幻想的な白の光景に凛と佇む歌声

 この冬、ミニ・アルバム『RefRain』で歌手デビューした上田麗奈は、「ハナヤマタ」や「ばくおん!!」といったアニメで主演を務め、達者な演技と芸の幅広さで注目を集めてきた現在22歳の声優。絵も得意な彼女がヴィジュアル面にも自身のイメージを投影したという本作は、そのセンシティヴな感性が発揮された一枚に。

上田麗奈 RefRain ランティス(2016)

 歌詞はすべて上田本人が松井洋平と共作。その松井も所属するTECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUNDが手掛けた“毒の手”では、悲壮なストリングスが先導する厳かな電子音の海に、幻想的な歌声で〈あなた〉への狂おしい感情を浮かべてみせる。rionos製の“海の駅”は、美しくうねるストリングスとひんやりした音響がオーロラのような光景を生み出す佳曲。佐藤純一fhána)は2曲を提供しており、どちらもしなやかなバンド・サウンドを基本としながら、ドリーミーな空気を帯びているのが彼らしい。MONACA田中秀和の会心曲“ワタシ*ドリ”も80sのテクノ歌謡っぽいファンタジー感がクセになる。

 上田の伸びやかでどこか儚い美声も相まって、坂本龍一がプロデュースした飯島真理の名盤『Rose』を思い出したりもするが、そちらが〈ピンク〉なら本作は〈白〉のイメージ。一面の銀世界に凛と佇むような歌が、寒い冬に素敵な夢を見せてくれるはずだ。 *北野