パンクダブを融合したP.I.L.での活動から近年のローンレディとのコラボに至るまで、独自のハイブリッド音楽を創造し続けている異能のベーシストが、基盤とも言うべきバンドを再始動してニュー・アルバムを発表。盟友ユースをプロデューサーに迎え、オーロラトニー・アレン、元ホークウィンドニック・ターナーという多彩かつ強力なゲストを配した布陣からして、気合いの入りっぷりが窺えよう。一聴すると洗練されたジャズ風のスタイルを装ってはいるが、ダブやファンクはもとより、クラウトロックカリブ・ポップ、アラブや東アジアの伝統音楽など、ウォブルの身体に蓄積した膨大な音楽的フラグメンツが有形無形の彩りを加え、豊潤なサウンドスケープを展開。聴き込むほどに奥行きが感じられる。常に前進を潔しとする果敢な冒険心、音楽に対するストイックな姿勢が生む緊張感、クールな熱情を孕んだ本作は、ひょっとすると〈21世紀版マイルス・デイヴィス『Bitches Brew』〉なんじゃないだろうか。