリースされたシングル“Love Me Again”ですけど、まず、イックバルとはどういう繋がりで?
みちる「1年ぐらい前、イックバルが初めて日本でライヴをするという時に福岡の凡人会議※のイヴェントで共演して。それからですね」
※福岡のAM局、RKBラジオのレギュラー・プログラム「ドリンクバー凡人会議」
はせ「その時みんなで一緒に歌ったんだよね」
みちる「そうです。一緒にシュガー・ベイブの“DOWN TOWN”(75年作『SONGS』収録)を歌いました」
はせ「イックバルのメンバーもみちるちゃんの曲を気に入ってくれてね」
みちる「今回の制作ではデータのやりとりだけだったので会えてはいないんですけど」
ディレクター「仮歌を入れた段階でイックバルのメンバーに聴かせたら、〈みちるちゃんのために生まれてきたような曲だ〉と喜んでいましたよ」
はせ「そういえば今年来日した時に、片言の日本語で〈もなりちゃん※かわいい〉と言っていたね」
※元Especiaの脇田もなり
みちる「〈もなりちゃん大好き〉って」
はせ「みちるちゃんが横にいるのにね(笑)」
――ハハハ(笑)。それはともかく、今回の曲は単なるカヴァーではなく、歌い手としての星野みちるをさらにステップアップさせた曲だと思うんです。はせさんやマイクロスターの佐藤(清喜)さんがこれまでに書いたものにはないタイプの曲だし、それだけに難しい曲でもあったかと。ひとつ高いハードルをクリアして、また違った魅力が引き出されたんじゃないでしょうか。
みちる「メロディーの感じも違いますしね。もともとオリジナルも素敵だなぁと聴いていましたし、ハーモニーが特に素敵なので、そこをすごくがんばりました」
はせ「演奏はイックバルなので、オリジナルとの違いはみちるちゃんのヴォーカルだけで。キーは変えていても、イックバルがあの完成度でオケを弾いているということは、みちるちゃんの歌が聴かせどころなんですよね。だから、ニュアンスの入れ方とか、抑揚の付け方を何回かやりとりしたけど、悩んでいたもんね」
みちる「はい。すごく難しかったです」
はせ「難しかったって言う時ほど、結構イイ感じになるんですよ」
――難しい課題を何事もなかったかのようにクリアしてくるという。
はせ「応えますねぇ」
みちる「恐縮です(笑)。“Love Me Again”は、〈すごく大人っぽい曲だね〉とお客さんからもよく言われます」
はせ「良かったねぇ。やっぱり、〈イックバルのオリジナルと比べて……〉とは絶対言われるものだから。そういった意味ではすごく過敏になるというか、〈これで良いのかな?〉と思っていましたけど、結果的には吉のほうへ転がったと思います。〈彼女の歌みたいだね〉とイックバル周辺の人たちにも誉めてもらったので嬉しかったですよ」
みちる「嬉しかった」
――今回はB面もカヴァーですよね。“しっぽのブルース”は、はせさんの提案ですか?
はせ「彼女がこの曲を好きだと言っていたんですよ。それで矢舟くんを呼んで1回ライヴでやっているんですよね。その時に非常にハマったので、レコーディングをしたいねと」
みちる「この曲、可愛くて好きなんです。これもまた矢舟さんの原曲が素敵なので、難しかった。ちょっとテンポを落としてるんですけどね」
はせ「カヴァーは安易に考えればいくらでも思いつくんですけど、みちるちゃんの場合はみんなで相談しながら慎重にやってるんです。何回も言うようですけど、オリジナルがあるものですからね。それと方向性がまったく違えばやりようはあるけど、今回みたいに同路線で攻めるのであればオリジナルを上回るとか、華を付けなきゃいけないし。〈オリジナルのほうがいい〉と言われないためにはどうしたらいいかというのは、みちるちゃんもだいぶ考えたと思う」
――これまでにカヴァーも何曲かやっていますけど、基本的には本人が何も考えずに気持ち良く歌入れできるという曲はやってないですよね。
はせ「はい」
みちる「ないですね。“ずっと一緒さ”(“ディスコティークに連れてって”のカップリング)の時も、山下達郎さんを歌うのかとびっくりしましたし」
はせ「あの時は何回もやり直したし、すごく悩んでいたもんね。達郎さんは引力が強すぎるから、どうしてもうっすらニュアンスが入ってきちゃう」
――あぁ、何かわかります。ところで、この夏はどんなご予定ですか?
みちる「実はもう次の作品の制作に入っていて……そんな夏になりそうです」
はせ「そうなんですよ。そろそろ歌入れをしようかというところで」
みちる「あまり時間がないんです(笑)」
――レコーディング三昧で、夏の楽しみが奪われましたね。というか、そもそも夏をエンジョイするタイプでは……ない?
みちる「はい。すぐ熱中症みたいになっちゃうので」
はせ「みちるちゃんは、水着に関してのトラウマがあるみたいなんですよ」
みちる「トラウマはないけど、水着はイヤですね。昔は友達とよく海に行っていましたけど、AKBを辞める時、〈次のシングルは選抜とかがなくて全員が歌える曲だから、それやってから辞めたほうがいいんじゃない〉と言われたんですけど、ミュージック・ビデオを水着で撮るとわかって※、〈じゃあ辞めます〉って(笑)」
※後日編集部が確認したところ、これは星野の勘違いで、砂浜のロケではあったが水着の撮影はなかった
はせ「背中一面に刺青彫ってるから、見られるのがイヤだったんだよね?」
みちる「いや、ないですけど(笑)。水着には抵抗があります。抵抗なく水着が着られる人は羨ましいですね。カッコイイ」
――すぐに熱中症にもなっちゃうし、夏はもっぱら家の中ですか。
はせ「花火大会とかに行ったりしないの?」
みちる「大好きです」
はせ「それはアリなんだ。でもさ、あんなに人がウジャウジャいて、熱帯夜のなかでちょっと人に触れると汗がヌルッとして、蚊もいるし……。クーラーの効いた部屋で遠目に見るのはいいけどね」
みちる「あっ、私もそれで十分です」
はせ「でしょ」
みちる「現地に行ったこともありましたよ。でも、浴衣が涼しいと思ったら全然涼しくなくて」
はせ「だよね」
みちる「だから全部終わる前に、電車も混むからと言って帰っちゃう。そういえば昔、〈花火より綺麗だよ〉と言ってくれた人がいました(笑)」
はせ「おーっ(笑)。キュンとした?」
みちる「〈ええっ?〉って。〈花火と比べるというのはどういうことだろう〉と」
はせ「〈花火の綺麗さと人間の綺麗さは違うものだろう〉ということね。それで何て答えたの?」
みちる「〈はいはい〉って(笑)」