インタビュー

星野みちる、多彩なアレンジで自身のポテンシャル広げたカヴァー集『My Favourite Songs』を語る

星野みちる、多彩なアレンジで自身のポテンシャル広げたカヴァー集『My Favourite Songs』を語る

星野みちるのカヴァー・アルバムで今年の秋はモア・ベターよ!

 2012年から彼女を〈再生〉させてきたプロデューサーのはせはじむ佐藤清喜microstar)、小西康陽高浪慶太郎奥田健介NONA REEVES)、松尾宗能ドリンクバー凡人会議)ら遊び心を知る〈音のプレイボーイ〉たちが託した輝かしい楽曲たちによってディスコグラフィーを満たしてきた星野みちるが、カヴァー・アルバム『My Favourite Songs』を届けた。

 「以前にもカヴァー・アルバムを出したことがあったんですけど、そのときはピアノとアコースティック・ギターとパーカッションだけのアコースティック・ヴァージョンでやってたんです。当時やっていたラジオ番組で毎週弾き語りをしていたので、その延長みたいな感じで、自分でも選曲してました」。

2015年作『YOU LOVE ME』のトレイラー映像
 

 そんな前回とはもちろん趣向も大きく変わり、まず、選曲はほぼプロデューサーのはせはじむが担当。「バラードがすごく好き」と言う彼女の趣味をあえて逆にとったのか、それこそシングル“ディスコティークに連れてって”のカップリングとして発表済みの“ずっと一緒さ”(オリジナルは山下達郎)が元のバラードから新井俊哉冗談伯爵)の手によってソウルフルなミディアムに置き換えられていたりするなど、彼女が好む、彼女が無難に歌いこなせるであろうバラードはナシ。そこはコピーではなく〈カヴァー〉という意味を十二分に考慮したうえで、いずれも原曲から良い塩梅で衣替えしたアレンジを聴かせている。お手本があってないようなところから進めることで、星野みちるというシンガーのポテンシャルをさらに高め、それこそカヴァー曲を自身のオリジナル楽曲のように操ってもらいたい、いや、操ってくれるはずという期待と信頼が込められたもの――と、楽曲を聴いて感じることができるだろう。

 「アレンジが変わったものを聴かされたときに〈これ、オリジナルとぜんぜん違うんだけど?〉ってすごく違和感があって気持ち悪かったんですけど(笑)、出来上がってきて、歌い込んでいくうちに慣れていって、いまは気持ち悪くなくなりました(笑)」。

星野みちる My Favourite Songs HIGH CONTRAST/ヴィヴィド(2016)

 相変わらず天然な答えを返してくれる彼女だが、そんな彼女が今作で逞しく挑んだカヴァー曲は、一昨年の秋に7インチとしてライヴ会場限定で発表され、一瞬にしてプレミア化したAKB48“恋するフォーチュンクッキー”(7インチとは別ヴァージョン)、松尾清憲とのコラボ盤収録の“愛しのロージー”、イックバルの日本語カヴァー“Love Me Again”、オリジナル演者の矢舟テツローを迎えた“しっぽのブルース”など発表済みの楽曲に加え……。

 「私、もう、オバさん……(笑)」と言いつつ、オリジネイターばりに弾んだ歌声を聴かせる森高千里“私がオバさんになっても”を佐野元春経由スタイル・カウンシル風のヤング・ソウルなアレンジで。

 「はせさんから〈ぐっとオトナっぽく歌って〉っていうリクエストがあったので、がんばりました(笑)。おかげで新しい一面がいちばん出せたなって思う曲です」という小室哲哉作の名曲“SWEET 19 BLUES”は、おっしゃる通り、これまでほとんど前に出すことがなかった一面を引き出したもので、サウンドのアレンジはTSUTCHIE

 「杏里さんの曲は昔からすごく好きで、前に出したカヴァー・アルバムでも“オリビアを聴きながら”を歌いました」という“SUMMER CANDLES”は、原曲のAORテイストのバラードをボサノヴァ調のスウィンギーなアレンジに。

 「今回初めて知って、すごく好きになった曲です。佐藤清喜さんのアレンジも素敵ですし、ライヴで歌ったら楽しそう。でも私、〈パラダイス〉なキャラクターをあまり持ち合わせてなくて(笑)、いままでの曲もパーッと明るい曲がそんなになかったから、ボイトレで練習してても〈もっとパラダイスな感じで弾けて!〉って言われました」というEPO“土曜の夜はパラダイス”は、エルボウ・ボーンズ的な80年代テイストを忍ばせたビッグ・バンド風アレンジで〈ひょうきん世代〉にアピール。

 「大好きな松田聖子さん、リアルタイムだと“あなたに逢いたくて~Missing You~”ですね。今回、ベスト・アルバムを聴いて、歌ってみたいと思ったのがこの曲でした」という“天国のキッス”は、WACK WACK RHYTHM BANDを迎えたゴキゲンなノーザン・ソウル風味で。

 「この曲を好きな人がまわりにたくさんいて、みんなそれぞれに思い入れがあるらしく……期待に応えなきゃっていうところでいちばん難しかった曲です」という矢野顕子“ひとつだけ”は、e-muraRUB-A-DUB MARKET)による80年代細野晴臣ワークスを匂わせる意匠に、安部潤のピアノを絡めたエレポップ。矢野独特の節回しをみちる流に解釈しているところもくすぐったい。

 これまで出会ったことのなかったメロウ感覚など、いくつかの高いハードルを飛び越えて、そのポテンシャルをさらに広げて見せたカヴァー・アルバム。多彩なアレンジを楽しみながら、初めて知った楽曲も自分なりのものに変換し、まさに〈My Favourite〉にしてみせた彼女。今作も含め、カヴァー攻勢をかけてきた近作でのメガ進化ぶりは、WACK WACK RHYTHM BANDのメンバーを中心としたバンドを従えて東京・代官山UNITで開催される今季初ワンマン〈黄昏流星群 Vol.5〉でもしっかりとキャッチしたい。新しいみちる、ゲットだぜ!

 

 

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