SHE IS SUMMER――そう新たに名乗る彼女は、エレクトロ・ポップ・ユニット、ふぇのたすのヴォーカルでありラヴリー・アイコンだった、みこ改めMICO。

 「(ふぇのたすを解散して)とりあえず、いままで自分がやったことのないことをやってから次を考えようと思って、海外に行こうと思ったんです。私、大学に行ってないし、人より経験していることが少ないなあと思ってて、その代わりみんなが経験してないことも経験してるんだろうけど、卒業旅行で海外に行くとか、そういうことへのコンプレックスがすごく激しくって。だから、とりあえず海外にと思って、ロンドンとパリへ」。

 シンガー・ソングライターのSakuという思いがけず得た〈相棒〉と共にした旅は、彼女がエンジョイできる次の場所はどこなのか、そのヒントを与えてくれたという。

 「眠いから二度寝しちゃおうとか、私ってけっこう欲望のままに生きてきたんですけど(笑)、ロンドンの人たちを見てたらね、そういう感じがあるように思えて。カフェの店員がビール呑みながら営業してたりとかね、そのぐらいでいいんじゃないかなって。あと、日本に帰ってからも、時間が空いたらいろんなところによく出かけてました。ネットとかで情報を収集するより、出かけて人と会う……そこでしか拾えないワードってあるじゃないですか」。

SHE IS SUMMER LOVELY FRUSTRATION E.P. Being(2016)

 そんな充電期間を経て、ようやく彼女から届けられた新しい音。〈君のせい〉で夏に胸ときめかせる女の子の気持ちを描いたサマー・チューン“君のせい”、まさにブルーなミッドテンポの“ナイトブルー”、ネオアコ・フィーリングの“あなたに電話しない夜”、Sakuがコーラスで参加しているディスコ・テイストの“とびきりのおしゃれして別れ話を”――4曲入りのデビュー作『LOVELY FRUSTRATION E.P.』は、トータル・プロデューサーの江口亮Stereo Fabrication of Youthla la larks.)をはじめ、楽曲を寄せた高橋海Lucky Tapes)、角舘健吾Yogee New Waves)、ライナス・オブ・ハリウッド釣俊輔ら、彼女がここ最近でフレンドシップを築いた(かつトレンドにも敏感な)仲間たちによって編まれたもので、どこか〈キャラクター〉になっていったふぇのたすのみことは違う、リアルなガールズ・マインドを放つMICOがそこにいる。フラストレーションを愛でる術をも身につけたオトナの女子ならではとでも言うべきか、曲のあちこちに散りばめられたセンチメンタリズムもチャームとしながら。

 「夏がいちばん好きな季節っていうのと、夏休み特有の〈なんかやってやりたい〉〈この夏で何か変われるかも〉みたいな……そういう気分を常に持っていたいなっていうのと、(センチな曲が多いのは)感傷に浸るのもけっこう楽しいなって。切ない気持ちを感じるからこそ、本当に好きなんだなって実感できるし、切ないとか悲しいだけで止まっちゃうとホント辛いから、その先をちゃんと作りたい。やっぱり、身の回りにハッピーしかなかったら、ハッピーってことに気付けないと思うんですよね。私はコンプレックスを抱いているからこそ、ハッピーのド真ん中にいるときには想い出を振り返るような気持ちでその瞬間に幸せを噛みしめたいんです。あとから気付くんじゃなくてね。だから感傷好き」。

 まだまだ始まったばかり。今年の夏はこうだけど、来年の夏はわからない。「日常のなかで私とちゃんと出会ってくれて、ちゃんと仲良くなってくれた人」とのコミュニケーションから生まれたSHE IS SUMMERの音楽は、限りなく完璧に近い未完成品だとも言えるし、その若干のスリル込みで、この先の彼女も見届けていきたい。



SHE IS SUMMER
92年生まれ、神戸出身のMICOによるソロ・プロジェクト。高校卒業後にシンガー・ソングライターとして活動を始め、2012年にふぇのたすの結成に参加。同ユニットでは、2013年のミニ・アルバム『2013ねん、なつ』が高い評価を獲得し、翌年の『胸キュン'14』を経て、2015年3月にミニ・アルバム『PS2015』でメジャー・デビューするも、同年9月のライヴをもって解散。今年に入って、2月にROCKETMANの配信シングル“愛はしんどい”に客演し、4月にSHE IS SUMMERの始動を発表。〈タワレコアパレル〉でのモデル起用や、映画「あのこの話をすこしだけ」への楽曲提供も話題を集めるなか、ファーストEP『LOVELY FRUSTRATION E.P.』(Being)を8月3日にリリースする。