ストーンズ・スロウ発のコラボ盤といえば、ジェイリブやマッドヴィランのように奇才たちが双方の良さをユルく引き出し合った快作を思い出すが、このノーウォーリーズ初のフル・アルバムもそれらと並べて賞したい逸品だ。ノレッジがサンプリング主体で手掛けたロウファイさ漂うトラックと、リラックスした風情で歌を遊ばせるアンダーソン・パークのコンビネーションは、各人のソロ作やプロデュース作品での緻密さとはまた別の、生々しい箱庭感がある。“Suede”ほか先行曲群での進化系LAビート・ソウルこそ余所行きな顔つきだが、ノーテーションズの同名曲を用いた“What More Can I Say”然り、ヘヴン・セント&エクスタシー使いの“Another Time”も然り、スウィート・ソウルをヒネりなくループした楽曲は、ひたすらレイドバックしながら互いの相性を確かめ合ったような、内向きな心地良さに満ちている。かつてのJ・ディラとマッドリブのように次世代を担う存在となった両人の蜜月は、とびきり甘くて煙たい。